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【おとな向け映画ガイド】

村上春樹原作、カンヌ映画祭脚本賞受賞『ドライブ・マイ・カー』、R15+指定の“カイジュウ”映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/8/8(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(8/13〜14)に公開される映画は13本。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』『妖怪大戦争 ガーディアンズ』『ドント・ブリーズ2』の3本。中規模公開、ミニシアター系の作品が10本です。今回はその中から、オトナにもおすすめの『ザ・スーサイド・スクワッド…』と、20日から公開される『ドライブ・マイ・カー』をご紹介します。

車は赤のサーブ
『ドライブ・マイ・カー』

村上春樹の原作小説を、へぇ、こういう風に変えたんだ、と驚くことの連続で、それはちょっとうなってしまう見事さです。文庫本でいうと50ページくらいの短編小説が、3時間近い長編映画になって、しかも中ダレもせずに、観ている側をひっぱり続けます。脚本も担当した濱口竜介監督のカンヌ国際映画祭銀熊賞(脚本賞)受賞は、納得です。

舞台俳優で演出家でもある主人公・家福(西島秀俊)は、脚本家の妻(霧島れいか)に突然先立たれてひとり暮らしです。妻が死ぬ前に残したある秘密で、喪失感と自責の念にかられる日々が続いています。その彼が、広島で行われる国際演劇祭に演出家として招かれるという設定がまず原作とはちがいます。そのことで、物語的にも映像的にも見どころが数倍増えていきます。いかにも映画的なアダプテーション!

舞台に出演する俳優が世界各国から集まりオーディションに挑むシーンや、お芝居が作られていく過程が映画の重要な要素になっていきます。日本から参加する俳優・高槻(岡田将生)も物語のキーとなる役どころ。台湾、フィリピン、インドネシア、ドイツなどから、9つの言語が入り混じって展開します。韓国の女優の言語は手話です。演目は、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』。

家福が演劇祭の主催者につけた注文は、稽古場まで車で1時間くらいの場所に宿をとってほしいということ。自分の車に乗って広島まできた彼は、いつものように、行き帰りの車のなかでセリフの稽古をしたり、音楽をきいてリラックスしたりするつもりでした。ところが、主催者から、滞在中は運転を禁じ、ドライバーをつけることを要請されます。雇われたドライバーは、みさき(三浦透子)という寡黙な女性でした……。

家福が10年以上も大事に乗っているのは赤いサーブ900。原作では黄色でした。無骨さのなかにエレガントな雰囲気が漂う北欧スウェーデンの車です。スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』で、がんこな年寄りの主人公がこだわって乗っていたのも、やはりサーブ900でした。

妻との思い出の残る車。女性ドライバーと過ごす車での時間が、彼にすこしづつ変化をもたらします……。 会場へ往復1時間のドライブ。車窓から見える瀬戸内の島々、ロケーション映像も素敵です。小説とは異なるいくつかの設定が、どれも絶妙にかみあって、しかも村上春樹ワールドをうまく表現しています。映画を観る前でも、後でも、小説もお読みになるのをオススメします。

【ぴあ水先案内から】

平辻哲也さん(映画ジャーナリスト)
「……この映画はあまり情報を入れ込まず、評判だけを手がかりに劇場に行くのがいい。……」

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伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
「……登場人物たちが徐々につながり合い、刺激し合って変化していく光景が美しくさえ感じる。……」

伊藤さとりさんの水先案内をもっと見る

(C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

悪のドリームチーム!
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

えっ?これがおとな向き? と思われるかもしれません。もう全編荒唐無稽、ブラックだし、ばんばん人も殺されます。まじめにバカやってます。はじけるようにポップでわくわくします。やんちゃな心を失っていないおとなの人向けの映画、なのです。R15+、子どもは観られません。

大ヒットした前作『スーサイド・スクワッド』の続編作りを依頼されたのはジェームズ・ガン。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という、銀河のけったいなはみだし者たちが大暴れする、マーベル映画でもカルト的な人気作品を手がけた鬼才の起用です。今回は初のDC映画ですが、さすが、といいますか、期待に応え、いやそれ以上の破天荒ぶりです。

世界を揺るがす悪に対抗するため、全員終身刑の身という「”極”悪党」たちが、米政府により、超法規的処置で集められます。うまくいけば減刑、そむけば頭に埋め込められた爆発物が作動して……お約束は今回も同じ。彼らのミッションは、その名も「カイジュウ計画」、謎の巨大怪獣に立ち向かいます。その怪獣のなんとおぞましいこと。日本の怪獣映画好きのジェームズ・ガンらしい内容です。

集められたのは、おなじみのハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)や、スーパーマンを半殺しにしたブラッドスポート(イドリス・エルバ)ほか。それぞれのキャラクターと得意技は笑っちゃいます。ネズミをあやつるラットキャッチャー2、水玉模様のキャラのポルカドットマン、そして極めつきはサメ男キング・シャーク。声を担当しているのは、あのシルヴェスター・スタローンです。

アメコミ選抜、悪のドリームチームを組織する政府の司令塔はアマンダ(ヴィオラ・デイヴィス)。彼女とそのスタッフの動きは相変わらずサスペンスフルですが、コミカルな味つけがされていて、これもノリがいいんです。

前作よりもパワーアップ。全く新しい”スースク”です。とにかく「面白かったあ!」という言葉が口をついてでて来ること必至。後で頭をかかえちゃうなんてことは決してない、痛快無双の1本です。

(C)2021 WBEI TM & (C)DC

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