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高橋一生、“風変わりな人物”を器用に演じ分ける 映画&ドラマで輝く性格俳優としての素質

リアルサウンド

19/3/15(金) 6:00

 公開中の『九月の恋と出会うまで』で、またも“風変わりな人物”を演じている高橋一生。このところ、この手の役どころへの起用が続いているように思えるが、いまや彼は自身の芸風を確立し、唯一無二のポジションを得ているのではないだろうか。

 高橋といえば、昨秋放送された『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)での好演も記憶に新しい。彼は本作で、プライムタイムでの民放連続ドラマに初主演。人とのコミュニケーションを取るのが少し苦手だけれど、興味のあることには無我夢中で取り組む、そんな“風変わりな人物”を魅力的に演じていた。

【写真】昨今の出演作での高橋一生

 高橋のここ最近の活躍を振り返ると、彼が演じてきた“風変わりな人物”は幾人も浮かび上がってくる。今でこそ出演した映画が立て続けに公開されている高橋だが、参加した『シン・ゴジラ』(2016)が公開されるより以前は、出演作の年間あたりの公開本数は多くはなかった。あの作品で演じた研究員役のアクの強い振る舞いは、私たちに鮮烈な印象を与えるのと同時に、本作に始まったことではないが、個性的な人物を演じられる性格俳優としてのポテンシャルを世間に知らしめたのだ。しかし高橋が演じてきたのは、あの役のような、あからさまに“風変わりな人物”だけではない。

 直近だと、まず『億男』(2018)での彼の姿が思い浮かぶ。本作は主人公(佐藤健)のお金を巡る冒険と成長譚を描いているが、そのきっかけをつくるのが、高橋の演じた億万長者であり主人公の親友の男だ。これを高橋はリアルな吃音で演じ、その懸命な発声によって彼の言葉は強い訴えに変わり、本作の数ある主題のうち、友情の存在を浮き彫りにした。

 また、『空飛ぶタイヤ』(2018)で演じたキャラクターも“風変わりな人物”であったように思う。高橋が演じたのは、物語の展開を左右する大きな存在でありながら、出番は少なく、セリフも少なかった。つまり彼は、自身が担う役どころを限られた情報で観客に示さなければならなかったのだが、ほんの些細な目配せで、ただならぬ人物像を描いてみせた。

 さらに『嘘を愛する女』では、“過去”と“嘘”という二つの闇を抱えた男を好演。表向きは好男子でありながらも、どこか空っぽな印象が拭えぬ存在だ。それは、ほんのちょっとした言葉の調子に宿り、メリハリをつけて伝えるのでなく、そこはかとなく感じさせることで役を成立させた。ミステリアスという意味で、これまた“風変わりな人物”だと捉えられるだろう。

 さて、今作『九月の恋と出会うまで』での高橋は、小説家志望の青年に扮し、ヒロイン(川口春奈)とのピュアなラブストーリーを展開。だが、“ラブ”がはじまるまでの彼は、ヒロインの視点を通して、得体の知れぬ、挙動不審で“風変わりな人物”だと映る。ここまで、高橋が演じてきた一連のキャラクターたちを“風変わりな人物”と一括りにしてきたが、もちろん一つとして同じものはない。かといって、度を越えたコメディリリーフや、性格破綻者を演じているというわけでもなく、どれも大きく違うものでもない。

 本作でもまた、視線や仕草といった細部でキャラクター性を示さなければならないのだが、これらを立て続けに演じていれば、パターン化に陥りそうにも思える。だが高橋は、そのさじ加減が絶妙なのだ。ちょっとした差異で、それぞれ異なる人物像を立ち上げている。その加減次第では、作品の感触までにも影響を与えてしまうのだろうが、個性を前に押し出さず、あくまで作品世界に溶け込むという前提のもと実現させているのである。だからこそ、彼の演じる“風変わりな人物”は浮世離れした存在でなく、作品のほどよいアクセントとなっているのだ。いまや幅広い年齢層から支持を得る高橋だが、そんな性格俳優としての魅力こそが、彼の真価ではないだろうか。

(折田侑駿)

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