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androp 内澤崇仁に聞く、『グッド・ドクター』主題歌秘話「主人公が周りを変えていくイメージ」

リアルサウンド

18/8/30(木) 19:00

 現在放送中のフジテレビ系木曜劇場『グッド・ドクター』の主題歌として注目を集め、8月2日に先行配信された「Hikari」が、8月29日にCDでリリースされる。これまでのandropの曲でも多くテーマとして描かれてきた“Hikari=光”をタイトルにしたこの曲は、優しく、温かなタッチの曲だが、一方でとてもピュアな力強さを持つ。〈光に変えてゆくよ どんな暗闇も〉、〈絶望の底に飲み込まれそうなら いつだってあなたを連れてゆく〉。そう言って、グッと手を掴んでくれるこの曲は、andropの曲の中でも眼差しの深さがあって、より能動的でもある。

 これまでも多くのドラマや映画主題歌を手がけてきたandropだが、内澤崇仁(Vo/G)によれば、今回の曲はより多くの時間を費やし、ドラマのスタッフとも納得のいくまでやりとりを重ねたという。ドラマという作品への寄り添い方も、一歩踏み込んで、ともにひとつの作品を作り上げていくような感覚だったのだろう。ドラマの中でこの「Hikari」が流れるとき、この歌は時に喜び、励まし、また一緒に涙を流すようないちキャストとなり、あるいは狂言回し的な役割を担っている。ごく自然に、ストーリーの一部となっている。この「Hikari」という曲に、どのように取り組み、完成をしたのか。それはandropにとって、どんな曲となったのか、フロントマン・内澤に話を聞いた。(吉羽さおり)

「ドラマを初めて見る人にも、伝わるようなものを作りたい」
ーーニューシングル「Hikari」は、いろんな人が心寄せられるとてもいい曲だなと思いました。今回は、ドラマ『グッド・ドクター』の主題歌でもありますが、どんなふうにスタートしていった曲でしたか。

内澤崇仁(以下、内澤):はじめに、『グッド・ドクター』という韓国ドラマの日本版を制作するということで、その主題歌をお願いできないかというお話をいただいて。それが4月に入る前で、5thアルバム『cocoon』のリリースあたりだったと思いますね。

ーーそのときは、こういう内容にしてほしいとか、ドラマ制作側からのオーダーはあったのですか。

内澤:5月にドラマ制作サイドと打ち合わせをする機会があったんです。その間までには特に、「どういうもので」というオーダーはなかったので、なんとなく打ち合わせ前までに曲を作っておこうかなと思って。でもその時点で、まだ日本版の脚本やキャスティングもちゃんと決まっていないくらいのところだったので。まずはオリジナルの、韓国ドラマをじっくりと観て、これが日本版だったらどういうものになるんだろうなと想像しながら、打ち合わせ前までに4曲くらい作ったんです。それを打ち合わせの時に持っていったという感じでしたね。で、そのはじめの打ち合わせの時に、医療ドラマで、人間の生死を扱うヒューマンドラマにしたいという話を聞いて。

ーーなぜその主題歌をandropにお願いしたか、という話も打ち合わせでは出たんですか。

内澤:オーダーとしては、andropはデジタルな雰囲気も持っているんですけど、今回はピアノをメインにして作ってもらいたいと。曲のイメージとしては、人間味が伝わるような生の雰囲気のものがあるという話はありましたね。

ーー最初の打ち合わせ時に作っていった4曲は、どんな感じだったんですか。

内澤:いろんなパターンを考えていきました。韓国版のドラマでは、前半は人間関係を描いていて、中盤を過ぎたあたりからは恋愛の話も増えていって。それぞれの話のエンディングも、つらい終わり方もあれば、あったかい感じで終わるパターンもあったので。そのいろんなシチュエーションでかかってもおかしくない曲がいいだろうなと思って、4曲作っていったんです。速いものもあれば、スローなバラードも用意して持っていきました。

ーー今回の「Hikari」はそのうちのひとつだったのですか。

内澤:これはまた、違うものですね。打ち合わせの時に持っていった4曲を聴いてもらったんですけど、「すごくいい曲だと思うんだけど、イメージしているドラマとはあまり仲良くなれないかな」という話があって。それで、ピアノがメインの曲を、2パターン作ってほしいと言われたんです。毎回、患者や出演者の心の闇を溶かしていくような終わり方のドラマになっていくと思うから、そういう時に流れる楽曲であってほしいということで、ミディアムテンポなバラードがひとつ。話によっては悲しい場面で終わることもあると思うから、そのミディアムなバラードをアレンジしたスローな曲、その両面を兼ね備えている楽曲を作ってほしいというのがありましたね。

