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いま、最高の一本に出会える

第3回:なぜ“アナ雪”の主人公は姉妹なのか? キャラクター描写の魅力

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19/11/29(金) 12:00

映画『アナと雪の女王』は、ディズニーの長い歴史の中で初めて、ふたりのヒロイン“エルサとアナ”が描かれた。そして続編『アナと雪の女王2』でもふたりが主人公を務める。しかし彼女たちの役割や関係は、変化の時を迎えようとしているようだ。

エルサとアナは姉妹じゃなかった?

そもそも、前作の製作を開始した頃、エルサとアナは姉妹ではなかった。アンデルセンの童話『雪の女王』を基に新たなストーリーを描こうとしていたフィルムメイカーたちは、恐ろしい雪の女王と純真な心をもった主人公の物語を模索したが、納得のいくストーリーを見つけられないでいた。脚本も手がけたジェニファー・リー監督は「エルサは最初は悪役でした。基にしたアンデルセンの童話でもそうなっていますから」と振り返る。

「でも、私たちが最も描きたいものは“愛”と“恐れる心”の対立で、魔女的なものを登場させると、どうしても“善と悪の対立”になってしまうんです。そこから離れるために私たちは様々な要素を掘り下げました。自身の力を恐れるエルサのドラマ、真実の愛とは何か捜し求めるアナのドラマ……そんな中でふと“本当に魔女の存在って必要?”という話になったんです」

同じころ、あるミーティングの場でスタッフが“雪の女王と主人公を姉妹にしたら?”とアイデアを投げかけた。もしふたりが姉妹なら、お互いが対立する相手ではなく、恐ろしいが全力で“守りたい”相手になる。この変更によって『アナと雪の女王』の創作は大きく前進。完成した姉妹のドラマに多くの観客が共感した。

彼らは続編『アナと雪の女王2』を創作するにあたって、エルサとアナの関係や内面をさらに深く掘り下げている。本連載の第2回でも触れたが、彼らはリサーチと創作を通じてエルサには悲劇的なドラマを背負う“神話的”な要素が、アナには特別な力は持っていないが楽観的に信じる道を進む“おとぎ話的”な要素が備わっていることを発見した。

エルサは人々の運命や世界の秘密を解き明かすために危険な領域に足を踏み入れる。そんな彼女を妹のアナが“信じる力”だけを頼りに守ろうとする。本作では、前作以上にエルサとアナは欠かすことのできない存在として描かれ、それぞれの繊細で深い感情が描かれる。

表情、動き、そして呼吸……アニメーションの進化と深化

だからこそ、アニメーションも前作以上の進化と深化が求められた。「今回のアニメーションは1作目の延長にありながら、もっと内面的に深く描かれているから、それぞれのキャラクターをさらに掘り下げて考えなければならなかった」とヘッド・オブ・アニメーションを務めたベッキー・ブレシーは語る。「前作に続いてこの映画でも“愛”が描かれる。本作はそこに“変化”というテーマが加わるの。彼女たちは成長し、過去を見つめる場面もあるのよ」

そこでアニメーション部門のメンバーは姉妹の表情や動きの変化を前作以上に“こまやか”に描くため、研究と試行錯誤を繰り返した。エルサとアナは見た目も体型も違うが、それ以上に“内面/感情のあり方”が違う。だから、ある出来事が起こった際にもそれぞれの“反応”は違うはずだ。「前作と違うのは、今回の作品ではエルサとアナが同じ画面の中にいるショットがたくさんあること。これは大きなチャレンジでした」とアニメーション・スーパーバイザーのヒュン・ミン・リーは説明する。

「1作目のふたりは、ほとんど離れ離れでしたが、今回は彼女たちのやり取りがたくさんあるんです。それはふたりの“つながり”や“個性”を描く素晴らしいチャンスでもありました。エルサの繊細さや優雅さ、アナの手や身体全体を使った動き……ふたりは姉妹としてつながっていますが、彼女たちの“違い”をそういった動きや基本的な表現で見せることができるわけです。ふたりは性格的に類似している点もあれば、微妙な違いもある。だから私たちはすべてのシーンで彼女たちの似た部分や違うところ、つまり彼女たちのつながりや愛情をアニメーションに入れ込もうとしました」

