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マキシマム ザ ホルモン、YouTube企画で試みた新たな実験 独自のメロディラインが形成するアーティストの“らしさ”

リアルサウンド

20/12/26(土) 12:00

 マキシマム ザ ホルモンがYouTubeの公式チャンネルで12月10日、17日の2週にわたり公開したスペシャル企画「ホルモンの新曲俺ならこう歌う選手権!!」が話題をあつめている。

 同企画はホルモンの新曲を題材に、「原曲を聴かせず、いろんな人物にホルモンの新曲のサビのバックトラックと歌詞だけを渡し、自分流のメロディを乗せて歌ってもらうとどうなるのか?」を検証したもの。演奏と歌詞が同じでも、歌い手によってメロディの千差万別になるのか。それとも、演奏と歌詞が同じなら歌い手に関わらず似通ったものになるのか。

 『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で特集が組まれそうな、視聴者の好奇心をくすぐるナイスなこの企画。出演したボーカリストたちも豪華メンバー。ホルモンの番組だからこそ、いろんな大人の事情を飛び越えて実現させることができたのではないか。

 出演者は、ファンキー加藤、ヤバイTシャツ屋さん・こやま、元B-DASH ・GONGON、Creepy Nuts ・R-指定、YOASOBIのコンポーザーで知られるボカロP・Ayase、お笑いコンビ・霜降り明星の粗品、GLAY・TERU、奥田民生、Mr.Children・桜井和寿ら。

 結論から言うと、歌い手によって実に多種多様なメロディラインが披露された。「歌詞上の単語を3回までなら連呼OK」、「Yeah!、Oh!、Ah!、Uh!などの掛け声は1回までなら入れてOK」というルールもあったことから、出演者は思いおもいの感覚とアレンジでホルモンの新曲のサビを歌唱。一方で、個々の「らしさ」がよくあらわれていた。

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 もっとも興味深かったのは、R-指定だ。求められるのは当然、ラップの曲調。R-指定は、ホルモンも驚くまさかの「リリックの2回まわし」で魅せた。他の出演者はメロディに乗ってリリックを1回まわしで済ませたが、R-指定は、ラップ特有の言葉の詰め込みとテンポの早さもあって同じ歌詞をリターン。参加者のなかでもっとも異質な楽曲ができあがった。

 「声色も新し目のフローを意識した」とR-指定はコメントしていたが、ホルモンのラウドなバックトラックに彼の軽快なボーカルが絡むと、まるでLimp Bizkitを彷彿とさせる曲に様変わり。完成度も高く、いつかホルモンとR-指定のコラボ曲を期待したくなるほど。

 GLAYのTERUにもびっくりさせられた。「オリジナルを聴いてみて、今まで聴いてきた音楽や鑑賞によってこれほど曲の印象が変わるのか」という感想を残していたTERUだが、彼の場合はまさにそのバックボーンが影響しているのか、題材曲を受け取ってからメロディを発想するまでの捉え方が、他とはまったく違うように思えた。題材曲はサビのパートだけ。しかしTERUが独自のメロディで歌うと、まるでAメロからサビまで丸々聴いたような充実感。メロディラインに構成力があるから、展開とボリュームを感じることができるのだ。

 奥田民生、桜井和寿はともに彼ら独自のカラーが濃厚だった。〈懺悔ノンフィクション〉の歌詞の部分は民生独特の節回しが効いている。さらにYeah!やOh!ではなく、民生の曲にもよく出てくる「ですます調」の掛け声を付け足し。終盤の〈people 名誉 GETBACK〉はネチっこく歌い上げた。「30分頭で考えて、1回目で出来ました」と一発録りだったこともあってか、奥田民生らしい飾らないスタイルがあらわれていた。

 一方、「オケのパワーと歌詞の独特なリズムを味方につけた」という桜井のバージョンは、その声質も相まってNirvanaっぽい雰囲気になった。マキシマムザ亮君も「グランジを感じた」、ダイスケはんは「ミスチルのポップサイドではない方のテイスト」と解説。初期のミスチルはアメリカのグランジシーンの影響をかなり感じさせていただけに、ホルモンのトラックによって桜井の本質が引き出されたのではないか。さらに民生同様、オリジナルの掛け声として最後にゲップをプラス。ナヲは「民生さんも桜井さんもノンフィクションで出してくるね」とそのアドリブに感嘆した。

 自分のカラーと言う点では、ファンキー加藤のメロディラインはもはやFUNKY MONKEY BABYSの曲そのもの。「ファンモンらしさ」を意識してメロディラインを考えたとあって、歌い回しをカタめにして歌詞を際立たせる曲調に。ポジティブな曲へと生まれ変わり、ホルモンも「元気の押し売り。音楽界の松岡修造」という冗談を交えながらも「ファンモン節」と舌を巻いた。

 GONGONも彼の色が強くなった。B-DASHは、メロディに合わせて適当な日本語や英語で歌う「ハチャメチャ語」の歌詞が特徴だった。この企画でも、GONGONならではの言葉のイントネーションや区切り方をみせている。彼が歌うとメロディがよりハネて聴こえる。

 自分の世界観に持ち込んでじっくり聴かせたのはAyase。「中学時代からホルモンに夢中で自身の音楽ルーツに強く影響を与えた」と話す彼は、ボカロを使用して挑戦。序盤の〈全知全能のゼウス 懺悔ノンフィクション〉の入りを早め、ワードの繰り返しを多用。ボカロによるボーカルとメロディラインは、ホルモンのトラックとは思えない面白味のある無機質感が漂い、上ちゃんも「ダース・ベイダーかと思った」と驚いた。

 ヤバイTシャツ屋さん・こやまも非常に見応えがあった。腹ペコ(ホルモンのファンの愛称)のこやまらしく、ホルモンっぽさを追求するリスペクトにあふれたメロディで歌い上げた。ちなみにヤバTといえば、LMFAOの「Shots」をオマージュした人気曲「あつまれ!パーティーピーポー」がある。パロディ曲を作る器用さと大胆さが、今回の企画にも生かされた。デスボイスを駆使する構成は、確かにホルモンテイスト。

 同じくホルモンの大ファンを公言する、霜降り明星の粗品。漫才でツッコミをしているところを見ても分かるが、喉が強き、ロックな声質の持ち主だ。さまざまな楽器演奏ができるなど音楽にも通じているとあって、荒々しい完全燃焼系のシャウトメロディながら、何気にバックトラックに丁寧になぞるように歌を乗せている。

 歌い手によってアプローチの仕方はまったく違う。ただ、それぞれが自分でメロディラインを想像したとあって、結果的に各自のルーツやバックボーンがはっきり表れたのではないだろうか。またR-指定を顕著として、ホルモンのトラックに合わせることで、今までとはまた新たな音楽性が生み落とされた部分もある。ホルモンだけではなく、今後さまざまなアーティストでも試してほしい企画である。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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