ーー難しいオーダーですね。これまでもドラマ主題歌など手がけてきましたが、今のようなオーダーっていうのはあったんですか。

内澤:2つを兼ね備えたというようなものはなかったですね。デジタルっぽいものとか、既存曲を例に「こういう雰囲気のものが合いそうですね」という、具体的なイメージをもらうことはありましたけど。

ーーそこから、この「Hikari」という曲を生み出していくのは、どう向き合っていったんですか。

内澤:それまでの4曲は、イメージで曲を作っていたんですよね。オリジナルのドラマを観て、こういう曲が合うだろうなとか。主人公が自閉症・サヴァン症候群で、小児病棟が舞台ということで、自閉症に関しての本を読んだり、小児外科医が書いた本を読んで、得た知識から想像して歌詞を書いていたんです。でも、それだけだと多分ダメだろうなと、その打ち合わせをした時に思ったんです。映像や見聞きしたものでなく、実際に経験をしたリアルなものが何パーセントかでも入っていないと、このドラマに沿う曲はできないだろうな、と。それで、もし可能であれば病院に行かせてもらいたいという話をしたんです。そうしたらちょうど、何日か後に、ドラマ制作側が病院に取材に行くということだったので、そこに同行させてもらったんです。

ーー実際に取材にまで。

内澤:4月の後半から『cocoon』のツアーが始まっていたんですけど、福岡のライブの翌日に、病院に取材に行けるということだったので。朝、福岡から移動して、病院の取材に行きました。

ーー実際に、病院に足を運んでみて、どうでしたか。

内澤:僕が伺わせてもらったのは、埼玉県立小児医療センターという、さいたま新都心にある病院なんですけど。ここ数年でさいたま新都心に移転した病院で、日本でも有数の最新医療機器が揃っていて、手術室もたくさんある場所なんです。先生に手術室やICU、病室とかを案内してもらって。実際に、ICUを見るのも初めてだったし、本当に、つらくなりました。まだ名前もない生まれたばかりの、全身に管を通されている赤ちゃんが何人もいるんです。脳に水が溜まって膨らんでしまった子や、多分生後ある程度時間が経っているのに、まだ名前がない子もいて。なぜかと聞いたら、病気でまだ性別がわからないという……。病気の赤ちゃんがこんなにもいるんだっていう現状にまず、衝撃を受けたのと。あとは、小学生くらいになっても、動けずにいる子だったり。片手には車のおもちゃを持っているけど、ベッドの上に横になっていたりとか。近くには小学校があるけれど、小学校にいけない子もいるんですよね。そういうのを見ていると、改めて現実っていうのはすごくつらいものなんだなって思って。

ーー言葉にならないですね、実際に目の前にしてしまうと。

内澤:ドラマのプロデューサーも一緒にいたんですけど、「こうしたお子さんを持つ親御さんも、ドラマを観るかもしれないし、僕らはこういう小児医療の現状も知ってもらいたい思いもある」という話をしていたんです。だったらなおさら、そうした人にも届く楽曲にしないといけないなというのはありました。あとは、ドラマを初めて見る人にも、心にくるもの、伝わるようなものを作りたいなって、その時に改めて思いましたね。

ーー実際にいろんなことを知って、体験したからこそ、書くのが難しくなってしまうということもありそうですが。

内澤:自分が携わるにあたって、どんなことが言えるんだろうということは、ずっと考えていました。

ーー取材の前に伺っていたんですが、今回はギリギリまで何度も何度も書き直していたそうですね。

内澤:7月12日にドラマの第1話がオンエアだったんですけど、6月10日までに完パケする予定で動いていたんです。でも、ドラマの第1話がはじまる直前まで1コーラスすらできていなくて。7月9日の朝に、テレビサイズのものが完成して(笑)。どうにか、第1話で曲が流すことができたんですけど。

ーーそうだったんですか!?

