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欅坂46『21人の未完成』は写真展のよう? 平手友梨奈、志田愛佳、原田葵らの写真から感じたこと

リアルサウンド

18/11/29(木) 8:00

 欅坂46初のグループ写真集『21人の未完成』(集英社)は、卒業や活動休止メンバーを含めた1期生21人全員が撮り下ろしで一冊に収まるという、まさに奇跡とも言える、全304ページ重さ約1Kgの写真集。発売から一週間が過ぎた今、改めて気になったメンバーの作品をピックアップしてみたい。

(関連:欅坂46、21人体制は何が特別だったのか “21人の未完成”だからこそ生まれたグループの魅力

 21人のメンバーをそれぞれ21人の有名カメラマンが撮影している『21人の未完成』は、ファンにとってはメモリアルな一冊として楽しめる一方で、どこか写真展に来たような感覚をも味わえる。1人14ページの中で、いかに自分の世界観でメンバーの個性を表現するか、カメラマン同士の見えない競い合いも見どころの一つだからだ。

 まずは、平手友梨奈×神藤剛の「共振」。欅坂の原点とも言える渋谷からスタートし、海に落ちてもがく平手の姿。何者でもないただの少女が芸能界という大海原でもがき苦しみ、そして哀しみや不安にも似た何とも言えない表情でこちらを見つめる姿は、きっと平手の境遇を投影しているのだろう。渋谷での制服姿はいつにも増して等身大の高校生であることに気づかされ、海のシーンでひたする一方向を向いているところからは、振り返らず前だけを見つめて進んでいる感じが伝わって来る。

 この写真集で最も魅力が活かされたと感じたのは上村莉菜×奥本昭久の「小動物の衝動」。欅愛に溢れた思慮深い言動が目立つ上村は、欅坂の中でも「妖精」と言われるほど、黒のストレートロングヘアに透明感ある愛らしさで人気を誇るメンバー。本来ならいち早くブレイクしてもおかしくない逸材だが、まだその魅力を活かしきれていない印象があった。以前からロリータファッションのグラビアには何度も挑戦してきたが、単に可愛いという印象に留まっていたように思う。今作でも、メルヘンチックなアンティーク調のスタジオで、ワンピースに身を包んだ上村だったが、カメラ目線の時には、無表情の中にも何かを訴えてくる人形のような存在感を発揮し、どこか読者を見透かしているように感じた。目線がない時の無防備な姿には思わずドキッとしてしまう大人の色香が醸し出されていて、奥村が言う「見ているのか見せられているのか」という言葉が妙にしっくり当てはまる。今まで表現しきれていなかった上村の真の魅力が引き出されると同時に、素顔を見せないアイドルとしての幻想を守っていることも感じられる作品だ。

 頭の中の個性が溢れる作品となっているのは、長沢菜々香×藤本和典の「My World」。写真集が発売された当初からSNSを中心に、“ほうじ茶”の札を持って裸足で走る長沢の姿が話題になっていた。『伊東温泉 ハトヤホテル』といった昭和テイスト満載のロケ地で撮影する時点で勝ちが確定したような、長沢ワールド全開のエキセントリックな世界観が実に癖になる。台車に座ったり、床に寝転がったり、伊豆のレトロなテーマパークでの記念撮影風だったりと、まるで家族旅行で無邪気にはしゃぐ女の子のよう。たまに古い家族旅行の写真を見返したときに、なんでこんなシチュエーションで撮ったのだろう? と不可解に思いながらも笑って見入ってしまう、そんな写真に近いものを感じる。ただ、衣装は21人の中で最多の8着。しっかりと計算して撮影されたものだと考えると、長沢と藤本のセンスの奥深さを感じざるを得ない。

 今回の写真集でやはり注目したいのは、卒業生の中でも志田愛佳×細居幸次郎の「青い車」。境遇そのままに、作品からも、田舎に帰って昔の仲間に会ったような空気感が漂っている。あの頃の志田をキープしつつも、アイドルの魂が抜けた一般人に近い雰囲気で、まさに“今の志田愛佳”が見られる作品だ。このタイトルがスピッツの曲から来ているのであれば、最初の花束のカットといい、色々と意味深な作品だと感じる。実際に写真集が出版される直前に志田はグループを卒業した。

 そして休業中の原田葵×熊木優の「花を食べる」。かつて、植物に囲まれた部屋で過ごし、花を食べる少女「植物少女」という原田葵の個人PVがあったが、その世界の延長線上にあるような作品だ。内容の美しさはさることながら、それ以上に原田の成長した容姿にまず驚かされる。休業前にはすっかり小学生っぽさはなくなっていたものの、休業中にここまで大人っぽくなっていると、1期生最後の希望と言っても過言ではないほどのワクワク感が芽生え、復帰が楽しみで仕方ない。

 今回紹介したのはごく一部だが、作品それぞれに深く語れる要素が詰まった、実に読み応えある写真集に仕上がっている。カメラマンが自分の個性をどこまで出せるのか、またメンバーのセクシーな姿をどこまで見せられるのか、試行錯誤しながら限界ギリギリのラインで挑む姿が想像でき、そういったカメラマンとしての戦いが垣間見えるのもまた面白い。たとえ欅坂に興味がなくても充分楽しめる、むしろ写真好きの人にお勧めしたい内容になっている。またポートレート写真における一通りのパターンが網羅されているので、写真を学んでいる人、写真に関係した仕事をしている人には、ぜひ手元に置いてもらいたい一冊だ。

 こういう形で最後に21人が揃うというのもまた欅坂らしい。21人全員の集合が実現したこの写真集は、ファンへの最高のプレゼントであることは間違いない。(文=本 手)

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