Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

劇団EXILE 秋山真太郎が語る、俳優として小説を書く意味 「海外では俳優もクリエイティブ」

リアルサウンド

19/7/11(木) 13:00

 劇団EXILE 秋山真太郎による小説デビュー作『一年で、一番君に遠い日。』が、4月11日に上梓された。キノブックスが主催する『ショートショート大賞』第1回アンバサダーを務めたことをきっかけに小説の執筆を開始したという秋山。『一年で、一番君に遠い日。』は、秋山が三年にわたって書きためた掌編20篇を収録しており、それぞれ異なる手触りの作風となっているのが特徴だ。収録作品「風をさがしてる」では、中に出てくる手紙の一部をEXILE TAKAHIROが直筆で書き起こしている。所属事務所のLDHにおいて、初めての小説家となった秋山は、俳優として活躍する中、どのようにして本書を書きあげたのか。本書の狙いと独自のクリエイティブ論に迫った。(編集部)

■「劇団EXILEのメンバーにサポートしてもらった」

――『一年で、一番君に遠い日。』は、どの作品にもアイデアがあって、読み進むうちに驚きがある作品でした。こういう掌編小説を書こうと思ったきっかけは?

秋山真太郎(以下、秋山):キノブックス主催の「ショートショート大賞」の第1回アンバサダーを務めたことがきっかけで、ショートショートを読むようになったのがきっかけの一つです。そこから日常で思いついたことをメモしておいて、プロットを書いて、書けそうだと思ったものから形にしていったところ、自然とこういう形になりました。アイデア勝負のショートショートという形式だったこともあり、ファンタジーが多くなりました。

――一番最初に手がかけた作品は?

秋山:「八日目」がおそらく最初の小説だったと思います。ちょうど三年前から書き始めた感じです。ショートショートに関心を抱いてから、今ではトータルで3000本くらいを読んでいると思いますが、アイデアが被らないものを探すだけでも手いっぱいですね。これまで読んだ作品の中では、星新一さんの「友情の杯」という作品に脱帽しました。ラストの解釈を読者に委ねる作品で、短い作品ながらずっと心に残ります。いつかこういう作品を書いてみたいと思ったのも、モチベーションになっています。

――今回、本を出版するにあたって、EXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチさんとのトークショーも開催するそうですね。ケンチさんとも普段から本の話はしますか?

秋山:よく話しています。「ショートショート大賞」の二回目のアンバサダーとしてケンチさんを推薦させていただいたり、雑誌『月刊EXILE』でケンチさんが連載している「たちばな書店」に僕が寄稿したりと、普段から本を通じたいろいろな交流があります。

――秋山さんと同じ長崎出身のEXILE TAKAHIROさんも、秋山さんがプロデューサーの一人でもある映画『僕に、会いたかった』で共演したり、本書に自筆の原稿を寄せていたりと、交流がありますね。

秋山:同じ出身地同士だと方言でしゃべることができるので、自然と距離は近くなります。LDHでは他にも、DEEPのYUICHIROやTHE RAMPAGEの浦川翔平が長崎出身ですし、スタッフにも同郷がいたりするので、心強いです。

――劇団EXILEの皆さんからは、本書に対してどんな反応がありましたか?

秋山:メンバーは作品のいくつかは読んでくれてるし、もともとメンバーからインスピレーションを得た作品もあります。小野塚(勇人)には、「何か単語をちょうだい」と言うと、小野塚が適当にいくつかの単語を書いてLINEしてくれるので、そこから即興で作った作品もあります。「修学旅行」という、バッタがラップする作品がそれですね。

――「修学旅行」は、確かに即興的な感じがありました。

秋山:ほかにも、小澤(雄太)からインスピレーションを得たものもあります。「鉄男」という作品は、普段の小澤と僕とのやりとりに、「お前、顔に砂鉄ついてるよ」「髭です!」というのがあって、そこから来ています。小澤はこの作品を読んで、「めっちゃ面白いですね! 映像化するなら主演は俺ですね!」と言っていたのですが、「オーディションさせてもらいます」と返しておきました(笑)。

――本人がモデルなのに、すんなり主演はさせてもらえないと(笑)。

秋山:あとは、書いたものを小澤と青柳(翔)の前で朗読して、感想を聞いたりもしました。劇団EXILEのメンバーには、いろいろな形でサポートしてもらいました。

■「ジャンルにとらわれず、できることを形に」

――秋山さんは、劇団EXILEが結成された当初からのメンバーです。最初の頃はどんな感じでしたか?

秋山:僕は役者になりたくて二十歳で上京して、雑誌モデルをしながらカラオケ屋でバイトをしていたんですけど、そのバイト先で知り合った人に、LDHという事務所ができて俳優を探してるから会ってみないかと誘われて、2007年頃に所属することになりました。その頃はまだ「劇団EXILES」と呼んでいて、今のメンバーではなくEXILEのAKIRAさんやMAKIDAIさんとやっていました。その後にオーディションを重ねて、僕が青柳や小澤と一緒にやっていた華組や、ELLYや白濱亜嵐や山下健二郎らによる風組が立ち上がっていきました。

――当時の印象深いエピソードがあったら教えてください。

秋山:小澤の家に集まってみんなでラーメンを食べたり、普通の若者同士の過ごし方をしていましたね(笑)。引っ越しを手伝ってもらったこともあります。みんなでIKEAに買い物に行って、小澤や青柳に家具を組み立ててもらったりしました。

――その頃からすると、今の劇団EXILEはどうですか?

