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『アライブ』高畑淳子から見習うポジティブな生き方 “笑顔”が患者にもたらすもの

リアルサウンド

20/2/28(金) 6:00

 心(松下奈緒)の診察を受ける患者のひとりとして第1話から登場してきた高坂(高畑淳子)。彼女はがんの再発と転移を繰り返したのちに、第6話で一度手術を受けるのだが、執刀した薫(木村佳乃)でさえ為す術がない状態で、結局心から抗がん剤治療を提案されるのだ。しかし高坂は「この痛みも生きている証」と、抗がん剤治療を受けないことを宣言する。2月27日に放送されたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』第8話は、患者本人が病気と向き合うために忘れてはいけない重要なことを提示するエピソードとなった。それは大きく括って「素直になること」と「笑顔」である。

参考:【ほか場面写真多数】笑い合う清原翔と小川紗良

 今回心のもとにやってきた患者は、幼少期から入退院を繰り返してきた高校生の井上和樹(萩原利久)。ようやく普通の生活を送り始めたなかで再発した病に家族も疲弊し、和樹本人は心を閉ざして嘘の闘病ブログを心の拠り所にしていた。そんな和樹に奈海(岡崎紗絵)は自身の弟を重ね、寄り添おうとするのだが突き放されてしまう。そこで心たちはAYA世代の患者たちが抱える不安や悩みを共有する場を設けるのだ。劇中ではとくに説明もなく進められていたが、AYA世代とはAdolescent & Young Adultの頭文字を取ったもので、15歳から30歳代の患者たちを示した言葉である。

 このAYA世代は、学校生活や会社など社会人としての生活、結婚や出産など様々なライフイベントが待ち受けている世代であり、劇中でも患者会を終えた後の心の家でのシーンで語られている通り、周りが充実している時期に自分は闘病しなければならないことなど、とりわけ患者本人が多くの不安にさらされることが多い世代といえよう。すでに本ドラマにおいては、第2話からレギュラーとして登場している乳がん患者の佐倉(小川紗良)の姿を通して、この世代の不安や悩みは繰り返し描かれてきていることからも、本作における患者たちのドラマのひとつの根幹を担っていると見ることができよう。

 今回のエピソードの中で佐倉は高坂と親しくなり、高坂の持つ“やりたいことを素直に楽しむ”ことや“痛みも生きている時にしか味わえない”というようなポジティブな姿勢を直伝される。高坂が佐倉にメイクをしながら語りかける「化粧は人生を輝かせるためにする」という言葉もまた、病気の治療とは異なる形でQOLを高める大事な考え方のひとつではないだろうか。同様に、今回の劇中では光野(藤井隆)が病院内のイベントのために道化の格好をするというくだりも登場する。その姿にかつて救われた和樹が、それを思い出して心を開くのだ。

 ここで想起されるのは、ロビン・ウィリアムズが主演した映画でもよく知られている“パッチ・アダムス”ことハンターキャンベル・アダムスという医師が始めたという“ホスピタル・クラウン”だ。笑顔によって免疫力が上がり身体にポジティブな影響をもたらすというものであり、もちろんそれが100%病気を治癒させるというわけでもない。けれども患者を前向きにさせる効果はあるし、笑わないよりも笑っている方が何倍も素晴らしいことであるのは間違いない。病気になって暗くなりがちな心を、無理やりではなく少しでも明るくしてくれるもの。不安を吐き出す場所や相手の存在でも、笑顔や化粧でも、そうした些細だけど大事なものは、ついつい忘れがちになってしまうものである。 (文=久保田和馬)

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