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BOYSぴあSelection 第14回 竜星涼

竜星涼「柳楽さんとは心で握手したような感覚がありました」

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特集

19/6/14(金)

ベストセラー作家・重松清 原作の最も泣ける先生と生徒の感動の物語が映画化。陽に焼けた赤い顔と、鬼の熱血指導から“赤鬼先生”と呼ばれていた小渕 隆(堤真一)は、かつて甲子園出場を目指し、強豪チームを率いていた。そんな黄金時代から10年の月日が流れ、野球への情熱が衰えかけていたある日、かつての教え子・斎藤(愛称・ゴルゴ)と再会する。野球の素質を持ちながらも、挫折して高校を中退したゴルゴは、結婚して家庭を持ち、立派な社会人となっていた。しかし、ゴルゴは病に侵され、命の期限が迫っていた ──。
かつてすれ違ってしまった先生と生徒、その間に入るライバルの野球部員、和田を演じた竜星涼さんに話を訊いた。

後悔しない毎日を過ごしたい、と切実に思わせてくれる作品

─── 『泣くな赤鬼』、泣きながら拝見しました。

僕も、この作品は出演させていただいたことが誇らしくなる、骨太な人間ドラマだなあと思います。撮影自体は僕は2日間で終わったんです。でもその2日間がとても濃厚で、1日は堤さんとふたりのシーンで、もう1日が柳楽くんや川栄さんも一緒のシーンでした。僕が参加したのは撮影が後半に入った頃で、もうチームワークができあがっている中に入ったので、少し緊張もしたんですけど、学生時代を演じているキャストの子たちがみんな真っ黒に日焼けしていて。そういうのを見て、現場の情熱をとても感じて、自分自身の士気も高まりました。

─── 物語は野球少年たちの夢や挫折、葛藤を描いていますものね。とても熱い映画です。

そうですね。僕も撮影にはいる前に、野球の練習シーン用のリハーサルに参加して、高校生役の子たちとみんなで野球をしたんですけど、撮影に入ってみたら、みんな髪の毛も丸刈りにして、高校球児の姿になっていて、作品の世界がすっかりできあがっていました。

─── 竜星さんは野球のご経験は今まであったんでしょうか?

僕はないんです。バスケやサッカーをやっていたので、野球には苦手意識が少しありました。それをこの作品で克服できたかなと思います。スポーツってやっぱり楽しいなって感じながら撮影しました。球を投げるシーンは、ずっと練習していました。1日だけしかやっていないけど、炎天下の下で、日焼けしたかなってくらい球は投げました。

─── 和田はとても真面目で努力家、というキャラクターですけど、監督とはどんなお話をして役作りをされましたか?

一番よかったのは、高校時代の和田役を演じた方が芝居をしているところを見せてもらえて。そこで少年時代の和田と斎藤(ゴルゴ)のつながりを想像しやすくなりました。それがあったので、柳楽さんとは撮影した1日が初めましてだったんですけど、和田という役にスッと入っていけたので、お互いにいいキャッチボールができたと思います。

─── 成長した二人が再会するシーンは、作品の中での見どころのひとつですね。

そうですね。和田自身もわだかまりがずっとあって、自分がついたささいな嘘、それによって少なからず、過去に縛られていた部分があったんだなと思うので、その後悔が解き放たれた瞬間は、高校生のときには出せなかった思いや友情がお互いに成長して、やっと良いものにできたんですね。
ライバルって競っているそのときは、なかなかお互い歩み寄れないけれど、大人になったときに、そのライバルのおかげで成長させてもらえていたりとか、自分のターニングポイントになっていたりとかすると思うので、大事な存在なんですよね。そのときは「嫌いだ!」って思ったりするけど(笑)

─── 竜星さんご自身にはそういうライバルのような方はいますか?

同年代の活躍している俳優さんたちはいっぱいいるので、刺激をもらう日々ではありますけど、最近ではそういうことは考えないようにしています。人と競って頑張ることはいいことだけど、そこの張り合いばかりに気をとられると自分を見失うと思うので。

─── 堤さんとのシーンはいかがでしたか?

