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SHE’S、KEYTALK、マカロニえんぴつ、Creepy Nuts…音楽愛とともに作り上げられた『SWEET LOVE SHARE』レポ

リアルサウンド

20/9/3(木) 13:00

 夏の風物詩である夏フェスも、今年はコロナ禍の影響により、オンライン上での開催が大半となっている。『FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』はYouTubeでの配信で過去のライブ映像を配信した。特に『フジロック』は配信中の3日間、毎晩SNSで話題となっていたことも記憶に新しい。一方、『VIVA LA ROCK』はオンラインフェス『ビバラ!オンライン』として開催。各ミュージシャンのパフォーマンスを生配信し、感染防止も含めて成功を収めた。

 オンラインフェスのこれまでの傾向を見ていると、『フジロック』などに代表される「アーカイブ型」と『ビバラ!オンライン』に代表される「無観客ライブ型」に大きく分けられる。そんな中で『SWEET LOVE SHOWER』のオンラインフェス、『SWEET LOVE SHARE』が8月29、30日に開催された。本稿では、この2日間の一部アクトの模様についてレポートする。

【同イベントのテクノロジー面に関する記事はこちら】

 今回の『SWEET LOVE SHARE』は、3つのチャンネルで同時生配信された。バンドアクト中心の「Mt.FUJI ch.」。アコースティックのアクトが中心の「WATER FRONT ch.」。そしてスタジオでのトークライブや『SWEET LOVE SHOWER』の過去映像を配信する「SPACE SHOWER TV STUDIO ch.」。3つのチャンネルを行き来できる、新しい形のオンラインフェスとなっていた。

 無料配信となった初日、Mt.FUJI ch.のトップバッターを飾ったのはズーカラデル。「ズーカラデル、始めますー!」とエネルギッシュな挨拶からスタートした。3人のバンドアンサンブルがエモーショナルな響きを生み出し、オーディエンスの心に寄り添う丁寧な演奏。飾らない彼らの言葉が、シンプルで気持ちの良いメロディに乗って切実に迫ってくる。ミニマムで等身大な柔らかいロックンロールが、2020年の夏だからこそ切実さを持って鳴った、心に残るアクトだった。

 Mt.FUJI ch.2組目のアクトはSHE’S。煌びやかなSEと共にメンバーがステージに立つと始まった1曲目は「Masquerade」。異国情緒漂うサウンドに井上竜馬(Vo / Key)の色気たっぷりのボーカルが絡み合う。美しいキーボードのメロディからダイナミックなロックサウンドへと激しく変化する「Unforgive」。そしてエレクトロ調のサウンドが印象的な「Blowing in the Wind」とSHE’Sの音楽性の幅広さを象徴するナンバーが演奏されると、最後はアップテンポなダンスナンバー「Dance With Me」へ。夏にピッタリの蒼々としたサウンドの裏に、オンラインだろうと自身の音楽を届けようとするSHE’Sの情熱を感じる演奏だった。

 初日のトリを飾ったのはKEYTALK。ステージに上がる瞬間から全力投球の彼らは「MATSURI BAYASHI」「Summer Venus」とサマーチューンを連続でドロップ。夏フェスも甲子園も花火大会も無くなったこの夏の終わりに彼らが音楽で夏を届けようと、夏バンド・KEYTALKの本領が発揮されたライブだった。最後はキラーチューン「MONSTER DANCE」。見ているオーディエンスを踊らせ、狂騒の渦へ巻きこむようなKEYTALKの演奏がバッチリキマり、『SWEET LOVE SHARE』初日は幕を下ろした。

 「マカロニえんぴつでーす」とボーカル・はっとりのユルい挨拶から始まった2日目、Mt FUJI ch.トップバッターのマカロニえんぴつ。彼らのソリッドでポップな演奏は、バンドメンバーの演奏の巧みさと丁寧に音を鳴らそうという心意気を感じる。「止まない雨は無い」とはっとりが語り、最後に演奏したのは「ミスター・ブルースカイ」。思わず心を揺さぶられるはっとりの絶唱だった。

 1曲目から「ヘルレイザー」のキレキレのフロウで始まったCreepy Nuts。「よふかしのうた」での『DMC』世界大会で優勝したDJであるDJ松永の圧倒的なターンテーブリズムに最早スターの風格すら漂うが、その後のMCでマイクをカメラのレンズに当ててしまったことをスタッフに詫びるR-指定の姿は「Creepyらしさ」にあふれていた。「僅かでも希望を持っていきましょう」と語り始まったのは「かつて天才だった俺たちへ」。その圧倒的なステージングは、オーディエンスに希望を届ける覚悟に溢れていた。

