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SuperM、『Beyond LIVE』から感じた世界中のファンとの“繋がり”とライブの新たな未来

リアルサウンド

20/4/28(火) 10:00

 世界中でパンデミック化しているCOVID-19(新型コロナウイルス)により世界中のエンターテインメント業界でライブ興行が困難な状態になった現在、オンラインでのフェスや無観客ライブなどの配信コンテンツが盛んになっている。しかし、今現在オンラインフェスなどはチャリティ公演が多く、特にK-POP業界では無料のケースも多いため、オンラインコンテンツのみでオフラインでのライブコンサートレベルの収益を上げることは難しいだろう。そんな中でSM ENTERTAINMENTがNAVER「V LIVE」と立ち上げたのが、OTT(Over The Top=オンライン)専用の有料配信コンサートライブ『Beyond LIVE』だ。これは、K-POPアーティストの多くが生配信のプラットフォームとして利用しているV LIVEを通し、生放送で視聴者とライブ会場をつないで双方向のコミュニケーションを可能にしたコンサートプログラム。V LIVEは元々、コンサートのライブビューイングや有料プログラム配信も行なっており、配信中に画面上にペンライトを表示させてハートを送る公式のLIGHTSTICKシステムなどもあり、世界中の既存のK-POPファンにとってはすでに登録済みのケースも多い。V LIVE上でのコインか、韓国の通販サイト「YES24」でチケット(ペンライトやアプリにかざすとメンバーの個別コンテンツなどが見られるARチケットなどとセットのものもある)、またはシリアルコードを購入することで、配信とVOD視聴が可能になるシステムである。

(関連:SuperM、ライブストリーミング『Beyond LIVE』で新曲初披露

 そんな『Beyond LIVE』の初日となる4月26日に登場したのが、デビューミニアルバムが全米Billboard200でチャート1位を記録した、SHINeeのテミン、EXOよりベクヒョンとカイ、NCT 127のテヨンとマーク、WayVのルーカスとテンが所属するグループの垣根をこえた7人組スーパーグループ・SuperMだ。4月23日に予定されていた1日限りの東京ドーム公演が見送りになったタイミングでのコンサート配信となった。SM ENTERTAINMENTとしてもK-POPグループとしても初の試みである『Beyond LIVE』のトップバッターとして、グループのキャッチフレーズが「We Are The Future」であるSuperMは相応しいと言えるだろう。また本公演では、未発表の新曲をこのライブで初披露することも事前にアナウンスされていた。

 韓国の伝統音楽のテイストを盛り込み、「西洋と東洋のシナジー」というグループのアイデンティティを盛り込んだ「I Can’t Stand The Rain」、そして各メンバーのソロダンスが盛り込まれたダンスパフォーマンスでライブの幕が上がった。本公演のセットリストにはSuperMがリリースしているミニアルバム収録の5曲と新曲1曲、ユニット曲1曲のほか、メンバー7人それぞれのソロ曲が用意されていた。

 SuperMのメンバーのうち、すでにソロ曲をリリースしているテミン・ベクヒョン・テン、単独コンサートで披露されライブアルバムに収録されているカイ以外のソロ曲は全て未発売の楽曲であり、今のところはSuperMのライブステージでしか見ることができないものだ。ソロステージの最初は、ショッピングカートに乗って登場したテヨンのソロパフォーマンス「GTA」。同名のゲームをタイトルにしたダンサブルでスワッグの効いたEDM×HIPHOPナンバーだ。続くテンの「夢中夢」「New Heroes」は、音と一体化するようなしなやかなダンスをひきたてる浮遊感のあるEDMで、がらりと雰囲気を変えた。ソロ活動の経験も豊富なテミンは「MOVE」と「WANT」で、鬼気迫るとも表現できるテミンならではの色気あるパフォーマンスで圧倒し、同じくソロでも活躍しているベクヒョンはハスキーで甘いボーカルが印象的な「Betcha 」「UN Village」を聴かせた。

