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止まらない『鬼滅の刃』の無限興行列車 年内はこのままずっと1位の可能性も?

リアルサウンド

20/10/29(木) 16:00

 先週末の動員ランキングは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が土日2日間で動員227万3000人、興収30億4100万円をあげて、先週に引き続き圧倒的な強さで2週連続の1位となった。驚かされるのはその前週比の高さで、動員、興収ともに90%以上の水準を維持。公開から10日間、10月25日(日)時点での累計動員は798万3442人、累計興収107億5423万2550円。どうしてこんなにとてつもない歴代新記録が可能となったのか、その一つの背景については先週のコラム(参考:空前の『鬼滅の刃』現象 映画興行は「なりふりかまわない」新基準へ)でも書いたが、最終興収がどこまでいくかは別として、興収100億円に達するスピードという点では今後も塗り替える作品は現れないのではないだろうか。

 というわけで、相変わらずテレビや新聞などのレガシーメディアはどこもかしこも鬼滅鬼滅鬼滅で、例えば先週の週末動員ランキングで2位(動員も興収も『鬼滅の刃』の20分の1以下だが)に初登場した『きみの瞳が問いかけている』を筆頭に、同時期に公開された中規模〜大規模公開作品は話題に上がる機会も限られて思いっきりその割りを食ってしまった。こればかりは歴史的大ヒット作とタイミングがぶつかってしまったことの不運を嘆くしかない。気を取り直して、今回は難攻不落とも思える『鬼滅の刃』の牙城を今後脅かす可能性がある作品を探っていこう。

 ………………………………。ない。全然ない。今週末公開の日本映画としては、東宝の『罪の声』、東映の『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』、ワーナーの『とんかつDJアゲ太郎』などが控えているが、いずれの作品も『鬼滅の刃』の対抗勢力となりそうな機運はない。小栗旬&星野源がリードロールを務め、テレビドラマではヒット続きの野木亜紀子が脚本を手掛ける『罪の声』ならあるいは?と思う人もいるかもしれないがーー作品を観た上で言わせてもらうと、口コミでの広がりなどもあまり期待できず、相手にならないと思う。いずれにせよ、『鬼滅の刃』の公開日から1ヶ月以内に公開される作品は、どの作品もシリーズのファンや出演者のファンといった固定客以外の浮動票を獲得するのは極めて困難な状況だ。

 ちょうどその「1ヶ月」以上が経って、当初の8月公開予定から『ドラえもん』同士の玉突きによって11月20日に公開される運びとなった『STAND BY ME ドラえもん 2』はどうだろう? 2014年8月に公開された前作『STAND BY ME ドラえもん』のオープニング週末2日間の興収は7億6724万8000円。それでも先週末の『鬼滅の刃』の4分の1の成績だが、そもそも前作と同じ水準のヒットを記録できるかどうか。自分は、『STAND BY ME ドラえもん 2』が『鬼滅の刃』を1週でも抜き去るのは難しいと予測する。

 もちろん、来年になれば東宝&東映&カラー共同配給の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年1月23日公開予定)のような超強力作も控えてはいるが、このままだと年内は『鬼滅の刃』がずっと1位を独走することもあり得る情勢だ。え? 「12月18日には『ナイル殺人事件』(ディズニー)が、12月25日には『ワンダーウーマン 1984』(ワーナー)が世界同時公開されるでしょ」って? 自分はあまり悲観的なタイプの人間ではないけれど、アメリカとヨーロッパ各国における新型コロナウイルスの最新の感染状況を見て、年内の世界同時公開作品がまだ予定通り公開されると思えるほどの楽観主義者ではない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
全国公開中
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔
原作:吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com
公式Twitter:@kimetsu_off

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