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稲垣吾郎、世の中の“不可避”なテーマに対するフラットな振る舞い 『不可避研究中』を見て感じたこと

リアルサウンド

19/12/30(月) 6:00

 また1つ、稲垣吾郎と共に知的好奇心が刺激される場所が生まれた――。

(関連:稲垣吾郎と共に年齢を重ねていく喜びーーブレない“美学”がもたらす安心感と輝き

 12月27日に初回放送を迎えた『不可避研究中』(NHK総合)は、世の中の“不可避”な社会のテーマについてTwitter上で研究し、毎回1つのテーマを決定。思わず考えたくなるコンテンツを、NHKのディレクター5人が制作して届けていくというもの。

 しかも、オンエアに先駆けて、Twitter上でその映像コンテンツが公開されており、30分間の放送時間に入り切らなかった反省会風景もTwitterにアップされるという、チャレンジングな内容だ。異なる分野で活躍中のディレクター5人が、それぞれの得意分野を活かして制作したコンテンツだけに、個性豊かな仕上がり。最優先にしているのは、あくまでもそのテーマを考える「きっかけ作り」。きっと、人によってはグッときたり、「で?」となったりするのも当然。

 そんな「なぜ刺さったのか」「なぜ疑問に思ったのか」も含めて、「考えるきっかけ」となるのだろう。そこで感じたことを身近な人と話し合うのか、SNSなどを通じて発信するのか、あるいはより具体的な動きに繋げるのか。番組として一つを結論づけるというよりは、視聴者一人ひとりに、その先が委ねられているのが新鮮だ。

 また、稲垣と共にモデルの市川紗椰とYouTuberのそわんわん、3人でMCを務めているのも新しい。46歳の稲垣、32歳の市川、20歳のそわんわんと、異なる世代の3人がひとつのテーマについて語り合うというシーンは、今のご時世、日常でもなかなか見られない。まず、この世代を超えたコミュニケーションが穏やかに進んだことに、稲垣のMC力を感じずにはいられなかった。

 市川は、アメリカ人の父親を持ち、4歳から13歳までアメリカのデトロイトで育ったことから、日本の現状について冷静に見つめ、忖度なく切り込むスパイスの役割を果たす。一方、YouTubeで日常動画を配信して、多くの視聴者と友だちのような距離感で接しているそわんわんは、スポンジのようにぐんぐんと新しい価値観を吸収していく。

 そんな若い世代を前にして、実にフラットな振る舞いを見せる稲垣が印象的だった。知らなかったこと、わからないことを素直に認め、飾らずに驚いてみせる。また、自分の意見を臆さず主張しながらも、異なる意見も余裕を持って受け止めていくのだ。

 第1回から「ジェンダー」と、センシティブなテーマに切り込んでいったことから、番組冒頭で市川が思わず「ジェンダーの話になると、つい攻撃的になる方がいるから、ちょっと面倒くさいな~と思って」と本音をこぼす。すると、稲垣の「面倒くさいけど、“不可避”だから。この番組のTwitterもコメントとか結構言われてますよね。コメント欄見てて、スタッフがかわいそうになっちゃった(笑)」と実にフランクに、この“面倒くさい”を乗り越える意義を伝える。

 もともとジェンダーについて寛容なタイプだと自認していた稲垣であっても、収録後には「知らないって結構怖いなって思って」とコメントを寄せる。「人間の多様性、いろんな個性の人がいるってこともぼんやりわかってはいたんだけど、ちゃんと一人ひとりと向き合って知っていくってことが大切なんだなって思いました」とも。なんとなくわかった気になって考えようとしなかったことを、反省したのだという。

 また、Twitter上に上げられたMC3人とディレクター5人による反省会のVTRでは、ジェンダーにとらわれない社会を実現していくべきなのではないか、という大きな結論が出そうになったところを「(ジェンダーの多様化によって)崩れていくことってあるのかな。マイナス面も考えたくなっちゃった」と、一面だけにとらわれないようにしようという姿勢も見られた。

 人生の先輩として自分の価値観を押し付けてしまったり、新しい考え方を頭ごなし拒絶してしまったり、あるいは変に迎合していくこともしない。何歳であっても、どんな性別であっても、何の職種でも、キャリアが異なっても……個人と個人であることをまっすぐに捉えていればこその対応が、この番組の芯となっているように感じた。

 「僕も一緒に、みなさんと反省会、会議をしながら、新しい不可避な問題を見つけて、みなさんと一緒に意見をぶつけていきたい」“稲垣吾郎と共に、より思慮深い人生を目指す”そんな、新年の目標を立ててみるのもいいかもしれない。次回は2月28日放送。第2回のテーマは「#外国人とニッポン」だ。番組Twitterに上がるコンテンツを見ながら、自分自身の考えを巡らせオンエアに備えたい。(佐藤結衣)

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