 ルーカスの「Bass Go Boom」は本人の明るいキャラクターを反映したようなアッパーなレゲトン風味のあるハッピーな1曲。一方、ラップに定評のあるマークのソロはグループでのキャラクターとも少し違う、ちょっとワルめのラチェットミュージックテイストで、バンガーなヒップホップソングを見せた。EXOの単独コンサート『EXO PLANET #5 – ExplOration』で披露されたカイのソロ曲「Confession」「Spoiler」はR&B色が強く、カイのセクシーなダンスや重めのサウンドと対照的なフレッシュで清純なボーカルが不思議と調和したナンバーと、7人7様のステージを見せてくれた。アルバム収録曲以外のユニット曲は、2頭の肉食獣が戯れ合うようなダンスが印象的なテヨンとテンの「Baby Don’t Stop」(NCT『NCT 2018 Emphasy』収録曲、英「DAZED」誌の選ぶ「The 20 best K-pop songs of 2018」の1位に選出された)のみの披露だったが、このようにライブで見る機会がなかなかない曲が見られる場としても新しいライブの見せ方を感じさせてくれた。

 ステージ上のスクリーンには、開演前から画面の向こうでライブを心待ちにする世界中のオーディエンスたちの姿が多分割で映されていたが、スクリーンを通して視聴者たちと直接リアルタイムで交流する時間があったのも、この『Beyond LIVE』の配信ならではの部分だったのではないだろうか。同じくSM ENTERTAINMENTに所属するガールズグループRed Velvetがスクリーン越しに登場したり、分割画面で他のSMアーティスト達が視聴している姿を発見できたりというのも、サプライズ的な楽しみを生んでくれた。また、世界中から視聴するファンを意識してか、リアルタイム翻訳による多言語字幕や、メンバーたち自身がそれぞれの母国語である韓国語・英語・タイ語だけではなく日本語や中国語、インドネシア語やベトナム語、スペイン語、フランス語などなるべく多くの言語でコミュニケーションをとろうとしていた姿も印象的だった。多国籍かつ、楽曲の歌詞自体も韓国語と英語が半々くらい(テンとルーカスのソロ曲は英語詞で、マークのソロ曲は英語と韓国語が8:2くらい)のSuperMならではの交流風景が見られた。

 3方向のスクリーンを活用したAR(拡張現実)をふんだんに取り入れていた点も、『Beyond LIVE』ならではと言えるだろう。SM ENTERTAINMENTは、アーティストがその場にいるかのような3Dフィルムコンサートや、VRによるホログラムミュージカルやコンサートなど、アーティストが実際その場にいなくてもエンタメとして成り立つような、バーチャル的なライブ表現に携わってきた歴史が長い。VRライブではメンバーが自在に消えたり現れたりといった、現実のライブでは難しい非現実空間ならではのCGを生かした演出が特徴としてあったが、今回のライブでもその時の経験が生かされているのではないだろうか。特に新曲「Tiger Inside」では、CGの檻からメンバーが登場したり、虎があたかもそこにいるかのようにステージを走り回る映像と融合したARならではの演出が印象的だった。また、テヨンやマークのソロのようにリリックやパンチラインが肝の楽曲での、歌詞が視覚的に飛びこんでくるような演出も効果的だった。

 今回のSuperMのライブでは、全世界109カ国、7万5千人の有料視聴者がいたようだ。本公演は、ライブに足を運べない状況にも関わらず、世界中のオーディエンスにパフォーマンスを届けられるというオンライン配信の大きなメリットを打ち出したコンテンツであると感じた。オンライン配信には違法ストリーミングなど懸念すべき点はあるものの、同時に配信ならではの演出や、「繋がり」を感じさせるような双方向コミュニケーションの工夫なども、今後配信でのライブコンテンツでは特に力を入れるべきポイントと言えるだろう。

 そういう部分も含めて、今後K-POPジャンル以外でも増えてくるであろう有料のライブ配信コンサートにおいて、まずは指針のひとつとなるライブになったと言えるのではないだろうか。

 今後の『Beyond LIVE』では、日本ではまだライブパフォーマンスをしたことがないWayV(5月3日)や、カムバックを控えているNCT DREAM(5月10日)、日本でのアリーナツアーも大成功をおさめたNCT 127(5月17日)といったラインナップが予定されている。今回の配信を皮切りに毎週日曜の午後3時に配信されるので、ぜひ体験してみてほしい。(DJ泡沫)

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