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井之脇海、役者として新たなステージへ 『いだてん』『ぎぼむす』『教場』で見せた抜群の存在感

リアルサウンド

20/1/8(水) 6:00

 2020年に注目される若手俳優の中でも井之脇海の存在感は別格と言えるのではないだろうか。1月2日に放送された『義母と娘のブルース 2020謹賀新年スペシャル』(TBS系)では、幼なじみのみゆき(上白石萌歌)への愛があふれる誠実な受験生、黒田大樹を演じた。

参考:木村拓哉の眼差しに走る緊張感 『教場』が問いただす私たちの選択とは

 連続ドラマ放送時、幼少期は「デブ」と言われていた大樹が、スマートになり素敵な男性となって再登場したシーンには心が踊った。知性を持ち、優しさもありながらときにふざけることもできる大樹の人物像は、井之脇の持ち味が存分に発揮された役柄だったように思う。原作マンガではみゆきと結婚する未来が描かれているだけに、夫となった大樹を井之脇がどのように演じるかも気になるところ。

 そして、木村拓哉が主演を務めたフジテレビ開局60周年特別企画『教場』が1月4日、5日と2夜連続で放送され、井之脇は南原哲久役で出演。“教場”と呼ばれる警察学校の教室という閉鎖的な空間を舞台に繰り広げられる、事件と過酷な訓練や厳格な規律の中で起こる生徒たちの心情の変化を描いた作品で強い印象を残した。

 『義母と娘のブルース』の大樹や、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の小野万福、朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)の高島雄大などが、井之脇の人柄がにじみ出る“優しい”役柄だったのに対し、『教場』は彼の中に潜む“狂気”をあぶり出したような役柄であった。木村拓哉と真っ向から対峙し、同世代の俳優たちと切磋琢磨した本作を経て、俳優としてまた新たなステージに進んだのではないだろうか。

 2008年に公開された黒沢清監督の映画『トウキョウソナタ』で注目されたのが12歳のとき。それぞれに秘密を抱えた家族の崩壊と再生を描いた作品で、井之脇は家族に内緒でピアノを習う小学校6年生の健二を演じ、第82回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞受賞及び第23回高崎映画祭新人俳優賞を受賞した。

 少年の頃の面影を残しつつ、俳優として経験を積むことで演技の幅を広げてきた井之脇。2019年は日曜劇場『集団左遷!!』(TBS系)の平正樹役、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』では聖火リレーの最終走者として、原爆投下の日に広島で生まれた青年・坂井義則役など、アクの強い登場人物の中でも独特の存在感を示していた。NHK大河ドラマに関しては、『平清盛』(2012年)の平維盛、『おんな城主 直虎』(2017年)小野万福、そして『いだてん』と3本に出演している。着実に成長を続けるその姿は頼もしくもある。

 『いだてん』で井之脇が演じた坂井は、原子爆弾が投下された 1945年(昭和20年)の8月6日に広島で生まれた人物。平和の祭典であるオリンピックの象徴的な存在として、田畑政治(阿部サダヲ)に見出されたのだった。しかし、陸上選手でもあった坂井にとって、坂井としてではなく、「アトミック・ボーイ」「8月6日!」と呼ばれることは決してうれしいものではない。象徴としての自分を受け入れ、坂井義則として聖火ランナーになっていく姿には、『いだてん』が描き続けた“スポーツの喜びと誇り”が詰まっていた。出演回は最後の2回だけでありながらも、井之脇が『いだてん』で残した爪痕は大きい。

 2020年は2月1日から放送開始のよるドラ『伝説のお母さん』(NHK総合)への出演も決定している。井之脇は、前田敦子演じる伝説の魔法使い・メイを支える若き士官・カトウを演じる。冒険と育児の両立に悩み、奮闘するメイのため奔走するも国王(大倉孝二)の無茶ぶりに振り回されるという実直なカトウをどう演じるのか。

 また、2月23日から放送のドラマW『父と息子の地下アイドル』(WOWOWプライム)では主人公の教師・千堂真澄(松重豊)の息子、勝喜役として出演。12月公開予定の映画『サイレント・トーキョー』もあり、また引っ張りだこの一年になりそうだ。(池沢奈々見)

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