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広瀬すずは主演でこそ輝く 『なつぞら』ヒロインとして共演者たちを引き立てた独特の“余白”

リアルサウンド

19/9/26(木) 6:00

 最終回まで残すところあと3話となった『なつぞら』(NHK総合)。本作には歴代ヒロインをはじめ、全員集合したTEAM NACSの面々など、レギュラー出演者から1話限定のゲストまで、魅力的な役者たちが多数出演した。その中で、主人公なつとして、真ん中で作品を引っ張ってきたのが広瀬すずだ。

 新人賞を総なめにした映画『海街diary』をはじめ、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』、『ちはやふる』シリーズ、ドラマ『anone』(日本テレビ系)など、すでに“代表作”を持っていた広瀬だが、『なつぞら』を経てさらなるステージへと進んだと言えるだろう。ドラマ評論家の成馬零一氏は、『なつぞら』の広瀬の演技について次のように語る。

「これまでの作品を観ていても、広瀬さんは、“そこにいるだけで画になってしまう”という貴重な役者さんだと感じています。多くの役者は演じる役柄になりきるために、さまざまな“技”を繰り出していきます。特に朝ドラなど出演者が多い作品の場合、キャラクターの個性を出すために、よりその傾向が強い印象です。だからこそ、出演シーンが決して多くない役者に、視聴者が強く惹かれることも出てくる。その一方で、ヒロインはずっと出演シーンが続くこともあり、“技”だけでやり通し続けることは難しいんです。脇役としては非常に上手い演技をするのに、主演を務めると不思議と単調になってしまったり、魅力がなくなってしまう人がいますが、これも“技”だけでは主演を務めることができないからだと思っています。

 その意味で言うと、広瀬さんの演技は、非常に“余白”が多いんです。ともすれば『一生懸命やっていない』と感じる方もいるかもしれないのですが、その余白によって相対する役者たちの演技を受け止めることができている。なつは、戦災孤児として幼少期を過ごしながらも、周囲に恵まれ幸せな人生を歩みましたが、それでも何かが欠けたような、孤独を抱えたような印象がありました。その欠落感は広瀬さんの持っている演技の資質とも絶妙に重なっていたように思います。天才、と言ってしまうと違うかもしれないのですが、考えて演技をする、というよりも、自然に演じることができる。広瀬さんの演技には不自由さがないんです」

 出演者が多数登場する朝ドラは、広瀬の持ち味が存分に発揮された場所だったと成馬氏は続ける。

「広瀬さんは自ら動いていくタイプというよりも、周囲の演技に反応していくタイプ。坂元裕二脚本作『anone』では、“演技モンスター”とも言うべき田中裕子さんと真っ向から渡り合っていました。田中さんの凄まじい演技力に圧倒されてしまう若手女優も多くいたのですが、広瀬さんは田中さんの演技を受け止めた上で自分の演技ができていた。それが、『なつぞら』でも生かされています。広瀬さんとの共演シーンはどの役者さんも生き生きとしている。なつが自ら発信していくというよりも、なつの動きによって周囲の人生も浮かび上がっていく。ヒロインでありながら誰よりも引き立て役に回っている。『なつぞら』はそんな不思議な作品だったように思います」

 広瀬は『なつぞら』の後は、野田秀樹氏率いる演劇企画制作会社NODA・MAPによる『Q:A Night At The Kabuki』で舞台に初挑戦する。

「広瀬さんは、姉・広瀬アリスさんの存在や、『海街diary』の印象もあり、どこか“妹キャラ”という印象を持っている人は少なくないと思います。しかし、『なつぞら』では姉として、母として、これまでにない自立した女性も演じることができることを証明しました。受けの演技が持ち味と先程言いましたが、『なつぞら』の中でこれまでにない主体的な演技もできるようになった印象です。

 そして、『なつぞら』の後は野田秀樹さんが手がける舞台『Q:A Night At The Kabuki』が待機しています。舞台の芝居は映像の演技と違い、“ただそこにいるだけ”では通用しません。ある意味、これまでの広瀬さんの芝居の持ち味が封印されるだけに、どんな攻めの芝居をするのか非常に楽しみです。初舞台となる本作でまた大きな変化を遂げるのではないでしょうか」

 『なつぞら』で高校生から30代後半まで演じきった広瀬すず。『なつぞら』、舞台『Q:A Night At The Kabuki』を経て、女優としてさらなるステージへと進みそうだ。(石井達也)

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