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「愛した女性を守るため」梶裕貴が『七つの大罪』メリオダスと歩んできた7年間

ぴあ

梶裕貴

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2014年10月からスタートしたTVアニメ『七つの大罪』。最終章となる『憤怒の審判』で原作の最後までを描ききり、メリオダスたちの長い戦いは終わりを告げた──はずの彼らが、再びスクリーンに登場する。

原作者・鈴木央が描き下ろした“最終章のその後”を描く完全新作オリジナルストーリー『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』は、彼らの“その後”の微笑ましい日常や、新たに立ちはだかる困難だけでなく、原作で残されていた謎の数々を補完する、“ファンが見たいもの全部入り”といった内容だ。

「今作で『七つの大罪』は、ついに幕を閉じます」と感慨深げに語るのは、主人公・メリオダスを演じる梶裕貴。今や業界の中核を担う声優のひとりとなった彼だが、『七つの大罪』スタート当初は若手として、メリオダスという難しい役に試行錯誤しながら臨んでいたという。あらためて、メリオダスと共に歩んできた年月を振り返ってもらった。

自分がメリオダス役に選ばれた意味を考えながら演じてきた

──2014年10月から放送が始まったTVアニメ『七つの大罪』も、最終章となる『憤怒の審判』で完結を迎えました。

梶 TVアニメーションとして、完結まできっちり製作していただけたことが何よりも嬉しいです。鈴木央先生が見事にメリオダスたちの物語を描ききってくださり、そして作品ファンの方々が応援し続けてくださったからこそ到達できた最終話だったと思います。

──物語序盤のメリオダスは特に飄々としていて、何を考えているのか分からないところがあるので、演じるのが難しかったのではないでしょうか?

梶 アニメでキャラクターの声を務めさせていただいてはおりましたが……僕はあくまで原作の“いちファン”に過ぎないわけです(笑)。なので、先の展開を知れるはずもなく、毎話彼の本心を探りながらのお芝居は本当に難しかったですね。でも、第1話のアフレコのときに「これはメリオダスとエリザベスの愛の物語です」というお言葉をいただけたことは、役作りをする上でとても大きかったと思います。

序盤のメリオダスはエリザベスに対して、いわゆる“セクハラまがい”のことばかりやっていたので、「すごい強烈なキャラクターだけど大丈夫かな?」なんて思っていましたが(笑)、よくよく考えると、彼はエリザベスにしかそういったことをしていないんですよね。最後までご覧いただいた方はご存知かと思いますが、メリオダスは「エリザベスと一緒に幸せになる」という願いを実現させるために、言ってしまえばそのためだけに、すべてを捧げて生きてきたわけです。まあ、周りからしたらかなり迷惑な恋愛物語かもしれませんが……(笑)。なので、そういった意味では、最初から何ひとつ変わっていないのかなと思います。

エリザベスとメリオダス

僕も彼と一緒に柔軟に心を動かしつつ、どんな展開になろうとも「これはふたりの愛の物語なんだ」と、自分の中で強く意識しながら演じてきました。飄々としたメリオダスがキリっとなる瞬間は、必ずエリザベスがらみのドラマでしたしね。

──常にエリザベスのことを頭に置いて演じていた、ということですね。

梶 そうです。

──原作を読んでいたときは、メリオダスはなかなか掴めないキャラクターなので「どんな声をしているんだろう?」とイメージできませんでした。アニメ化が発表され、梶さんが演じるメリオダスの第一声を聞いたときに「そうか、これか!」と思ったことをよく覚えています。

梶 うれしいです。央先生もオーディションで僕の声を聞いて「これだ!」と思ってくださったと、後からスタッフさんから伺いました。それをお聞きしたときはすごく勇気づけられましたね。元々先生の中では「女性声優さんが演じるんじゃないか?」というイメージがおありだったようで。小柄で、可愛らしい見た目ですからね。十分その可能性もあったと思います。でも、そんな中で僕を選んでいただけたわけです(もちろん、オーディションを受ける以上、どの役も「この役を演るのは俺だ!」と思って臨みますが)。なので、特にメリオダスに関しては“自分が選ばれた意味”というものを、しっかりと考えなければいけないなと思っていましたね。

ゲルダに翻弄されるゼルドリスにも注目してほしい

──『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』は“最終章のその先”を描いた、鈴木央先生による描き下ろしの完全新作オリジナルストーリーです。

梶 完結した原作では描かれていなかった部分を見事に補完してくださっているので、原作ファンの皆さんにも間違いなく楽しんでいただける内容になっていると思います。これまでずっと戦い通しで、つらい想いもたくさんしてきた大罪の面々にとっては、まさにある種のハッピーエンド。僕自身、とてもワクワクしながら台本を読ませていただきました。

──今作でメリオダスを演じる際に意識した点などはありますか?

