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田中圭は人間に戻れるか? 『先生を消す方程式。』ゾンビ展開を狙う鈴木おさむの方程式

リアルサウンド

20/12/6(日) 13:20

 先生を消そうとしたら、先生がゾンビになって襲ってきた。『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)第6話は義経(田中圭)復活の場面ではじまる。義経を死なせたことで自責の念にさいなまれた命(秋谷郁甫)は、義経が埋められた土に赤ワインを捧げ、まじないの言葉を唱える。命のネクロマンシー秘術によって義経は生き返ったが、その姿は以前とは異なっていた。

 作中で登場人物が死んだり、前と違う姿で再登場することはあるが、ジャンルごと変わってしまう例は多くない。復活した義経は、基本動作は緩慢で記憶は断片的、打たれ強い(死んでいるので)などゾンビとしての特徴を備えている。ゾンビになった義経を止めるには、頭を潰さなくてはならないのだろうか。想像するだけでファンの悲鳴が聞こえてきそうだ。

 学園ドラマからゾンビホラーへ。斬新すぎる展開は脚本・鈴木おさむの真骨頂だ。『奪い愛、冬』や『M 愛すべき人がいて』(いずれもテレビ朝日系)で注目を集めた鈴木の本職は放送作家。視聴者のツボを突く手腕はドラマや映画でも発揮されている。

 脚本家としての鈴木の特徴は、ストーリー展開の速さだ。ウェブ配信された『奪い愛、夏』(AbemaTV)最終回では、副音声で出演者と舞台裏トークを繰り広げており、鈴木の考えを知ることができる。鈴木によると「物語が起きないところは削って、展開のシーンだけ残していく」とのことで、冗長さを排した脚本がスリリングな展開に一役買っていることは間違いない。

 また、鈴木作の舞台劇にドラマや映画にもなった『八王子ゾンビーズ』がある。同作は山下健二郎演じる元ダンサーの僧侶・羽吹とイケメンゾンビ集団の交流を描くもので、従来のイメージとは違うゾンビの描き方が新鮮だった。『せんけす』の急展開や主人公のゾンビ化は過去作に伏線が仕込まれており、鈴木の作風の進化ととらえることもできる。

 こういった作家性を俳優が理解していることも大きい。1年に1作、土曜ナイトドラマで主演を務めてきた田中は、「何かが起こるのではないかと思わせてくれる人」と鈴木への信頼を明かしており(参考:田中圭が語る、『先生を消す方程式。』脚本家・鈴木おさむへの信頼 「僕にとって本当に貴重な人」)、今作のポイントを「ドS」な鈴木に「キャストがどうやって打ち勝つか」であると話している。

 『M 愛すべき人がいて』に続いて白眼の丸い変顔を披露した久保田紗友や『奪い愛、夏』にも出演した松本まりかをはじめ、俳優一人ひとりが鈴木の世界観を理解し、咀嚼することで、飛躍のあるストーリーにある種の説得力が生まれる。第6話で、朝日(山田裕貴)に馬乗りになられた状態で昏睡状態を演じた松本や、某司会を務めるピン芸人とそっくりな高校時代の朝日など、鈴木の企てに全力で打ち返した結果、副産物として他では見られないカットも実現した。

 ゾンビ展開の利点は、どんなシナリオにも組み込めるところ。死んでしまった恋人やペット、歴史もの、刑事ドラマの犯人、医療過誤の犠牲者をはじめ、人類滅亡やナレ死からの再登場にも使える。幽霊と似ているが、生前と真逆の性格を設定できるところは、まさに万能キャラクター。「困った時はゾンビ出せ」の方程式は今後定番化するかもしれない。

 義経ゾンビに追い回され、体育倉庫に逃げ込んだ生徒たち。朝になり、日光とともにゾンビは姿を消した。「1体いれば他にもいる」というゾンビの法則から、複数のゾンビがいる可能性も考えられる。義経は人間に戻ることができるのか? 最終章にさしかかり、ますますカオスな『せんけす』から目が離せない。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『先生を消す方程式。』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、高橋侃、秋谷郁甫、奥山かずさ、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、松本まりか
脚本:鈴木おさむ
音楽:HAL
監督:小松隆志ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式Twitter: https://twitter.com/senkesu5
公式Instagram: https://www.instagram.com/senkesu5/

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