監督からは「胸の突き刺さる、いいセリフを新たに考えたい」と聞いていて、赤鬼先生という先生は、ちょっとハッとさせる、確信を突く唯一の存在として描かれていますし、僕自身も堤さんと演じさせていただくのが初めてだったので、それも含めて、和田が赤鬼先生と久しぶりに会う感覚は、緊張感があって、いい作用を及ぼしたかなと思っています。
あくまでも赤鬼先生は、和田にとって、学生のときの厳しかった、ちょっと冷酷に見えたイメージで止まっていると思うので、自分は大人になっていても、その関係性は変わらないのかなというところを意識しながら演じました。

─── 赤鬼先生は発する言葉とか、表情のひとつひとつが、人の心に突き刺さるような人物ですよね。

そうですね。物語を通して、「青春っていいな」って思いました。どういう形であれ、青春しているそのときは、何を言われても受け止められなかったりするし、夢中なんだけど、かけがえのない瞬間を過ごしているんですよね。そのときのやり残したことって、人間が形成されていくときの一番大事な瞬間だったりするから。僕はこの映画を観て、やり残したことがないように、1日1日を大切に過ごしていけたらと思いました。

─── 確かに、もし自分が「あと余命半年です」と言われたら、何をするだろう?って考えました。

何をやるでしょうね? ゴルゴにとってそれは野球だったけど、高校野球とかサッカーとかって、あのときの青春って帰ってはこなくて、その情熱みたいなものは色褪せない記憶として残るのかなって思いました。
僕には、高校で赤鬼先生みたいな先生はあまりいなかったので、「あの先生さ」って思い出せるような存在がほしかったな、って思います。

─── 映画を観ていて、先生に認めてもらいたい、褒めてもらいたいっていう気持ちは覚えがある感情だなと思いました。

誰にでも少なからず、あるんじゃないかと思います。親とか兄弟からもそうだろうし。そういう感情は大人になってもそうかもしれないし。ただ、何が正解かはわからなくて、ただ言えるのは、その人にとってかけがえのない瞬間というのがあって、だからこそ、後悔なく、言いたいこと、伝えたいことは口に出して言ったほうがいいんだなと感じました。野球というつながりがあるから、ゴルゴの存在を和田はずっと忘れないだろうし、競っていたライバルから、大人になってから「今のままでいいんだよ」って言ってもらえる、あれはすごく背中を押す言葉だったなと思いました。そう言ってもらえた和田は幸せですよね。

─── 友人を亡くすって、生き残ったほうも、それを乗り越えるのは容易ではないですよね。

だからこそ、和田が大人になってから、ゴルゴと話すことができた、あのシーンは希望になるし、ゴルゴが亡くなったあとも、みんなが生活して生きていく、日常は続いていく、という、人生を象徴したような作品だなと思います。

─── 人生を象徴、確かに、人生って喜びも悲しみも同じように、駆け足で過ぎ去っていくものですよね。ゴルゴと和田が再会して話す、あのシーンはそういう意味でリアルです。

そうですね。あのシーンは、話し始めるまでの沈黙とか、夏の虫の鳴き声、夕方の匂い、部活の掛け声なんかをすごくリアルに感じることができる集中した中で撮影できて、自分でやっていても、とても素敵な、柳楽さんと心で握手したような感覚がありました。和田自身は、嬉しさなのか、余命少ない人間に対しての悲しみなのか、語らなかったけれど、必死に生きようとしているゴルゴの前で泣くことは、和田としてはしたくないだろうなと思ったので、和田が泣くというお芝居は入れませんでした。

─── 赤鬼先生の「赤鬼は泣かないんだ」というセリフもとても印象的でしたね。

「大事なことは言わないんだ」という男の不器用さ、美学を感じるかもしれなですね。何も言わなくてもわかってくれるだろうというか、わかってくれよ、という気持ちがあるかもしれないですね。それがわからないからみんな、喧嘩したりとかしてしまうんですけど。

─── 生身の人間の感情がぎゅっと詰まった作品ですね。では最後に、この映画を観る人に一言、お願いします。

誰しもが経験したことのある青春時代を振り返ることができて、そこで自分に影響を与えてくれた人を思い出したりとか、観てくださっている方の感情を揺さぶるような情熱を、野球という熱いスポーツを通して引き出してくれるような映画です。観終わったあと、後悔しない生き方を選びたい、人生を大切にしたいと思ってもらえたら嬉しいなと思います。

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撮影/高橋那月、取材・文/藤坂美樹

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