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“体験をパッケージ”する発想をーーダイノジ大谷が提言する、これからの音楽サバイバル術

リアルサウンド

14/1/26(日) 15:00

20140126-dainozi-02.jpgライブやDJイベント主催するなど、大谷氏の“現場”への貢献は大きい。

 昨年末に『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCKLIFE』を上梓したダイノジの大谷ノブ彦氏が、自身の音楽観・リスナー観について語るインタビュー後編。前編【ダイノジ大谷がロックを語り続ける理由「こっちだっていい曲だ、バカヤローって足掻きたい」】では、これまでのリスナー遍歴や、音楽評論・リコメンドのあり方について語った。後編では、ビジネス面の苦境が指摘されてきた2000年以降の音楽シーンを分析しつつ、さまざまな課題への提言を述べる。

――2000年代に入ってから、CDが売れないとさかんに言われるようになります。そういった状況をどのように見ていましたか?

大谷ノブ彦(以下、大谷):ラジオをやってきて、先週までいたレコード会社の人が急にいなくなったりするのを見てきて、状況の厳しさは感じてきました。僕ら芸人も、お笑いブームで現場がすごく増えたと思ったら、次の年から急に使われなくなったりといった状況を体験しているので、その苦しさはわかります。だから、1組でも多くのバンドが潤ったり、継続していくことができるように力を貸したいし、少しでも自分ができることをしたい。それをDJでやるのかはわからないけど、そういう気持ちはすごくある。

――大谷さんの音楽に関する仕事は、そうした状況の中で存在感を増していきました。

大谷:自分の場合は、2005年の時にぱっと仕事がなくなって子供もできた時に、DJの仕事を紹介されて。これは新しいエンターテイメントとして使えるんじゃないかって思った時に、道が開けた気がします。それまでは音楽を知らないフリする方が笑いになると思っていたのですが、「これは自分にしかできない武器になるんじゃないか」って気づいたんですよね。ダウンタウンさんの『HEY!HEY!HEY!』は、ミュージシャンをお笑いの現場に連れてきてしまうことが画期的でした。それとは逆に、ミュージシャン側の価値観に寄り沿って語るのは、実は僕たちにしかできないのではないかと。それで一生懸命勉強しました。

――ご自身でもフェスを主催するなどライブと深く関わってこられましたが、ライブの現場の動きをどのように見ていますか。

大谷:CDはなかなか売れないと言われていますが、やっぱり現場で人の気持ちを一瞬にして掴めるとか、ファンを獲得するために何をすべきか、明確なビジョンを持っているバンドは、ちゃんと独立できていると思います。ちょうど2000年前後くらいに曽我部恵一さんが独立して、ある時、僕らのイベントに出てくれたんです。曽我部さんは、ライブが終わるとすぐに物販のところ行くんですよ。そしてグッズを直売して、サインを書いている。フラワーカンパニーズも、スクービードゥーも同じことをしていました。彼らは、明らかにCDが売れなくなるって気づいていて、物販も含めてどう売っていくべきか考えていたんだと思います。ファンひとりひとりに手渡ししていくっていうことは、実はすごく大事だと思う。手売りすればファンはSNSなどでそのことを拡散してくれるし、その人にとって忘れられない思い出になるし、きっと次も買ってくれると思うんです。

――状況に対応して、ミュージシャンの間でも経済的に自立する動きが出てきたということですね。先ほどフジロックの話が出ましたが、フェスの盛り上がりが音楽シーンに与えた影響についてはどう見ていますか。

大谷:ミュージシャンにとってフェスが一つのツールになっている部分があって、フェスで盛り上がる曲を作らなきゃいけないっていう問題もあると思います。ただ、ミュージシャンのあり方に変化が生まれたのは、面白いことだと思います。たとえば『京都大作戦』では、10-FEETが進行もやっているんですよ。自分たちでミュージシャンも呼びに行ったりしていて、フェスの全体を見ている。あのフェスって最初の年はゴミがすごく多かったのに、ミュージシャンたちのMCがすごく長くなって、みんなで注意したら本当になくなったんです。今までは言いたいことは音楽で言えばよかったのに、それじゃ伝わらないってことに誰かが気づいたのかもしれません。それは決して悪いことじゃなくて、言葉も込みでミュージシャンの魅力になってきたということかと。3.11以降は、さらにその傾向は強くなったと思います。ブラフマンがステージでしゃべるようになったのもまさにそうで、言葉で伝えることによって、その人たちの生き方とか歌詞が、よりリスナーの人生観とかにクロスオーバーしていくっていう現象が起こってきている。これはすごくエモーショナルなことだと思います。