内澤:第1話が流れている頃も、僕はまだフルの歌詞を考えていました。結構な難産というか。最後まで歌詞を書き直していました。その前までは、曲を何パターンか作ったり、イントロが決まって、Aメロが決まって、サビが決まって、でもサビとAメロを埋めるBメロが決まらないとか、そういうのでずっとやり取りをしていて。ドラマがはじまっても、まだ最後まで曲ができあがっていなかったというのは、あまり僕も体験したことがないし、聞いたことない話だったので。

ーーたしかにそうですね。

内澤:でもそこまでやらせてもらえるっていうのも、お互いに熱量がないとできないことだと思うんです。向こうもリスクを背負ってしまっていますしね。そういった、熱量のある現場だと思いますね、この『グッド・ドクター』の制作チームは。とにかく妥協しないっていう……途中、本当に自分は才能がないんじゃないかなって思った瞬間もあったんですけども。ここで諦めるわけにはいかないって思いながら、ずっとやっていましたね。ツアーが始まってしまってもいたんですけど。

ーーそのツアーのテンションとも、また全然違うからこそ大変ですね。

内澤:ツアー中も、ホテルでずっと歌詞を書いて。ライブ終わって、ちょっと打ち上げをしたらまた朝まで歌詞を書いて、というのを、ずっと続けていました。

「“光”は、僕自身昔からテーマにしていたこと」
ーー“Hikari=光”という言葉が出てきたのはどの段階だったんですか。

内澤:何曲か作っていた中盤くらいかな。3度目くらいの打ち合わせの時、ドラマのプロデューサーとの雑談の中で、「僕はプレゼンをする時に、まず大体タイトルを決めてからプレゼンをしたり、ディテールを詰めていったり、作っていくんだ」という話をしていて。僕は、そういう作り方をしたことがなかったんですね。歌詞がある程度できてから、こういうタイトルにしようとか決めるタイプで。そういえばタイトルから曲作ったことないから、ちょっとそれを取り入れてみようと思ったんです。いくつかその方法でやってみた、3曲目くらいが「Hikari」だった気がしますね。最初の1、2曲目のあたりは、あまりストレートじゃなくて、変化球的な感じでタイトルをつけていたんですけど、それがことごとくダメだったので、直球にしたのかもしれませんね。

ーー“光”というモチーフは、andropの曲の中でもよく出てくるものですね。

内澤:そうですね。多分、曲ができてからタイトルを光にしようっていう発想にはならないと思うんです。“光”は、僕自身昔からテーマにしていたことで、希望の象徴として使ってはきたんですけど。じゃあ、直球でタイトルを“光”にして作ったらどうだろう、って。……その頃はもう、満身創痍というか。それこそ、6月3日のパシフィコ横浜でのツアーファイナルも、精神的にはやるぞって満ち溢れていたんですけど、体はボロボロになってて、声帯結節にもなっていて。そういう状況でもあったから、もう直球で勝負しようっていうのも強くなっていたと思うんです。

ーー自分でもまさに“光”を求めていたような感覚だったんですね。

内澤:ろ過してろ過して、やっと出た一滴、くらいの言葉でしたけどね。

ーーこのまっすぐな言葉があるから、より伝わる歌にもなっていると思うんです。曲だけを聴く人も、ドラマと重ね合わせて聴いている人にとっても、象徴的な言葉になっているなと思います。

内澤:そうですね。物語自体が、主人公が患者さんや、周りのスタッフの闇を純粋な光で溶かして、照らされた側が変わっていくという話でもあったので。闇と、その逆にある光というのが、自分の中ではひとつのテーマとしてはありました。

ーー冒頭の、〈365日をあなたと過ごせたら〉というのは、まさに病院を実際に訪れたからこそ出てきたフレーズなのかなと今、話を聞いていて思いました。

内澤:いろいろ考えすぎちゃってて、もうなんでこれが出てきたのかもわからなくなってしまっていますけども(笑)。各方面からいろんなオーダーがきて、いろんなことを言われるので、どうしたらいいんだろう? ってなっていたんですよね。もうちょっと抽象的にしてほしいっていう話があって、抽象的にしてみると、誰に何を言っているのかわからないって返ってきたりとか(笑)。具体的に書いていくと、儚すぎるとか、切なすぎるので、もうすこし明るい雰囲気にしてもらいたいとか。今度はちょっと明るすぎるとか……。