梶 メリオダス個人としては、最終章からの大きな変化は特段なかったのですが、今回は彼だけではなく、弟のゼルドリス(演/梶裕貴)も終始出ずっぱり。TVシリーズでも、メリオダスとゼルドリスのふたりを演じさせていただいたわけですが……ここまで長時間行動を共にし、ガッツリ会話するのは初めてだったので、そのあたりの声や気持ちの演じ分けは意識しましたね。

メリオダスとゼルドリス

他の役者さんとの組み合わせもあって、収録スケジュールは2日間に分かれていました。僕はゼルドリスのセリフを先に録って、翌日その声を聞きながらメリオダスとして掛け合いをしたわけですが……自分の声を客観的に聴いて、それに応えるのは少し不思議というか。たぶんヒトの本能として、脳に何かしらの制限がかかるんでしょうね。混乱しました(笑)。

そういった難しさはあったものの、メリオダスとゼルドリスの共闘は本作の注目ポイントでもあるので、気持ちを切り替えてしっかり集中してお芝居しました。

──本作でのメリオダスとゼルドリスの関係性は、これまでふたりを観てきた者としても胸アツでした。

梶 メリオダスと敵対関係にあったゼルドリス。複雑な人間ドラマがようやく落ち着いたところで本編が終わって、それらを経ての兄弟愛というものが丁寧に描かれています。様々なハードルを乗り越えた先のふたりの姿が見られたのは感慨深かったですね。

ゲルドリスとメリオダス

そして、それぞれのパートナー……メリオダスとエリザベス、ゼルドリスとゲルダの愛も本作の見どころだと思っています。幸せそうにしている彼らの姿を見て、僕自身とても胸が温かくなりました。「ゼルドリスってこんなに可愛いヤツだったんだ!」なんて新たな発見もありましたし(笑)。

まあたぶん、彼は元から可愛いヤツだったとは思うんですよね。要は「そんな自分を押し殺してでも、兄のメリオダスと戦わなければ」と頑張っていたのが、これまでのゼルドリスなわけで……。本作ではその呪縛から解き放たれた、本来のゼルドリスがようやく出てきたんでしょう。ゲルダに翻弄される彼の様子を存分に楽しんでいただければと思います(笑)。

──ゼルドリスは本当に翻弄されていましたね(笑)。

梶 本編では常に眉間にしわが寄っていて、ピリッとしているイメージが強かったですからね。ゲルダに甘えたような口調で喋りかけたり、子供のような仕草をしているのが微笑ましかったです。実際に演じていても、すごく楽しいシーンでした。兄弟で愛の感じ方や伝え方は違うようですが……やっぱり、ゼルドリスの方が甘えん坊かな?(笑)

──エリザベスとメリオダスの関係も、少し進化していた印象でした。

梶 そうですね。エリザベスが本来の自分を取り戻し、より包容力が増していたように思います。本作には“ゼルドリスに対して気遣うあまり、どこか遠慮がちなメリオダスの背中をエリザベスがそっと押してあげる”ような描写があるのですが、僕はそのシーンがすごく好きで。エリザベスの大きな愛を感じましたし、母のように包み込む(雨宮)天ちゃんの声とお芝居が本当に素敵で。横で聞いていて、「エリザベスは心の底からメリオダスを愛しているんだな」と伝わってくる音に感じました。

──本作には、原作で描かれなかった最高神(演/倉科カナ)も登場します。

梶 「このタイミングで最高神を登場させるのか!? 央先生、恐ろしい人……!!」と思いました(笑)。原作ファンの皆さんも「最高神ってどういう存在なんだろう?」と気になっていたと思いますが……それが今回、この劇場版で登場するとは驚きでしたよね! 最高神と言うくらいですから“人間味の排除された全知全能感を持ち、同時に女神族としての美しさもある”……そんな得体の知れない圧倒的なものを僕は原作からイメージしていましたが、まさにそれを倉科さんが素敵に表現されていて。