 2日目のMt FUJI ch.、3番手はBLUE ENCOUNT。彼ららしいロックパーティチューン「ワナビィ」では「いまに見てろよコロナウイルス」という替え歌も飛び出す。MCで『ラブシャ』への思いを語る田邊駿一(Vo / Gt)の目には涙が。そんな彼自身の『ラブシャ』への愛や、世界への思いが爆発した「もっと光を」。そのエモーショナルな演奏はどこまでもBLUE ENCOUNTらしく、こちらまで涙してしまいそうになる。最後はこれからも歌い続ける覚悟を全身全霊で届けた「アンコール」。たとえ眼前に観客がいなくとも、いつだって彼らは全力だ。

 2日目のWATER FRONT ch.にはホリエアツシ(ストレイテナー)が登場。普段はストレイテナーのフロントマンとして活動する彼だが、この日はソロでの出演。普段はバンドサウンドのストレイテナーの楽曲が、ホリエのキーボードやアコースティックギターの弾き語りで響くのは新鮮だ。ライブ後半ではホリエと親交が深く、昨年は共にツアーも開催したELLEGARDENの「金星」も披露。時折ビールを飲みながら、シンプルな弾き語りスタイルで進む彼のソロライブは思わず心が軽やかになる清廉さにあふれていた。 

 SPACE SHOWER TV STUDIO ch.ではスペシャらしい様々なミュージシャンのトークが展開。きゃりーぱみゅぱみゅやヤバイTシャツ屋さん、04 Limited Sazabysや10-FEETなどが軽快なトークで盛り上げた。また、同チャンネルでは「SWEET LOVE SHOWER LIVE SELECTION 1996-2019」と題し、ライブアーカイブ映像が配信された。『SWEET LOVE SHOWER』が日比谷野外音楽堂で開催されていた当時の映像や、すでに解散したバンドのライブ映像など、普段は見ることのできない映像の宝庫で思わず釘付けになってしまう。

 Mt FUJI ch.では、復活後の彼らのテーマソングのように響く「千%」から始まったKICK THE CAN CREWのステージ。ソーシャルディスタンスをイジったり、今年の夏は暇だとユーモラスに語るMCから自然な流れで曲に入る様は彼らのエンターテイナーぶりを感じる瞬間だ。「なんとかなる、なるようになる」とシンプルながら説得力のあるMCの後にドロップされた「ユートピア」がシリアスに響くと、最後は「マルシェ」で圧倒的な幸福感を生み出してライブを終えた。

 2日間の大トリを務めるのはTHE BAWDIES。いつものライブと同じように揃いのスーツで身を固めた4人は曲が始まる前からフルテンションだ。ライブチューン「HOT DOG」からTHE BAWDIESらしさ全開のロックンロールで観る者全てを圧倒する。小噺のようなROY(Vo / Ba)のMCから披露された新曲も、60’sロックンロールへの愛とリスペクトが詰まった1曲に仕上がっていた。「ロックンロールは悲しみと苦しみのどん底から上がっていくために生まれた最高のダンスミュージック」。そう語るROYの姿が印象深い。このコロナ禍という状況だからこそ、ロックは、音楽は我々に必要だ。改めてそう確信したTHE BAWDIESの熱演と、TAXMAN(Gt/Vo)の「しぇわっしょい」の締めで『SWEET LOVE SHARE』は幕を下ろした。

 無観客ライブとアーカイブ配信の複合型フェスとして開催された『SWEET LOVE SHARE』。3チャンネルを自由に行き来できる構造なども含めて他のオンラインフェス以上にフェスらしさを作りだすと共に、オンラインフェスの新しい在り方を提示したフェスとなった。同時に、他のオンラインイベントではどうしても気になる課題であった音ズレや音飛び、画質の悪さなども無く、オンラインイベントの中でも格段に快適なフェスであったことも印象深い。

 昨今の情勢の中で音楽イベントを開催するということはそれだけでも価値のあることなのは承知の上で、それでも純粋に音楽を楽しめる心地よい空間をオンライン上に生み出そうと試行錯誤し、作り上げた出演者やスタッフには頭が上がらない。それもひとえに、このフェスを作りあげた一人ひとりが持つ音楽への愛があってこそ。しかしやはり来年こそは、山中湖の雄大な自然の中で、爆音のロックサウンドを身体中で感じたいものだ。その日まで、今回の各アクトが鳴らした音楽を糧にしながら生きていこう。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」でポップスとロックを中心としたコラム、ライブレポ、ディスクレビュー等を執筆。
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