ーーさじ加減がどんどんわからなくなるような(笑)。

内澤:思い切って、ウエディングソングにしてみようかとか(笑)。ここからですか!? っていう。そのあたりで、〈365日を~〉というのが出てきたのかもしれないですね。

ーーかなり今までとは違った制作ですかね。

内澤:そうですね、今まではドラマ主題歌でも自分がイメージしたものの楽曲を持っていって、ある程度はそのまま進むことが多かったので。何度もゼロから1を作る作業を、短期間でする作業をここまでやったことはなかったですね。

ーー最終的にオンエアの状態まで持っていった時は、ひとつの達成感みたいなものはあったんですか。

内澤:達成感は薄かったですね。それこそドラマが始まってもまだ制作が続いていたので、できたっていう感覚は少なかったです。昨日ちょうど、ドラマの撮影現場に初めてお伺いしたんですけど。プロデューサーと久しぶりに会って、どうですかって聞いたら、「すごくいいものを作ってくれてありがとう」って言ってもらえたので。じゃあ、2番の歌詞考えようかっていう(笑)。

ーー実際に1話で曲が流れた時は、どう感じましたか。

内澤:自分のイメージしてるものと、周りの人が納得するものに焦点を合わせて進めていたので、自分がイメージした通りというものではあったんですけど。実は1話が流れた後に、もう一回歌を録り直しているんです。1話を観て、もうちょっと優しい歌い方の方が合うなって思ったんですよね。3話くらいからは、新しい歌のものに切り替わっていると思います。あとは第1話ではまだ、僕の打ち込んだストリングスの音だったんですけど、そこも生のストリングスに差し替えて、ミックスし直していますね。

ーードラマの進行中にもバージョンアップしていたとは。本当に納得のいくところまでとことんやっていたんですね。

内澤:作品に対する熱い想いがないと、なかなかこういうことを許してもらえないですよね。僕もどちらかというとギリギリまで粘るタイプで、制作する側の気持ちはわかるので、通じ合う部分はありました。だから、すごくやりがいがありましたね。

ーードラマを見ているから余計にかもしれないですが、その時々で温度が変わって聞こえる曲だと感じるんです。切ないシーンでは温かな曲として響くし、ハッピーなシーンでは、よりそれがとても大事で、普遍性のあることなんだっていうのが聞こえてくる。

内澤:具体的なものを盛り込みながらも、普遍性もないと、いろんなシチュエーションで曲がかかった時に寄り添えない。多分ドラマ以外で聴くときでも、聴く人の心に届くものにならないんじゃないかなって。ただ、それが一体どんな言葉で、どんなテンポ感で、どんな楽器を使えばいいのかとか、すごく悩みました。そのなかで、家族愛や恋人同士の愛だったり、いろんな形の愛があるけれども、愛っていう普遍的なものは変わらないので。その芯にあるものを、なんとか表現しようとすることがいいのかなというところに行き着いたというか。それが、歌い続けてきた“光”というワードでもあったんだと思うんです。

ーーそして、この「Hikari」という曲では、その光へと連れていくという動き、引っ張っていく力が描かれていますね。

内澤:実際に、この曲を誰目線で進めていくべきかを悩みながら作っていて。最初は、ドラマでいえば主人公に対して誰かがメッセージする、という目線で考えていたんです。でもそうじゃなくて、どんな環境でもまっすぐでいる主人公が、周りを変えていくイメージに行き着きました。

ーーandropの曲で、内澤さん自身が伝える光のイメージとしては、光へと連れていくという“動”の感覚は、あまりなかった気がするんです。それよりも、光があることを教えてくれたり、指し示すようなものが多かったと感じているんですが、今回より踏み込んだ表現になったのは、このドラマの影響というのは大きかったんでしょうか。

内澤:そうですね。それはこのドラマに関してもそうだし、バンドにおける環境の影響もあったと思うんです。ちょうど『cocoon』のツアーのあたりで、またガラッと、周りのスタッフやライブスタッフが変わったり、という大きな環境の変化があったんです。それもあって、メンバーそれぞれが、もっと自分がなんとかしなきゃならないなという思いを持ったり。来年はandropが10周年を迎えるんですけど、聴いてくれる人に対して、自分の音楽で何ができるのかを、すごく考える時期でもあったので、そういう環境の変化も歌詞に繋がって、より踏み込んだ表現になっていったと思います。