完成した映画を繰り返して観ると気づくが、本作のエルサとアナは意図的に同じリアクションをしたり、あえて異なる反応や表情をする場面が巧みに描かれている。姉妹なので似ている部分もある。しかしふたりは正反対といってもいいほどの個性を持っている。だからこそアーティストたちはそんな微妙な違いやつながりを徹底的に描き込んだ。感情が変化する瞬間には視線や表情が動き、身体のバランスも微妙に変化する。それは本当に緻密な作業の積み重ねだ。

さらに彼らは、キャラクターの“呼吸”をアニメーションに盛り込んだ。前作でもエルサが『レット・イット・ゴー~ありのままで~』を歌うシーンでは、楽曲に合わせてエルサの横隔膜がどのような状態になっているのか検証し、エルサの動きに加えた後で、彼女に氷のドレスが着せられたが、本作ではさらに繊細な表現を目指してスタジオにヴォーカルのコーチやミュージカル・ディレクターが招かれた。アニメーション・スーパーバイザーのマイケル・ウッドサイドは「キャラクターの“息づかい”を見たかった」という。「アニメーションはキャラクターが生きていると思わせることですよね? 呼吸するのは生きているということ。だから、呼吸について考えるのは当然のことだと思ったわけです」

さらに彼らは呼吸を研究してアニメーションに反映させることで、エルサとアナの“性格”まで表現しようとしている。同じくアニメーション・スーパーバイザーを担当したジャスティン・スクラーは語る。「息を吸うところを上手く描くことは重要でした。なぜなら大きく息を吸っていることを表現するのは、そのキャラクターが努力していて、少しだけ傷つきやすいと感じるのを助けてくれるからです。それは大きなことではないかもしれませんが、呼吸を正しく描けたら、観客のみなさんはキャラクターのことをもっと応援してくれるかもしれません」

本作ではキャラクターが1曲を歌う間にも、何かひとつの動きをする間にも、身体の状態、呼吸の大きさ・スピードが絶えず変化し続けている。「みなさんが映画館にいる間、僕らの仕事に気づかなければいいなと願っています。でも、もし僕たちが正しく仕事できていたとしたら、みなさんはこれまで以上にキャラクターに感情移入できるでしょう。私たちは観客がキャラクターともっと気持ちが通じてほしいと願っているんです」(ウッドサイド)

すべてはエルサとアナの関係を描くため

本作にはエルサとアナの他にも、クリストフや相棒のトナカイ・スヴェン、雪だるまのオラフなどのキャラクターが登場し、姉妹と同じように入念にアニメーションが描かれ、それぞれにドラマがあり、ミュージカルシーンも用意されている。しかし、本作はあくまでもエルサとアナの物語。そこは『アナと雪の女王2』になってもブレることはない。

「いつだって最も重要なのはキャラクターの関係です」とディレクター・オブ・ストーリーのマーク・スミスは力を込める。「アナなしではエルサは存在しないし、エルサなしではアナは存在しない。この映画はエルサとアナの物語を語るものです。クリストフが登場するのもエルサとアナの関係を描くためですし、オラフも姉妹と関係を築いていきます。つまり、エルサとアナの関係を描くことがすべての中心なのです」

しかし、『アナと雪の女王2』で姉妹の関係は変化の時を迎える。「本作でエルサとアナの役割は逆転するんです」とヒュン・ミン・リーは予告する。「前作のアナは姉を救うためにどこへでもつき進んでいく恐れ知らずな女性でした。しかし、続編ではエルサが未知の世界につき進んでいき、アナが姉のことを心配して彼女の手を握っている状態なんです。アナは現在の幸せを失いたくない。でも“変化の風”がやってくるのを感じて、愛する人たちを何としても守ろうとするわけです」

前作から3年の時が流れ、ふたりは成長し、変化の時が訪れる。それは新たな冒険のはじまりでもあるが、スミスは「彼女ぐらいの年齢の時には誰しもが冒険に出るものだ」という。「エルサとアナはそういう時期にいるんだよ。彼女ぐらいの年齢になると、時には家族を置いて世界を見るために冒険に出る。大きな犠牲を払っても、人は自分のために遠くに出かけていかなければならない場合がある。そんな時にどうやって愛する人と大切な関係を保つのか? そうやって僕らはキャラクターの内面からストーリーを考えていったんだ」

『アナと雪の女王2』でエルサとアナの関係はどのように変化するのだろうか? そして姉妹をとりまく仲間たちとの関係は? 姉妹の関係の変化と成長は、多くの観客の共感を呼び、新たな感情を呼び起こすはずだ。

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