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三島由紀夫に心酔する青年たちの情愛描く「逆光」7月公開、脚本は渡辺あや

ナタリー

21/5/13(木) 12:00

「逆光」

「よこがお」、ドラマ「ワンダーウォール」で知られる俳優の須藤蓮が監督・主演・企画を担った映画「逆光」の製作が明らかに。7月17日に舞台となった広島・シネマ尾道で先行公開されたのち、全国で順次上映される。

須藤が「ジョゼと虎と魚たち」や連続テレビ小説「カーネーション」の脚本家である渡辺あやと共同で企画した本作。映画は、2人が「ワンダーウォール 劇場版」公開時に尾道を訪れたことをきっかけに着想され、渡辺が脚本を書き下ろした。ただ「自分たちが作りたいものを作る」ことを唯一のルールに互いの持続化給付金を持ち寄り、若い役者やスタッフを中心に作り上げた自主制作映画だ。

映画は1970年代を舞台に、真夏の尾道で三島由紀夫に心酔する2人の青年の情愛を描く官能的な物語。22歳の主人公・晃は大学の先輩である吉岡を連れて帰郷する。晃は思いを寄せる吉岡に、夏休みを尾道で一緒に過ごす提案をしたのだった。晃は先輩を退屈させないため、女の子を誘って遊びに出かけることを思いつく。幼なじみの文江から、少し変わった性格のみーこを紹介してもらった晃と吉岡。一緒に遊ぶようになる4人だが、やがて吉岡はみーこに好意を抱き始め、晃を悩ませていく。

須藤が晃、「ワンダーウォール」の中崎敏が吉岡、ドラマ「海月姫」の富山えり子が文江、オーディションで見出された木越明(きごしあき)がみーこを演じた。そのほかSO-RI、三村和敬、河本清順、松寺千恵美がキャストに名を連ねている。「ジョゼと虎と魚たち」「浅田家!」などで知られる小川真司がエグゼクティブプロデューサーとして参加し、大友良英が音楽を手がけた。

MotionGalleryでは本日5月13日からクラウドファンディングを実施。須藤は「広島県尾道市で撮影された本作の上映を尾道からスタートします。つまり『地方から東京へ』という配給展開を実現することで、新たな映画体験の可能性を掘り起こしたい。そのための自主配給の資金を募るプロジェクトです。ご協力の程、よろしくお願いいたします」と協力を仰いでいる。中崎、渡辺、小川によるコメントは下記の通り。

須藤蓮 コメント

この度、初めて映画を撮りました。企画の立ち上げからお金の計算まで、全て自分達でやるんだ!と意気込んで始めたものの、まさに「言うは易し、行うは難し」、その大変さは想像をはるかに上回るものでした。正直なめてました。
一方で、ただただ自分の感覚と仲間たちの才能を信じながら突き進んできたこの数ヶ月、鬱屈していたエネルギーがぐるぐると循環し、満身創痍になりつつも物を作る喜びを噛み締めた時間は、まさに青春そのものでした。僕は自他共に認めるお喋り男なのですが、いざ作品について説明を求められると急に一つとして言葉が出てこなくなることに、自分でびっくりしています。なぜ、このあらすじなのか、時代設定なのか、カメラワークなのか、そもそもなぜ尾道で撮ったのか。どんな質問にも「どうしてもそうしたかったから」としか答えようがなく、それはちょうど恋心を説明できないようなものなのかもしれないと思っています。
言葉にならない僕の宝物、「逆光」をぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。

中崎敏 コメント

この作品のイン前、監督須藤蓮は「衣装、ロケ地、撮り方全部最高のものを用意してあるので絶対に魅力的に撮ります」と力強く言ってくれました。その真っ直ぐな目と愚直なまでの行動力は疑念を生む一切の隙を許さず、自分のみならず周りを惹きつけて更にポテンシャルを高めました。その言葉通り、細部までこだわり抜いた絵作りは画面に映る全てのものに光を当てその物の持つ生来の輝きを何倍にも膨らませます。大人になるにつれて陰の部分に物事の本質を見るようになりがちでしたが、それは光の当たる部分に魅せられているという大前提があってこそというのを思い出させてくれました。須藤蓮の初監督作品、五感をフルに使ってお楽しみください。

渡辺あや コメント

一度でいいから、どこからの依頼でもなくなんの企画会議も通さず、ただ純粋に「作りたい」という理由で作品を作ってみたいものだと思いながら、そんな自由は叶わぬ夢だと長らく諦めていました。
ところが去年、突如「よし、そういうのを作るぞ」と思いたったのは、やはり緊急事態宣言下という、あらゆる仕事が吹っ飛び、日常がすべて崩壊したような時間の中で、それはかつてなく切実な、作家としての生存本能のような衝動だったと思います。
そうして須藤蓮監督とお互いの持続化給付金を持ちよって、若い役者やスタッフたちに声をかけ、ただ「自分たちが作りたいものを作る」ことを唯一のルールとして、この世に生まれてきたのがこの「逆光」です。
闇の中にみずから土を持ち上げて芽吹く緑が時々底知れぬ力を見せてくれるように、本作もその完成に至るまでの過程の中で、びっくりするような希望の景色を私にたくさん見せてくれました。
本作のそんな生命力が、これから誰かの心に「生きたまま届く」ことを夢みて、ワクワクしております。

小川真司 コメント

「逆光」のラッシュを初めて見たときの印象は鮮烈だった。正直、須藤蓮がここまでちゃんと監督できるとは想像してなかったので、編集で意見を求められたときにはかなり真剣に応えてアドバイスした。結果、その流れで公開の手助けをすることになったわけだ。しかし何やらこれは必然だったように思えて仕方ない。繊細に構築された作品世界に魅力があったというのももちろんあるのだが、コロナ禍に遭った時代の節目にあたる今、「匂い」や「手触り」を主たる豊穣さとする「映画」を持続可能にするために、制作から公開までまるっとリノベーションしようという「映画ゲリラ」と呼びたくなるような無謀な志がこんなところから出てきたのかという発見に心が躍ってしまったのだ。「逆光」は時代に逆行しているようで逆行していない。それを証明できるのは、私と同じように時代に差し込まれる光を待ち望んでいる映画ファンなのだと信じている。同志よ、来れ!

(c)2021『逆光』FILM

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