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宮野真守、なぜ各方面から支持される? 変幻自在に演じ分ける卓越した表現力に注目

リアルサウンド

19/6/19(水) 7:00

 アニメの声優、映画の吹き替え、アーティスト、役者、バラエティ番組など、各方面から引っ張りだこの宮野真守。吹き替えでは、エディ・レッドメインが演じた『ファンタスティック・ビースト』シリーズのニュート・スキャマンダー役や、ジョニー・デップが演じた『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカ役が有名。アニメでは、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの一ノ瀬トキヤ、『文豪ストレイドッグス』シリーズの太宰治、『Free!』の松岡凛など当たり役を挙げればきりがない。そこで本稿では、ファンだけでなく制作サイドをも感嘆させる魅力を考察したい。

主役でも脇役でも存在感を発揮する万能性

 宮野は、現在アニメ『さらざんまい』の新星玲央、『キャロル&チューズデイ』のDJアーティガンの声を担当し、主人公を凌駕するほどの存在感を示している。

 『さらざんまい』は、設定もストーリーもぶっ飛んでいるが、宮野が演じる新星玲央もかなりのくせ者キャラクター。金髪のイケメン警官で、細谷佳正が演じる相棒の阿久津真武と共に、妖艶にダンスをしながら挿入歌「カワウソイヤァ」を歌うシーンが話題だ。同曲は和風の電波ソングテイストの楽曲で、それをとんでもない美声で歌うのが実にシュール。一見イケメンだが内面に闇を抱えたような役柄は、これまでにも数多く演じており、宮野の得意とするところだろう。突き抜けた演技によって、視聴者を世界観へと引き込んでいる。

 また『キャロル&チューズデイ』のDJアーティガンは、大観衆を沸かせるEDMのスーパースターという役。自信家の大金持ちのため、一見鼻持ちならないキャラクターではあるが、どこか憎めないキュートさがある。ギャップのある内面を1人のキャラクターのなかで、違和感なく融合させているのは宮野の演技力によるものだろう。主人公の2人組キャロルとチューズデイがアーティガンの自宅を訪問してプール付きの豪邸が火事にしてしまうエピソードがあったが、普段はクールなアーティガンのうろたえぶりといったら最高に見応えがあった。

 現実には存在しない役柄を演じるのは、正解がない故に非常に難しいことだ。しかしそれを観た者に、こういう絵のキャラクターならこういう声だよねと、共感してもらわなければアニメは成立しない。時には視聴者をねじ伏せるほどの声の説得力が必要なのである。宮野にはその説得力がある。宮野が声を発した瞬間、そのキャラクターに命が吹き込まれ、宮野とキャラクターが一体化するような感覚さえ感じるときがある。また主人公だけでなく、名バイプレーヤーとしてもその存在感を発揮できる器用さは実に希有だ。どんなに難しい役でも見事にこなし、周りをも輝かせることができる。まさに万能薬。こんな声優なら、キャスティングサイドが放っておかないのもうなずける。

幅広いリスナー層に合わせられる表現力

 声優などの役者業で培った表現力は、アーティスト活動でも存分に生かされている。アーティストデビューは2008年で、シングル『Discovery』を皮切りに、これまでに17枚のシングルと6枚のアルバムなどをリリースしてきた。5月29日にリリースした最新のシングル『アンコール』には、まったく曲調の異なる4曲が収録され、宮野の懐の深さを実感させる1枚になっている。

 表題曲の「アンコール」は、公開中の映画『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』の主題歌として話題の楽曲だ。スケールの大きなオープニング、ピアノとストリングスの美しい音色、大地の鼓動を刻むようなビート。その上でパワフルに、そしてエモーショナルに響く宮野の歌声は、まるで何かを決意したような凛とした佇まいだ。宮野自身と作曲者の上松範康(Elements Garden)が共作した歌詞は、ファンが叫ぶ「アンコール」の声に応えながら、ライブという空間を共有できる喜びを朗々と歌い上げた内容になっている。サビのロングトーンと後半に聴かせるドラマチックなフェイクは圧巻で、心を震わせられたファンもきっと多いだろう。

宮野真守「アンコール」MUSIC VIDEO

 一転、勇ましいファンファーレで始まる「ぼくはヒーロー」は、『みんなのうた』(NHK総合)で放送されて話題を集めた。テンポがコロコロと変わり、かけ声や合いの手もたくさん入る楽曲構成は、子供が聴いて思わず笑顔になる楽しさ。ヒーローに憧れる少年を清く正しく導くヒーローになり切った歌声は、歌のお兄さんのような、親しみやすさがある。合いの手を歌う声もユーモアたっぷりで、〈腹筋背筋〉と歌うところは、思わず吹き出してしまいそうだ。子供をやさしく見守るような目線と、ヒーローという存在の大変さをやさしく説くような温かみは、実際にヒーローを演じてきた宮野だからこその説得力がある。

 そうかと思えば、ハイトーンのファルセットで優しく包み込むように歌う、甘く切ないラブソングの「Never Friends」。キレ味鋭いラップとセクシーなボーカルが交錯する、オルタナティブなヒップホップナンバー「FIRE」も収録している。この4曲目の「FIRE」は、現在開催中のアリーナツアー『MAMORU MIYANO ASIA LIVE TOUR 2019 〜BLAZING!〜』のために制作したとのこと(参照)。宮野のライブと言えば、圧倒的なダンスパフォーマンスで魅せることでも知られる。ツアーでもダンスと共に魅せて聴かせるライブパフォーマンスで多くのファンを虜にしている。

 強靱な鋼のようなたくましさを軸に、聴く者を鼓舞するような雄大な歌声、親しみやすく誠実な歌声、恋人に語りかける甘い囁き、他を寄せ付けないカリスマ然とした唯一無二の存在感。幅広いリスナー層ごとに、それに合わせるように歌い分けることができる巧みさを持ったアーティストが宮野真守。それを可能にしているのは、声優や役者としての経験と、たゆまぬ努力。そしてそのモチベーションとなっているのが、ファンへの熱い思いだろう。「アンコール」では〈溢れてくる想いを 今 伝えるよ〉と歌い、『うた☆プリ』シリーズで演じているST☆RISHの一ノ瀬トキヤに重ねて、自身のファンへの思いを綴っている。また〈僕らだけのcall/明日を作っていくよ〉と歌っていることからも、ファンの声が宮野をネクストステージへと導いていることが感じられる。ファンの声が宮野を成長させ、その宮野の声がマルチな活動の根源になっているのだろう。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」の編集を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、これまでにインタビューした本数は、延べ4,000本以上。日本工学院専門学校ミュージックカレッジで講師も務めている。

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