秋山:何かを成し遂げたわけではなく、まだ発展途上だとは思いますが、だんだんと成長している実感はあります。それぞれがいろんな仕事をするようになって、知名度が高くなったメンバーもいて、それは素直に嬉しいです。

――その中で、秋山さんはどんな立ち位置だと考えていますか? 映画作品のプロデュースなどもしていて、メンバーを牽引する立場になっている印象です。

秋山:一応、リーダーという肩書にはなっています。ただ、細かいところはメンバーやスタッフと情報を共有して進めているので、率先はしているもののリーダーであることへの義務感みたいなものはさほど感じていなくて、あくまでもチームの一員という意識の方が強いです。映画のプロデューサーをするようになったのも、ジャンルにとらわれずに自分のやりたいこと、できることをどんどん形にしていこうと思ったからです。

――小説を書き始めたのも、やりたいことの一環だったという感じですか?

秋山:そうですね。LDHはアメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地に拠点があるので、海外のアーティストやクリエイター、役者の方たちとお話することも多いのですが、俳優だけを専門にやっている方は少なくて、自らクリエイティブな部分を率先してやってる方ばかりなんです。そういう方には、「僕も日本で俳優をやっています」というのと、「この映画も手がけました」というのでは、興味の持ち方が全然違ってきます。僕自身、自らコンテンツを作りたいとの目標はもともとあったので、自然と俳優業以外にもクリエイティブ方面で何かをしようという意識になりました。つまり、アニメや映像と同じように、コンテンツの一つのあり方として小説というジャンルに興味を持ったという感じです。もちろん、書くことは大変な仕事なので、産みの苦しみも味わったのですが、今回こうして一冊の本にまとまったことで、最初のハードルを越えたという安堵も味わうことができました。

■「短編に特化して、映像作品をたくさん作りたい」

――LDHには、国際短編映画祭の「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」において、音楽と短編映画がコラボレーションする『CINEMA FIGHTERS』という企画もあります。秋山さんの小説は、こうした場での映像化も期待できますね。

秋山:小説を書くときは、全編に関して、映像を思い浮かべながら書いていました。脚本は全体の設計図を思い浮かべながら書いていくけれど、小説には描写が必要で、そこが大きな違いだとも考えています。セリフに関しては、自分や誰かが実際に口にしたらどうなるんだろうと、脚本を書くときと同じような想像の仕方で書きました。もともと、『CINEMA FIGHTERS』も、僕と別所哲也さんが共演した縁がきっかけで生まれた企画でもあるので、いずれはぜひ映像化していきたいです。

――ご自身で演じてみたい作品はありますか? 個人的には「Sleep no more」という作品を秋山さんが演じたら、面白いのではないかと思い浮かべたのですが。

秋山:「Sleep no more」の主人公は、年齢的には自分に合う役柄だと思います。ただ、僕が見た目がシュっとしてるので(笑)、書く時は違う人を想像していました。

――確かに「Sleep no more」の主人公は、もっとうだつのあがらないくたびれた感じかもしれません(笑)。松重豊さんみたいに、スラっとしてるけれどちょっと悲哀のある感じは、秋山さんの新境地にもなるのではないかと思いますが。ちなみにこの作品は何からインスピレーションを得たのでしょうか?

秋山:「Sleep no more」は、NYで鑑賞したエンタテインメントの体験をもとに書きました。マクベスのストーリーをもとにした演劇なのですが、廃墟のホテルの部屋を舞台に繰り広げられるのが大きな特徴で、観客は役者たちを追いかけながら鑑賞するんです。まさに「Sleep no more」というタイトルの作品で、観客は全員マスクを付けていて、芝居の最中は喋ってはいけないというルールがあります。でも、僕は途中でトイレに行きたくなってしまって、喋ることができないから自力で探さなければいけないのだけれど、なかなか見つけられなくて(笑)。そのときの体験をもとに、オチをつけたところ、ああいったファンタジーに仕上がりました。

――「Sleep no more」は特に映像化しやすい作品だと思います。しかも、LDHは幅広い視野でエンタテインメントを捉えていて、音楽制作、映画配給、アパレル事業、飲食業と事業を多角化しているため、アイデアを実現できます。これも劇団EXILEでクリエイティブを行う強みだと感じました。

秋山:その辺りの強みはもちろん意識して、HIROさんと共有しながらやっています。こういうアイデアだったら、この人と一緒にこういう座組みでやれば実現できるとか、色々とアドバイスをいただいたり。新しいテクノロジーとの融合に関しても、今からアイデアを練っています。例えば、これからは5Gの時代が来ますよね。それで、IoT=Internet of Things(様々な物がインターネットに接続されること)が進むと、短い尺の動画がどんどん必要になると思うんです。そこで短編に特化して、アニメや映像などをたくさん作っていきたいというビジョンがあります。監督なのか、プロデューサーなのか、それとも脚本なのか、作品への関わり方は様々ですが、柔軟にやっていきたいです。

――テクノロジーを意識しながらも、小説というフォーマットを選んだのもユニークですね。

秋山:どんなにテクノロジーが発達しても、本のページをめくって文字から想像を立ち上げていくのは「体験」なので、好きな人にはやめられないし、ずっと残り続けるものだと考えているんです。そういう表現媒体で一つ、作品が残せたのは、これからの時代においてむしろ自分の強みになったと思います。小説は書こうと思って書けるものではないので、それが完成したことは本当に嬉しいです。

――今後、掌編はもちろんですが、長編などを書いてみようという気持ちはありますか。

秋山:アイデアが浮かべば、もちろん挑戦してみたいです。ただ今回、小説を書いてみて実感したのは、一つの作品を書き終えるたびに、「次も書くことができるのだろうか?」という疑問が湧くことなんです。書くことができるかどうかは、自分にもわからないのが小説で、そこに不可思議さと魅力があるのかなと。もし、また書くことができたとしたら、それは幸運なことなのだと思います。(取材・文=西森路代)

アプリで読む