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板尾創路が魅せる喜劇王のシュールな佇まい 『おちょやん』千之助との対峙に期待

リアルサウンド

21/3/8(月) 6:00

 『おちょやん』(NHK総合)第13週目「兄弟喧嘩」では、世界の喜劇王チャップリンの来日に際して、どうやら“鶴亀家庭劇の千之助(星田英利)vs万太郎一座の喜劇王・須賀廼家万太郎(板尾創路)”の構図が描かれるようだ。

 板尾は本作が連ドラ出演4作品目。『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)などバラエティー番組で注目を集めた芸人ながら、出演したドラマや映画の作品数は数知れず、映画監督・脚本も手がけてしまう“鬼才”である。

 連ドラ作品『まれ』(NHK総合)で演じた主人公の舅で市役所勤めの真面目一辺倒の堅物・紺谷博之役とは対極の存在を、本作での喜劇王では魅せてくれている。成田凌演じる一平の圧巻の襲名&結婚報告が話題をかっさらった先週の放送時も、一瞬映り込んだ須賀廼家万太郎が舞台袖でゆで卵を口に放り込む姿がSNSを湧かせた。「只者ではない感」「常人離れしたオーラ」を漂わせる喜劇王を演じながら、同時期に放送されている第2シーズン突入の『監察医 朝顔』(フジテレビ系)ではベテラン法医学者の藤堂雅史役を務め、現在上映中の映画『ファーストラヴ』では殺人容疑がかけられた主人公の女子大生の父親役を演じている。

 板尾を唯一無二たらしめているのは、あの何食わぬ顔して、通常運転を装いながらどこかにさりげなく「違和感」を散りばめ、予定調和でないことをさらりとやってのけてしまえるところだろう。さらには、それが本人が意図してやっているのかどうなのか全く読めない、そんなことを意識させないところに板尾の底知れなさと凄みがあるのだ。

 本作の場合には、どこまでが本気でどこからがふざけているのかわからない喜劇王のシュールな佇まいに投影されているし、『監察医 朝顔』では職場での顔とは異なる妻の前での威厳のなさというギャップの面白みに繋がっているし、『ファーストラヴ』では多感な時期にある娘を異様な環境に放り込む常軌を逸した父親のいかにも神経質そうなところに反映されている。

 「異様さ」「違和感」をシリアスにもコミカルにもユーモラスにも転用できるだけでなく、シリアスなのにどこかコミカルというようなより“生っぽさ”“人間臭さ”を見せてくれ、人間の悲哀を漂わせてくれる。全く“温度感”の違うキャラクターのさらにはその時々の温度差を演じ分け、そして観る者に多面的な解釈の幅を与えてくれるのだ。

 次週、笑いに一切妥協のない、一癖も二癖もある須賀廼家万太郎と千之助の掛け合いを観られるのが楽しみでならない。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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