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⻲梨和也が表現する悲哀に圧倒される 『レッドアイズ』二転三転する極上のサスペンス

リアルサウンド

21/1/31(日) 12:45

 もう誰もかも、何もかもが怪しく思えてくる。ひとつのヒントも取りこぼすまいと夢中で見入る。迫るタイムリミットと、二転三転する事件が息つく間もなく展開する『レッドアイズ 監視捜査班』。第2話も、あっという間の1時間だった。

 本作において大きな魅力となっている、天才たちによるひらめきがやはり爽快だ。小牧(松村北斗)がいとも簡単に暗号文を解読すれば、山崎(木村祐一)はすぐさま、犯罪史上に名を残す凶悪犯・ゾディアックを導き出す。彼らが持つ知識・頭脳と、KSBC(神奈川県警捜査分析センター)の技術を駆使した地道な分析・捜査。この両輪があってこそ、事件は最短ルートで解決へと向かう。第2話ではそれを象徴するシーンがあった。

 「無駄って、やる気と体力を奪うんで」。効率主義の小牧からすれば「無駄が多い」、KSBCによるしらみ潰しの捜査。それでも「これが私たちの仕事なの」と、長篠(趣里)は毅然とした態度で言い切った。その後、長篠の執念と情報分析官らの連携プレーが功を奏し、瞬く間に犯人へと繋がってゆくシーンは、天才たちのひらめき同様、爽快だった。「しらみ潰しが近道ってこともある」。山崎の言葉と、士気が高まるKSBC。ばつが悪そうにしていた小牧だが、湊川(シシド・カフカ)誘拐事件の発生を機に、明らかにその表情、姿勢が変わった。「これが僕たちの仕事なんでしょ」「指示をください」

 “僕”ではなく“僕たち”と言ったことに、小牧の意識の変化が見える。小牧の頭脳とひらめきが長篠に、長篠のスキルと誇りが小牧にと、互いに良き影響を与える名コンビになりそうだ。

 「人を殺した」という、KSBCへの電話から始まった今回の事件。俺を捕まえてみろという挑発的な犯人だが、二度目の電話で山崎が「ほんまに殺しが楽しいんか?」と問うと、漆川(般若)はわずかに狼狽した。犯罪心理学者・山崎が“本案件の犯人”に抱く違和感。殺しを楽しみたいなら人知れず行うはず、存在を知らしめたいにしては暗号文が雑すぎる、殺しにこだわりがない……なにか“別の目的”があるのでは、と。

 その“別の目的”に、伏見(亀梨和也)、あるいはKSBCが関わっているのだろうか。漆川と“証言者”蠣崎(忍成修吾)、ひいては第1話に登場した、右手に傷を持つ“黒幕”との関係は、現時点では不明だ。しかし、伏見の傷をなぞり、さらに深く傷つけるような“蠣崎の犯行”は、明らかに伏見にフォーカスしていると言えよう。

 蠣崎のベッドサイド。指輪に気付いた伏見が、はっと眼を見開くシーンが印象的だった。「どうして彼女のこと、守ってあげられなかったんだろう」涙ながらのその言葉、渡せなかった指輪に、自身の過去が重なる伏見。疼くような自身の痛みと闘いながら、被害者の悲しみに配慮した伏見の気持ちを、蠣崎は利用し、踏みにじった。湊川が蠣崎に誘拐されたのだ。

 振り返れば確かに、犯行の“まさにその瞬間”を見た者はいない。「人は信じたいものを信じる」。蠣崎はそれを“弱さ”だと言った。けれど、ひとつの命が奪われ、目の前に深く傷ついた被害者がいる。犯人へと繋がる道を見つけたなら、助けられる命があるなら、きっと誰もが全力で走るだろう。警察官であるなしの前に、人間とはそういうものであるはずだ。

 しかし悲しいかな、そうした人間的な“心”を、弄ぶことができる人間もいるのだと知る。いつから蠣崎に欺かれていたのかすら、今は分からない。史実上、ゾディアックによる2件目の犯行も男性のみ生存している。蠣崎はそれさえも知った上で、この非情なシナリオを描いたのだろうか。警察に対し挑発的な姿勢を崩さぬ蠣崎だが、ふと事有りげな、虚な表情を浮かべる瞬間がある。まさに身を切った“本案件”の目的は、いよいよどこにあるのだろう。

 水曜日は息子と過ごす日――敢太(森島律斗)との電話で「なるべく早く帰る」と約束した湊川の、綻んだ顔が思い出される。強き彼女が見せる、優しい母の顔。「息子は大事にせえよ」「取り返しのつかんもんもある」山崎のこの台詞が、やけに心にひっかかる。“黒幕”による相関図では、山崎にも息子がいるようだが……彼自身、過去に“取り返しのつかんもん”を置いてきたのだろうか。仕事熱心のあまり、電話に出ない島原に腹を立てる妹・はるか(高橋ひかる)の描写にも、胸騒ぎがする。“青いコートの男”が、すぐそこに迫っている。

 湊川と、彼女を待つ息子を思い、現場を離脱させた伏見。“取り返しのつかないもの”の重みを誰よりも知っている彼の優しさが、予想だにしない事態に繋がってしまった。叫び、感情のままに壁を殴りつける伏見。無音の演出が、拳以上に痛む心をありありと伝える。

 「原点に帰れ」。蠣崎の言葉が意味するものとはなんなのだろうか? 「殺してやる」―――怒りに満ちた伏見の“眼”が、赤く燃え滾る。

※高橋ひかるの「高」はハシゴダカが正式表記

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■放送情報
『レッドアイズ 監視捜査班』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:⻲梨和也、松下奈緒、趣里、シシド・カフカ、松村北斗(SixTONES)、高橋ひかる、木村祐一
脚本:酒井雅秋、福田哲平、まなべゆきこ
音楽:カワイヒデヒロ
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:尾上貴洋、茂山佳則(AX-ON)
演出:水野格、長沼誠ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/redeyes/
公式Twitter:@redeyes_ntv
公式Instagram:@redeyes_ntv

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