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余裕のないロック様が新鮮! 主人公家族の有能っぷりが最高にアツい『スカイスクレイパー』

リアルサウンド

20/12/19(土) 12:00

 ロック様がロッククライミング、なんて冗談はさておき『スカイスクレイパー』が12月19日のフジテレビ系土曜プレミアムで地上波初・本編ノーカットで放送される。

 ドウェイン・ジョンソン演じる主人公が、香港にて高さ1000メートル超えの燃え盛る摩天楼を舞台に家族を救出するという物語。この高層ビルはただ火事になっているわけではない。ビル「ザ・パール」を作った実業家を狙う謎の犯罪組織による計画的放火であり、彼らとの戦闘も避けられない。しかも、途中で主人公は犯罪組織の一味として疑われ、警察からも追われる羽目になる。もう大変すぎる、ドウェイン・ジョンソン! でも、彼なら基本なんでも無敵なのでどんな状況下でも大丈夫だ、という謎の安心感がある。言わばアーノルド・シュワルツェネッガーみたいな俳優だ。正直、ロック様が敵をボーリングのピンみたいに軽快に投げ倒していく姿が目に浮かんで、内容が想像しやすい映画かもしれない。しかし、そう思っている人にこそビックリな映画が『スカイスクレイパー』。何を隠そう、ドウェイン・ジョンソンが“強くない”映画だ。

こんなに心配になるロック様は初めて!?

 本作の主人公ウィル・ソーヤーは、元FBIの制圧部隊のリーダー。退職してから10年経った今、昔の同僚の紹介で新築のパールのセキュリティ監査を担当することになる。こういう過去に最強だった男が引退して、犯罪組織に巻き込まれるタイプの映画は多い。だいたいリーアム・ニーソンあたりが主演を務めている。そんな設定の場合、大抵は間違った相手を選んでしまった悪い奴らに同情しながら安心して観ていられるのだが、本作は一味違う。なぜなら、ウィルは現役時代に担当した人質事件にて、犯人の爆破に巻き込まれて片足を失っているからだ。そんなこともあり退職してから10年、映画冒頭の朝の支度シーンでは明らかに体が鈍っていて、白髪まじりの髭を蓄えた“老い”を感じさせるドウェイン・ジョンソンの姿が。街で偶然スリに出会っても、取り押さえるどころか刃物で斬り付けられて負傷する始末。これはまずい!

 明らかにハンデのある彼が、本作では普段の彼らしくパールに隣接するビル建築用のクレーンを素手で登ったり、そこからパールにジャンプして侵入したりする。これがもう、観ていてとにかくヒヤヒヤする。ロック様なのに、全然安心して観られない。特に高所恐怖症の方にとっては、その辺のホラー映画より怖いかも。

 しかし、そんな調子の悪い彼でも義足を最大限に生かしたアクションを映画後半、存分に発揮する。この義足が、随分彼を救ってくれるのだ。そういう、ハンデやマイナスとしてみなされるものがプラスに作用していく演出も良い。

未だかつてないほど有能な主人公家族の活躍にも注目!

 ドウェイン・ジョンソン映画は、つい主役の彼に目が行きがちになってしまう。彼の存在感が有り余っているからだ。しかし、本作はその点でも彼意外のキャラクター、特にその家族が最強すぎて魅力的である。

 ウィルがセキュリティ監査をするために、パールの98階に移り住んだソーヤー家。ウィルと美しい妻と、可愛い女の子と男の子の4人家族だ。その日はウィルが仕事の間、母親はパンダを見せてやろうと子供たちを連れ出した。その間に犯罪組織が侵入し、発火薬剤を同階に撒き散らす。本来なら無人階であり、犠牲者を出すこともなかったのに、なんと子供が気分を悪くしたせいで彼らが帰宅してしまう。

 これによって火事に巻き込まれたウィルの家族だが、母親はすぐに異変を察知した。そして子供たちにすぐ濡れたタオルを用意するように指示する。そう、彼女も実は只者ではない。なんと元海軍軍医という強キャラで、ウィルが爆破に巻き込まれ大怪我を負った時の主治医でもある。そんな彼女だからこそ、的確な状況判断ができる。そして子供たちも、まだ幼いのにも関わらずパニックになったり、泣きべそをかいたりしない。どこかに闇雲に走り出したりもせず、しっかり母親の指示を聞いて従う冷静さを兼ね備えていて素晴らしい。達観したお姉ちゃん、喘息持ちなのにその場で瞬時に最良の判断を下すことができる弟。そして犯罪者相手に近接攻撃もできるお母さん。まるで『インクレディブル・ファミリー』みたいな好感度爆上がり一家の活躍も、本作の大きな魅力である。

 本作が公開された2018年は、ドウェイン・ジョンソン主演作品が『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、『ランペイジ 巨獣大乱闘』、そして本作と立て続けに公開された。当時は食傷気味とも言われていたが、本作のようにギリギリのところで踏ん張る、苦しげなドウェイン・ジョンソンは新鮮そのもの。果たして主人公は、無事に家族を救出することができるのか。テレビの前でも存分に味わえる、その緊迫感を体験してほしい。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。最近のマイブームは『この恋あたためますか』のマコッちゃん。InstagramTwitter

■放送情報
『スカイスクレイパー』
フジテレビ系にて、12月19日(土)21:00〜23:10放送
※地上波初放送・本編ノーカット
監督:ローソン・マーシャル・サーバー
出演:ドウェイン・ジョンソン、ネーヴ・キャンベル、パブロ・シュレイバー、チン・ハン
(c)Universal Pictures

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