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『麒麟がくる』で如実になる天下平定への齟齬 信長と光秀の考え方の違い

リアルサウンド

20/9/28(月) 6:00

 「大きな国」。道山(本木雅弘)の遺志を継いだ光秀(長谷川博己)は信長(染谷将太)に再びこの話を聞かせるとともに、ある話を持ちかけた。NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の第25回「羽運ぶ蟻」では、足利義昭(滝藤賢一)を担ごうとする動きに対し、三好一族が義昭のいとこの足利義栄(一ノ瀬颯)を将軍に立てるべく暗躍する。

 光秀は11年ぶりに美濃に戻ると、美濃を平定した信長(染谷将太)に会いに稲葉山城へ向かった。光秀は信長から「ワシに仕える気はないか?」と問われるが、今の光秀はすぐに首を縦に振れる状況ではなかった。仕えたいと思っていた足利義輝(向井理)が亡くなったことで、自分がこの先どうすればいいのかが分からなくなっていると話す。するとそれを聞いた信長も「自分は戦が嫌いではない。ただ、この先どこへ向かって戦をすればいいのか解らない」と、同じように迷いが生じている胸中を吐露した。光秀はそんな信長に「大きな国」や「堺」の話をし、上洛する事を勧めるのであった。堺を手に入れたがっていた信長は、この話を聞いて大いに喜び、目を輝かせる。「大きな国はこれくらいか?」と地図の周りをくるりと周る信長はまるで無邪気な子供のよう。帰蝶に甘えていた姿や、母に褒められようと一生懸命になっていた頃の信長の姿が思い出されるシーンとなった。心のもやが晴れるように瞳を見開き、信長と光秀は大きく高笑いするのだった。

 その頃、覚慶は還俗して足利義昭と名乗ることとなる。ある日庭先で、義昭は一匹の蟻が仲間の手を借りずに大きな蝶の羽を運ぼうと苦戦する姿を発見し、それを自分自身と重ねまじまじと観察する。義昭はすぐさま越前に戻った光秀を訪ね「将軍という大きな羽は一人では運べん」と蟻の話しに喩え、自身が仲間の手を借りて将軍となって貧しい人々を助けるのも悪くはないと思っている旨を話した。

 光秀の元を訪ねた義昭は、光秀の子供たちと遊ぶ姿や、目尻を下げて愛しそうに笑う姿から相変わらず朗らかで優しい人格が窺える。しかし、かつての穏やかだが頼りない姿は影を潜めつつあり、確かに将軍になる意思を持ち、前を向いて歩もうとしている様子が見て取れた。義昭は、将軍になるために朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)の助けがいると言う。そしてそのことを光秀から義景へと伝えて欲しいと申し出た。平らかな世を作りたいと願う光秀にとって、同じ意思を持つ義昭が自覚を持って将軍になろうとすることは喜ばしいことだっただろう。

 翌日光秀は、義景に会いに行く。こうして義景は信長と共に義昭を担ぐ決心をする。信長も義景も、義昭の考えなどには興味がなく、意のままにして自分の思い通りの世を作ろうと考えている様子だった。だがそんな2人もまた、光秀に担がれているようにも見える。光秀にとって、同じ理想の国造りを目指していた義輝が亡き後、その遺志を継ぐ最も近いところにいるのが義昭である。その義昭を将軍にするためにはどうしても信長と義景の力が必要だった。

 さらに光秀と信長は、目的は同じであれど、天下平定に対する考え方の違いは明らか。桶狭間の戦いの後から繰り返し描かれてきたが、信長は帰蝶や周りの皆に喜んでもらうために戦をしているが、光秀は平和な世の中を作るためだと言う。この齟齬が今後物語にどう関わってくるのだろうか。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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