 マキシマム ザ ホルモンがあそこまで激情的な歌になって、メロディもわかりやすくなってきているのも、思いをちゃんと伝えていこうっていう意思の表れなのかなって思います。『予襲復讐』に156ページのブックレットを付けたのは、そういう意味合いがあったと思うし、CDだけではない、新しいパッケージを作るという意図もあったはずです。

——音楽だけでなく、自分たちの表現を丸ごとパッケージして伝えようとしている、と。

大谷:お笑いの現場でも面白い現象があって、多くの劇場はお客さんが少なくなってきているのに、歌舞伎座とか明治座にはいつも人がいっぱい入っていて、その多くはおばちゃんなんですね。なぜだろうと思ってよく観察してみたら、歌舞伎座のまわりには喫茶店がすごく多いことに気づいたんです。おばちゃんたちは10時に喫茶店で待ち合わせて、おしゃべりを楽しんで、12時になったら劇場に入って、公演の休憩でちょっと贅沢な1000円のお弁当食べて、見終わったら帰りに銀座で買い物して帰る。つまり、おばちゃんたちはそのエリアでパッケージされた一日を消費しているんです。

――舞台だけでなく、それを観るプロセス全部が楽しみなんですね。これはライブハウスでも応用できそうな発想です。

大谷:ライブハウスでも絶対展開できると思う。お酒のサービスの仕方にしても、もっと気軽に飲めるようにするとか、気軽に酔えるようにするとか、いろいろ知恵を出し合えると思うんですよ。ライブハウスはもっと体験ってことに対してしっかり向き合うべきだと思う。昔は大人の社交場で、みんなが憧れて行ってたけれど、それだけじゃダメなんですよ。記念写真をライブハウス側が撮って、それをライブハウスの壁に貼っていくとか、そういうアイデアはいくらでも出せると思う。グッズだって、面白いこといっぱいできますよ。ホルモンのフード付きタオルとか、テレフォンズのサングラスとか、すごく売れている。

——なるほど。ライブハウスに行くこと自体がエンターテイメントの一つである、という考え方ですね。

大谷:だからパッケージを作るってことに対して自覚的であり、独立するってことに対して自覚的なミュージシャンっていうのは潤っているし、結果として自然と良い作品ができているっていうイメージがすごくありますね。もちろん純度の高い音楽っていうのは大事なんだけど、そこがなければバンドを続けることもままならないのかなって思います。

――大谷さん自身は、今後も音楽にまつわる仕事を増やしていく予定ですか。

大谷:良い音楽をシェアしていきたいという気持ちはすごくあるので、どんどんやりたいですね。以前、『申し訳ないと』のミッツィー申し訳さんとDJのイベントで会ったときに、初めてDJプレイを褒められたんですよ。その時、僕はてらいもなくいろんなタイプのロックをかけていたら、ミッツィーさんがぼそっと「地球上に悪い音楽ないからね、良い曲も悪い曲もDJ次第だから」って言ってくれたんです。本来、音楽はすべて良いものだけど、良いように聴かせることも、悪いように聴かせることもできる。ただ、楽しませ方はいろいろあるので、なるだけ多くの音楽を聴いてもらえるように、芸人特有のギミックを使いながらやっていきたいかな。今年は流行りの音楽とか、リスナーが多い音楽に乗っかるだけじゃなくて、その先にある楽しみを絶対伝えたいですね。
(取材・文=神谷弘一/編集協力=梶原綾乃)

■書籍情報
『ダイノジ大谷ノブ彦の 俺のROCK LIFE!』
価格:1,400円(税込み定価1,470円)
発売日:12月20日

 人気ラジオ番組『オールナイトニッポン』(水曜・第一部)や『Good Jobニッポン』(月〜木)のパーソナリティを務める大谷ノブ彦(漫才コンビ、ダイノジの一人)の、クロスビート誌(現在は休刊)の連載「俺のROCK LIFE!」をまとめた一冊。単行本化に当たり、大谷がロックと向き合う姿勢に迫ったインタビューや、本人による「人生の10枚」の選盤/解説なども収録。

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