ーーその環境の変わり目から、心境的にも変化があったんですね。

内澤:さっきの病院に取材に行くことにも似ていると思うんですけど、やっぱり、ただ単にドラマに寄り添うだけの曲だと、僕らが伝えるとなったときに、リアリティがない。リアリティがあるからこそ、ちゃんと届けられる部分があると思うので。実際に思ったこと、感じたことを、歌う曲じゃないと、自分たちでやる意味がないなと。音楽をやっているからには、自分たちだからこそできることをやりたい。

ーー今までもドラマの主題歌は手がけてきましたが、どれも結構、テーマ的に難しい、シリアスな題材のものが多かったように思います。

内澤:多いですね、なんでなのかな(笑)。

ーーそれこそ、天童荒太さんの『家族狩り』をテレビドラマ化した時は、特に内容的にシリアスでかなりヘヴィでしたね。

内澤:ドラマ化が困難じゃないかと言われていた作品でしたしね。明るいコメディっぽいものの主題歌をやることがあまりないんです(笑)。どこかしら闇があって、その闇を抱えながらどう生きていくかという題材のものが多かったですね。そういった作品に関わってきたからこそ、より思う部分が、どんどん深くなっていくんですよね。

ーーそういった内面的な闇の部分を扱ったドラマで、andropに音楽としての役割を担ってもらおうと思われるというのは、やはりそこはandropというバンドもまたそこを追求してきたからじゃないですか。

内澤:そうなんですかね。偶然でもあると思うんですけどね(笑)。でも、例えば、闇と光というのは、andropとしてずっと歌ってきたことでもあるし。今回のような、人間の生死というテーマも、僕自身の歌のテーマとしてはずっとあるものだし。自分との葛藤というものも、andropとして歌ってきたものでもあるので、そこは、リンクしている部分でもありますね。

ーー改めて、その闇と光を歌うことは、自分のどういう部分が書かせているんだと思っていますか。

内澤:この『グッド・ドクター』という作品に関わっても思ったことなんですけども、自分を理解したり、自分を認めてあげられる人って、やっぱりいちばんは自分なんじゃないかなという気がしていて。「Hikari」を作るにあたって、ドラマの主人公がサヴァン症候群だということだったので、サヴァン症候群のキム・ピークという人が書いた本を読んだんです。

ーー映画にもなった人ですね。

内澤:そうですね、映画『レインマン』のモデルになった人です。その人は、自分を認めることで、より世界が明るくなるっていうことを言っていて。もうひとり、ダニエル・タメットというサヴァン症候群の方の本を読んだ時にも同じようなことを言っていたんです。それはすごく僕自身も思っていたことだったんですよね。自分と他人を比べて、自分が足りていないとか、自分がよくないって思うんじゃなくて、それはただの“ちがい”であって。そこを認めてあげられるのは、自分でしかないし。自分にしかできないものはきっとある、って。この『グッド・ドクター』という作品に関わって、曲を作っていって、それはより感じたことでしたね。

ーーそうだったんですね。

内澤:僕は、自分自身をすごく信用してなかったし、自分に自信がないまま、ずっと生きてきて。音楽と出会って、音楽の力で自分を変えられてきた部分があるんです。自分と向き合うことや、自分の心の中にある暗いものは、自分じゃないと光が当てられないんじゃないかなと思うんです。他人に言われて変わる部分ももちろんあると思うんですけど。その他人の声に耳を傾ける行為すらも、自分じゃないと選択できない。物心ついたときから、ずっと自問自答をしたり、悩むことが多かったんですけど。自分自身に光が当てられるようになったきっかけをくれたのが、音楽だった。だから、音楽の力を信じているんですよね。

ーー今回1曲に徹底的に向き合って、これまでの経験や新しい体験も経た曲だからこそ、いろんなことが繋がっていくような感覚ですね。

内澤:そうですね。何度も挫折しそうにはなりましたけど(笑)。アーティスティックにというか、瞬間的に生まれてきたものを形にしなければならなかったり、今まで培ってきた知識を作家的に当てはめたりすることも必要になった制作で、すごくいい経験になったし、やりがいがありました。1曲に、何カ月もの時間をかけて、力を入れることができて。それができたのは、ドラマのスタッフだったり、レコード会社だったり、いろんな人のおかげでできたことでもあったので、ありがたかったです。本当なら、全曲こうやって作りたいなと思っているんですけどね(笑)。

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