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中村勘九郎と生田斗真が直面した“異国”での孤独 『いだてん』が描いた日本人初の一歩

リアルサウンド

19/3/11(月) 12:00

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第10話が、3月10日に放送された。日本人初のオリンピック選手である金栗四三(中村勘九郎)と三島弥彦(生田斗真)。ストックホルムに到着した2人に待ち受けていたのは、外国人選手との明らかな差と孤独だった。彼らとの違いを受け入れ走り続ける四三と、違いを受け入れられず孤独に苛まれていく弥彦の対照的な姿が印象的な回となった。

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 ストックホルムに到着した四三たち。監督・大森兵蔵(竹野内豊)の体調は芳しくなく、四三たちは自分たちだけでトレーニングに励むことになる。だが、外国人選手の多くは、監督の的確な指導のもと、選手同士励まし合って練習に励んでいた。ある日、日に日に孤独を強めていた弥彦は自信を失い、自室の窓から身を投げ出そうとする。

 ドラマ冒頭、オリンピックや慣れない外国に強い不安を見せていたのは四三のほうだった。当時、世界は日露戦争でロシアに勝利を収めた日本に強い興味を抱いていたのだろう。外国人選手たちは彼らの姿を目にすると「日本人だ」と口にし、特異なものを見るような目で見る。そんな状況にぎゅっと口を結び、緊張した様子を見せる四三。その一方で弥彦は普段通りの自信たっぷりな顔を見せていた。

 しかし弥彦の自信満々な態度は早々に打ち砕かれてしまう。1人で練習に励む弥彦の前には、屈強な体格の外国人選手が幾人も集まり、互いに励まし合いながら練習をしている。彼らの横で走り込みをすれば、圧倒的な差で負けてしまう。弥彦ははじめこそ、普段通りの笑顔を忘れまいと堂々と振る舞うのだが、徐々にその表情は険しくなっていく。四三ほどではないが、口元に力の入った表情になっていき、笑顔がなくなっていく。

 そんな中、四三は言葉が通じないながらもポルトガル代表選手と打ち解けていた。四三が着用する足袋を通じて会話が弾んでいくうちに、四三の表情はみるみる朗らかになっていく。気づけば四三や弥彦を好奇の目で見ていた外国人選手たちの顔もほころんでいた。このことがきっかけで、注目の的が「日本人選手」から「金栗四三」になっていったことも、弥彦を追い詰める原因となる。

 弥彦を演じる生田斗真は、強いプレッシャーに負けていく弥彦の弱い一面を演じきった。真っ暗な部屋に引きこもっていた弥彦からは、普段の溌剌とした姿が一切感じられない。全身の力が抜けたかのように気だるげに動く生田の姿が印象的だ。生田の顔がアップで映し出されても、その目に力はこもっていない。天狗倶楽部の面々とスポーツに興じていた弥彦とは別人のようだった。

 自暴自棄になっている弥彦は、四三に向かって「期待されてないんだ! 君と違って!」と声を荒げた。体を縮こませてむせび泣く生田の演技から、弥彦が背負っている凄まじいプレッシャーが思い知らされる。

 そんな弥彦を立ち直らせたのは四三だ。声を荒げた弥彦に対して「だったら気楽じゃなかね!」と語気を強めて発し、声を押し殺して泣く弥彦には「負けて当たり前、勝ったら儲け」と声をかけた。同志として共に練習に励んできた相手に真摯に向き合う意志が、相手から目を背けない中村の演技から伝わってくる。

 もちろん、四三も日本人初のオリンピック選手としてプレッシャーを抱えていた。自暴自棄になった弥彦、病状が悪化するばかりの兵蔵を前に、中村は折れそうな声で「日本人にとって、最初で最後のオリンピックとなるでしょう」と四三の心境を語った。

 だが、自室の窓から飛び降りようとした弥彦を必死で止めた四三はこう言った。

「我らの一歩は日本人の一歩たい!」

 中村は生田の肩をガッと掴むと、凄まじい形相でこの台詞を発した。四三から逃れられない状況でこの言葉をかけられた弥彦はよりプレッシャーを感じたかもしれない。しかしそれ以上に、彼らの「日本人初のオリンピック選手」としての誇りが伝わってくる台詞だった。

 四三と熱い抱擁を交わす弥彦。プレッシャーから解放されたように、生田は清々しい笑顔を見せた。

 昨今、数多くの日本人スポーツ選手が世界各国で活躍している。金栗四三と三島弥彦はその第一歩だ。「日本人初のオリンピック選手」である彼らの感じていたプレッシャーと誇りを知ることで、その意義と凄さを見出すことができる。(片山香帆)

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