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クリトリック・リスの“口パクライブ”、ceroの“ライブ有料配信”……現状を乗り越える音楽シーンの新たな取り組み

リアルサウンド

20/3/17(火) 6:00

「この異常な事態を乗り切るためにみんなでアイデアを出し合おう。一刻でも早く、元気なライブハウスを取り戻したい。今が大事だ(クリトリック・リス)」

(関連:新型コロナ対策で相次ぐイベント中止 打首獄門同好会、syrup16g、NUMBER GIRL…自宅で楽しめる無観客ライブ

 コロナウイルス感染拡大防止のための自粛要請により、イベントの中止や延期が相次ぐエンタメ業界。いまだ収束の見通しが立たない中、各所でさまざまな取り組みが広がっている。

 冒頭の言葉は、3月11日の『クリトリック・リス クチパク・ライブ』開催に先立ち発表された、主催者のクリトリック・リスの表明を抜粋したもの。『クチパク・ライブ』では飛沫感染を防ぐため、事前に録音した音声に合わせてライブを行った。時にフロアになだれこみ、時に客とふれあいながら歌うスタイルで知られるクリトリック・リスとしては、異色の内容だ。

 会場となった堺FANDANGOは難波ベアーズと並び、大阪のインディーシーンを育ててきたライブハウス。堺FANDANGOの通常キャパは200名ほどだが、今回は50名に限定。マスク着用、入り口での消毒を義務づけての開催となった(マスクを持っていない参加者には販売も行われた)。

 幕間のMCまで作り込んだ録音にあわせ、決してステージから降りずのライブとなったが、苦境をなんとかして楽しもうとするクリトリック・リスのユーモアと誠意に、多くの人が笑い、胸を熱くした。

 終演後、クリトリック・リスは「口パクライブ。会社からライブハウスに行く事を禁止されてる人、介護施設で働いてる人などは、少しでも力になりたいからって、入場料を払うだけ払って、中に入らず帰って行った。最後まで残ってたお客は、ここで飲めるのが嬉しいって、他の客にお酒を奢りまくってた。みんなライブハウスが好きなんだ」とツイートし、ライブハウスとそれを取り巻く人々への愛情を表現した。

 また、同じく大阪では、3月5日に難波ベアーズで山本精一による『コロナ調伏撲滅祈念、山本精一絶叫無観客ライブ』が開催。こちらは無観客・無配信の完全クローズドライブ。大阪のアンダーグラウンドシーンを代表する難波ベアーズらしい試みだ。

 さらに、3月27日は心斎橋のCONPASSでVMOによる防護服&マスク着用必須の着席ライブが開催予定。普段は過剰なモッシュが頻発するVMOの特性を逆手に取った形だ。防護服はVMOが配布。発表時のリリースには「是非この機会で如何にVMOが鑑賞にも耐え得るグループかを体験していただけたらと思います」というユーモラスな言葉が添えられている。

 3月に入り、無料配信でのライブ映像提供が相次ぐ中、カクバリズムは全国ツアー中のceroのライブの有料配信を打ち出した。

 これは電子チケット販売プラットフォーム「ZAIKO」と提携して行なわれた新しいサービス。電子チケット料金は1,000円。購入時に500円単位で投げ銭を追加できる。購入者は1週間アーカイブを楽しむことが可能だ。

 配信開始は3月13日21時。仕事帰りの社会人に配慮したのか、若干遅めの時間からのスタート。照明やカメラ、そして肝心の音質も行き届いたスタジオライブを約1時間行い、金曜の夜を盛り上げた。終了後に、アーカイブは配信時より高画質になる旨、カクバリズムのTwitterからアナウンスもあった。ID登録からチケット購入までの手続きもスムーズで、今後も同サービスを利用するアーティストは増えていきそうだ。

 カクバリズムの代表・角張渉は開催に当たり「(前略)有料でのライブ配信を開催するに至ったのは、いつまでこの状況が続くかも見えない中で、この有料配信が少しでも形になれば、全国のミュージシャン、ライブハウス、さらには演劇関係者など皆さんの活動の基礎となる部分をフォローできる、ひとつ明るい材料になるのではないかなと考えたからです。(中略)他のレーベル、マネージメント、バンド、アーティストの方々はこのやり方に興味がありましたらご相談ください。何かお力になれたらと思います」と前向きな言葉を発している。

 また、ロフトグループの系列店で、音楽関連イベントの開催も多いROCK CAFE LOFTでは、運営スタッフからの提案により日頃ロフトグループと縁の深い“アイドルオタク”が、呑み会や上映会に会場を使うという取り組みも。

 『なげきを許すな』と題した呑み会を行い、26名を集客したなげき氏は、当日の様子を「毎週のようにライブハウスに集まっていたオタクたちだからこそ、今のライブハウスがおかれている危機的な状況も言わずとも理解しており、お酒を頼んだり食事を頼んだり、積極的に店にお金を落とそうという暗黙の動きが見て取れました」と語った。

 自粛要請により、エンターテインメントを取り巻く環境が大幅な縮小を求められる中で、アーティスト、運営、ファンと立場は違うものの、多くの人々が再建のために奔走している。収束の見通しが立たない現状だが、それぞれの立場で知恵を絞ることが、音楽と音楽に出会う場所の維持につながるのではないだろうか。(池田智)

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