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星野源と綾野剛の最強バディふたたび! 個人の倫理に訴えた『MIU404』のすごみ

リアルサウンド

21/1/2(土) 18:00

 まるごとメロンパン号が帰ってきた! 1月3日に全話一挙放送される『MIU404』(TBS系)でふたたび画面にその雄姿を見せる。

 「ノンストップ機捜エンターテインメント」の『MIU404』は、それまでになかった多くのものを刑事ドラマの世界に持ち込んだ。まるごとメロンパン号もそのひとつだ。アルファベットと数字からなる「ミューヨンマルヨン」は、機動捜査隊を意味するMobile Investigative Unitにコールサインと乗車番号を兼ねた数字が付いており、同車は404号車にあたる。乗り込むのは異色のバディだ。

 『MIU404』の魅力は多岐にわたるが、バディドラマとしての面白さはその筆頭に挙げられるだろう。新設の4機捜(第4機動捜査隊)に配属された伊吹藍(綾野剛)と志摩一未(星野源)は事件解決に当たる中で互いを相棒として認め合っていく。と書くと、よくある刑事ドラマのようだが、とにかく2人のキャラが立っているのが特徴。奥多摩からやってきた「野生の馬鹿」で、考えるより先に足が出るタイプの伊吹と、捜査一課出身で頭は切れるが屈託を抱えまくっている志摩。どう見ても相性最悪の2人が、ここぞという場面で抜群のコンビネーションを発揮する姿に毎回目が釘付けになった。

 一定の距離感で並走するバディのなりたちは機捜の任務形態に由来する。初動捜査を担当する機捜は覆面パトカーでの巡回(密行)が任務。必然的に車の中で過ごす時間が長くなり、濃い絆が育まれる。4機捜のもう1組のバディである陣馬(橋本じゅん)と九重(岡田健史)もそうだが、恋愛要素が薄く事件解決がメインの『MIU404』に漂うほのかな胸キュンみは、機捜車内での疑似デートから来るものとにらんでいる。

 毎回変わる機捜うどんなどの小ネタや、劇中に散りばめられた「キャッキャウフフ」、「キュルっとする」などのセリフでポップな雰囲気を醸し出してはいるが、『MIU404』が向き合うテーマは重い。あおり運転や家族関係など身近なトピックにはじまり、反社会的勢力に搾取される女性や若者、ひいては日本という国や警察権力が抱える病巣に切り込んでいく。大きなテーマを扱ってはいるが、一貫しているのは今を生きる一人ひとりの視点だ。

 「なぜ人は罪を犯すか?」という刑事ドラマの問題意識を掘り下げると「罪とは?」「善悪とは?」となり、人間に対する洞察に行き着く。『MIU404』では「ピタゴラスイッチ」を例に取って、一般市民が道を誤って犯罪に手を染めてしまう過程を繰り返し描く。犯罪に至るもつれた糸を丹念にほどいていくと、ある時点で個人の選択に行き当たる。そのことは、逆に言えば選択次第で未来は変えられるというメッセージでもある。

 数の論理ではなく個人にスポットライトを当てる『MIU404』は、必然的にそれまでの警察ドラマのジェンダー観を大幅に更新するものとなった。志摩や伊吹の上司でノンキャリアから女性初の機捜隊長になった桔梗ゆづる(麻生久美子)は、女性だけでなく差別や偏見に苦しむ人々の声も代弁している。「誰かが最悪の事態になる前に止める」(伊吹)4機捜という組織の性格は「古くさい男社会の中でめげずにきっちりやってきた」桔梗に多くのものを負っている。

 まるごとメロンパン号から離れてしまったが、要所要所に後の展開へのフックが仕込まれ、『アンナチュラル』(TBS系)とのリンクも貼られるなど、立体的に組み上げられたストーリーは繰り返し観る中ですごみが実感できるはずだ。機捜車の窓から見る光景はドラマの中で動いているような感覚を呼び起こし、犯人を追跡する際のスピード感がそれに拍車をかける。現実と地続きの世界で、大文字の正義ではなく個人の倫理に訴えた『MIU404』は、答えを大きな空白として残すことで私たち一人ひとりに問いかけている。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『MIU404』全話一挙放送SP
TBS系にて、1月3日(日)4:00〜放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

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