──さらに、原作では名前だけ出てきていた2代目妖精王のダリア(演/中村悠一)と巨人族の名工ダブズ(演/神尾晋一郎)もここで登場です。

2代目妖精王のダリア

巨人族の名工ダブズ

梶 彼らの存在がベールに包まれたままでも、もちろん物語は幕を閉じられたのだろうと思いますが……今回の映画は、ある意味ボーナスステージのような側面もあると思うんですよね。大罪ファンへのご褒美的な(笑)。なので、気になっていた謎のすべてが解明されるような作りになっていて、それがまた本当にすごい! 「央先生は、いつからそういった構想をお持ちだったんだろう?」と勘ぐってしまうくらい、綺麗に補完されているフィルムになっていると思います。

同時に、シリアスな展開が続いた原作の終盤と比べて、央先生作品らしいクスっと笑えるようなシーンや、愉快で痛快な描写もたくさん見られるので、「これこれ! これが『七つの大罪』!」と感じていただけるんじゃないかと思います。

弱いところを見せるようになったメリオダスに、演じながら寄り添えた

──あらためて、梶さんにとっての『七つの大罪』とはどんな作品でしたか?

梶 約7年という長い時間をメリオダスと共に生きてきたので……やはり感慨深いですね。

先ほどもお話したように、メリオダスというキャラクターは物語の中盤ぐらいまで、バックボーンはもちろん、今何を考えているのかさえ表に出さないミステリアスな存在だったうえ、最強の集団“七つの大罪”の団長という役割もありました。そういった役を、当時まだまだキャリアの浅かった自分が演じるという……先輩方や後輩たちの中心に立って、ある種カリスマ性のあるキャラクターを演じるというのは、いろいろな意味でハードルを感じていましたね。すごく緊張しながら第1話のアフレコに臨んだのを覚えています。

『七つの大罪』とほぼ同じ時期、その少し前から『進撃の巨人』のアニメもスタートしていて、有難いことにそちらでも主人公役を務めさせていただいて……声優としての自分の立ち位置が大きく変化していく時期でもありました。そんな濃厚な時間を共にしてきた『七つの大罪』という作品、そしてメリオダスというキャラクターは、やはり自分にとって、すごく大きくて大切な存在です。

──TVアニメと劇場版を通して、アフレコ現場で特に心を動かされたシーンはどこでしょうか?

梶 各シリーズのクライマックスですね。中でも『七つの大罪 戒めの復活』第8話「ドルイドの聖地」で、メリオダスが封印された力を取り戻すために過去と向き合う、つらく苦しい試練に挑んだエピソードでは、愛するエリザベスを目の前で失う哀しみを何度も何度も味わったので……演じている僕もとてもつらかったです。エリザベスの存在が、どれだけメリオダスにとって大きいのか。それが切実に伝わったドラマだったのではないかと思います。

──物語序盤のメリオダスは団長として中心に立ち、みんなを守っていましたが、中盤以降はみんなに助けられたり、弱みを見せる描写も増えた印象です。

梶 常識で考えれば、到底どうにもできないであろうことにも「絶対にあきらめない」というメンタリティで抗い続けているメリオダスは、とてもかっこよく映りました。だからこそ……物語中盤以降、仲間たちに本音を漏らすようになったメリオダスの姿には胸が締めつけられましたね。叫んだり涙したり……そういった弱さが垣間見えるシーンに惹かれます。隠しているはずの“不完全”が滲み出れば出るほど、人間の心は揺さぶられるのだろうな、と。

──長きにわたってメリオダスたちの物語を応援してきた作品ファンの皆さんにとっても、『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』はスペシャルなギフトになりそうですね。

梶 そうですね! 間違いなく大満足していただける内容になっているかと思います。鈴木央先生による『七つの大罪』らしい魅力が詰まっているオリジナルストーリーですから、ご覧いただいた後には、きっとまた原作を読み返し、アニメを観返したくなっているんじゃないかと思います。

今作で『七つの大罪』は幕を閉じることになりますが、僕の心の中にいつまでもメリオダスたちが生き続けるように、ご覧くださった皆さんの中にも『七つの大罪』のキャラクターたちは、永遠に在り続けるはず。ふとしたときに彼らを思い出していただき、この素敵な物語を、より多くの人たちに伝える役割を担っていただけたら幸いです。

コロナ禍でご不便も多いと思いますが、可能ならばぜひ劇場で、大きなスクリーンと迫力ある音響設備の中、ご覧いただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします!

取材・文:とみたまい 撮影:稲澤朝博

『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』
7月2日(金)より公開

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