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マキシマム ザ ホルモン、SPYAIR……コロナ禍を経たロックバンドの新たな表現 新譜5作をレビュー

リアルサウンド

21/3/30(火) 12:00

 メンバー全員が作詞・作曲に参加したSPYAIRの3年半ぶりのニューアルバム『UNITE』、“マスク2枚+2号店のラストシングル”を収めたマキシマム ザ ホルモンの新作『ESSENTIALS』。 コロナ禍を経て到達したロックバンドの新たな表現を堪能してほしい。

 「轍〜Wadachi〜」(映画『銀魂 THE FINAL』主題歌)、「I Wanna Be…」(TVアニメ『銀魂.(第4期)銀ノ魂篇』OPテーマ)、「One Day」(TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』EDテーマ)を含む、SPYAIRの約3年半ぶりのオリジナルアルバム『UNITE』。これまではほとんどの楽曲を“作詞:MOMIKEN/作曲:UZ”で制作していたが、本作はメンバー全員が作詞、作曲に参加。個々のメロディと言葉を取り込むことで、表現の幅を大きく広げている。コロナ禍によりデビュー10周年に関連する活動はほぼ中止になってしまったが、その時間を楽曲制作に充て、バンド自体をさらに進化させたのだ。その中軸にあるのはやはり、IKEの歌声。多様性を増したサウンドを取っ散らかった印象にせず、“SPYAIRらしさ”によって束ねているのは、鋭さとスケール感を兼ね備えた彼のボーカル力の賜物だろう。 

SPYAIR New Album『UNITE』Digest Movie

 昨年10月からYouTubeで『ガチンコザホルモン シーズン2』を配信。“未発表曲のトラックと歌詞を渡し、様々なアーティストに好きなように歌ってもらう”という前代未聞の企画を行うなど(奥田民生、TERU、桜井和寿などが参加!)、コロナ禍においてもロックバンドの枠を超えたエンタメを放ち続けるマキシマム ザ ホルモンの最新作『ESSENTIALS』は、マスク2枚+2号店(コロナナモレモモ)のラストシングルをセットにした作品。CDにはDANGER×DEERのDJセンスと超ヘビーなバンドサウンドが融合した「ビキニ・スポーツ・ポンチン」、わかざえもん、オマキのポップな歌声を活かした「チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ」、ダークかつ爆発的なサウンドメイクとフックありまくりのメロディを押し出した「シミ」などを収録。

 ライブやフェスには行きづらい、クラブも営業してないし、パーティもないという状況が続くなか、多くの音楽ファンが求めているのはおそらく“日常に似合うダンスミュージック”であり、Lucky Kilimanjaroの新作『DAILY BOP』は、まさにそういうアルバムだ。前作『!magination』と比べるとリズムの強さが全面に押し出され、気軽に体を動かしたくなる機能を強化。さらにアルバム全体を通して朝から夜までの時間を移り変わり表現することで、1日の流れ(リズム)が感じられる作品に仕上がっている。オルタナR&Bから盆踊りまでを網羅したトラックの多様性も魅力だが、特に注目してほしいのは、バンドの中心である熊木幸丸の日本語をグルーヴさせる技術。しなやかなリズムを内包したフロウ、心地よく揺れるボーカルは、一つの発明だと思う。

Lucky Kilimanjaro「MOONLIGHT」Official Music Video

 25周年を迎え、結成当初の3人体制(谷川正憲 /Vo&Gt、谷浩彰 /Ba&Cho)、吉田昇吾 /Dr)に戻ったUNCHAINのニューアルバム『Animal Effect』。自粛期間中にリモートで制作されたグルーヴィ&メロウな「Choices」、竹内アンナがコーラスと作詞で参加したネオソウル系ナンバー「Touch My Soul」など、このバンドの特徴であるハイブリッドな音楽性を堪能できる楽曲が並ぶ。ソウル、ジャズ、ファンクなどを取り込んだしなやかなサウンドメイクも素晴らしい。リード曲「Elephant Ship」は〈未だ見ぬ 未来という 彼方へ〉というラインを高らかに響かせるミディアムチューン。壮大にして力強いメロディ、先が見えない現状を打ち破ろうとする意思を込めた歌詞が共存するこの曲は、新たなスタートを切った彼らのモチベーションを証明している。

UNCHAIN「Elephant Ship」Music Video

 神戸発の3ピースバンド、w.o.d.の3rdアルバム『LIFE IS TOO LONG』は、彼らのルーツであるグランジ、オルタナを2020年代の日本のロックとして再構築した充実作。Led Zeppelin、The Chemical Brothers、Oasisがセッションしているような「モーニング・グローリー」、“クラウトロック×ガレージパンク”な爆音チューン「楽園」など、どの曲にも偉大な先人たちからの影響が強く感じられるのだが、臨場感に溢れたバンドサウンド、その瞬間の閃きと反射が込められたパフォーマンスによって、“今”のロックに導かれているのだ。歌心を増したサイトウタクヤ (Vo/Gt)のボーカルも確実に成長。特に「あらしのよるに」における、大切な人と会えない寂しさ、自分と向き合うことの意味を描き出した歌には、強く心を揺さぶられた。

w.o.d. – モーニング・グローリー [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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