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LACCO TOWERが日本語詞で歌い続ける理由「『言わずもがな』っていうのがすごく大事」

リアルサウンド

16/6/8(水) 18:30

 昨年6月にアルバム『非幸福論』でメジャー・デビューし、そのどこか懐かしさすら感じさせる叙情的なメロディ、ピアノを擁するドラマチックなバンドアンサンブルで今の時代に新鮮な一撃を打ち込んだLACCO TOWER。特にメロディに乗る歌謡曲全盛期の作詞家然とした松川ケイスケ(Vo.)による、焦燥や美しいものを希求する気持ちを昇華した日本語詞はこのバンドならではの魅力だ。今回はメジャー1stシングルとして話題を呼んだ「薄紅」も収録した2ndアルバム『心臓文庫』について、そして日本語へのこだわりなどを松川ケイスケと塩崎啓示(Ba.)に聞いた。(石角友香)

「常に不安でギリギリでヒリヒリのところにいる」(松川)

――いきなりですが、松川さんが、古今東西の名言をテーマにして更新しているブログ『keisuke’s Column』のクオリティがすごくて。松川さんにとって、ものを書く行為って必要不可欠なものなんですか?

松川ケイスケ(以下、松川):小さい頃から文学少年というわけではなくて、どこにでもいる目立ちたがり屋という経緯からバンドを始めて、それをわずらわせて東京まで出てきて、バンドを組んでこの歳に至るんですけど(笑)。自分の中ではマイノリティ意識があるんです。

――どういう部分で?

松川:ずっとピアノを習ってたとかそういうことでもなく、楽器が好きなわけでもなければ、音楽にすごく興味があったわけでもない(苦笑)。そんな中、バンド活動をしてきて行き詰まった時に、自分を変えたくて、自分の中で一番苦手な“本を読む”ということをやってみようと思い立って、ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだんです。絶対このきっかけじゃないと読むことはないだろうなという本をあえて読んでみたんですが、いざ読み終わると達成感があって。そこから歌詞の書き方や文章に対する考え方が変わってきました。今回の作品も歌詞にする前に、全部短編小説を書いているんです。

――そこまでやるんですね。

松川:さっきの「書くという行為」が何なのか? に対する答えとしては、みんながギターやベースで表現することが、僕にとっては書くということに寄っているのかもしれません。

――ドストエフスキーを読破したのはいつ頃ですか?

松川:10年ぐらい前で、LACCO TOWERが3、4年目ぐらいの時です。環境の変化やメンバーチェンジもあって、バンドがいい方向に行くか行かないか揺れていた時期ですね。

――それ以降、歌詞の書き方はどう変わりましたか?

松川:本を読んでみて、歌詞を書くっていう作業に入ってみると、他の人の歌詞を見たときになんかすごく上澄みな気がして、その時の僕にはありきたりな言葉が並んでるようにしか見えなくて、そこに対して「だったら俺はこうしてやるよ」という反骨心が生まれてきたんです(笑)

――ギターロックやメロディック全盛の頃ですか?

塩崎啓示(以下、塩崎):そうですね。バンドがすごく多かった頃ですね。

松川:あとはタオルがよく回ってた時期ですね(笑)。

――(笑)。そこから始まって、今回のメジャー2ndアルバムの歌詞でもそのメンタリティは続いているようですね。

松川:僕はホント、常に不安でギリギリでヒリヒリのところにいるというか(笑)。表面上はいくらでも明るく努められますし、関西人なんで面白い会話はもちろん好きですけど、表現ってところにおいてはずっとギリギリなんですよね。常に誰かに負けてる気がするし、誰かに勝たなきゃいけない気がするし、常に誰かに勝ってる気もするし。端っこに立ってて、少し突かれたら、いとも簡単に落ちてしまいそうな状態というか。

――日常的に追い詰められてるんですか?

松川:はい。今日も「いつこのビルが壊れるんじゃないか」と不安でしょうがないですし(笑)。来る途中も伊勢志摩サミットの影響でごみ箱が封鎖されていて、おにぎり食べたあとのゴミをずっと捨てれなかったので、たくさんいる警備員さんに見られながら「これ爆弾やと思われてるんやろうか」とか。

――想像とか妄想が広がっていく?

松川:そうですね。途中で止めようと思うんですけど、ひどい時は「家、出ないほうがええ」ぐらいまで発展する時がありますね。最近、忙しすぎて「俺がもっと頑張らないとみんな死んでしまう」と思い込んで危なかった時期がありました(笑)。ほんと言い続けるとキリがないんですよ(笑)。

――バンドのフロントマンとしてはかなりシリアスな問題のような。

松川:そういう自分を覆い隠すようにライブもやってますし、自分に言い聞かせるように「明日は大丈夫だよ、きっと」って言うんです。あれ、みんなに言ってるというか、自分に言ってるというか(笑)。「大丈夫やんな」という確認でもあるんです。

――バンド始めた時は自信満々だったのに?

松川:最初はそうでしたね。メンバーもおそらくそれぞれに変化したと思うんですが、こんな僕をメンバーが理解してくれたうえで、表現に寄り添ってくれてできたのが、今のLACCO TOWERが持つアイデンティティだと思うんですよね。

――ところで楽曲のクレジットはバンド名義ですが、制作の際はセッションで作っていくのでしょうか?

塩崎:基本、鍵盤の真一ジェットです。彼が入った7、8年前から徐々にそうなってきたのですが、打ち込みで「大体こういうリズムパターン」「大体こういうメロディ、こういうコード進行」という風に決めておけば、とあるきっかけで全員がそれぞれアレンジまでできるようになるという。真一ジェットは幼少期からピアノをやってた人間なので、彼の楽曲が僕らの色になってるんだと思いますね。

――ドラマチックな部分やスケール感にX JAPAN的なものも感じます。

塩崎:あ、ほんとですか? 初めて買ったバンドスコアはX JAPANで、ルーツのひとつといえる音楽ですね。

松川:僕は「ソングコング」どまりでした。

塩崎:あったねぇ(笑)。あと、B’zを自転車漕ぎながら学校帰りに歌ったり、LUNA SEA、GLAY 、LArc-en-Cielとかをコピーしたり。

――90年代J-ロックの王道ですね。

塩崎:あとBOØWYが地元の先輩で。ドンピシャなのは俺らよりもうすこし上の世代で、ギターをかじってるやつはみんな「Marionette」のイントロが弾けて当たり前みたいな。

「10歳下のヤツらとバチバチやりあう覚悟はしてる」(塩崎)

――今回の2ndアルバムはそれらのルーツを感じさせる楽曲を盛り込みつつ、全ての曲が物語を構成するような仕上がりですね。『心臓文庫』というタイトルのインパクトも大きくて。

松川:漢字を4つ並べると強く見えますよね(笑)。

――これ以上意味がなくなるとそれはそれで分からなくなるという。

松川:漢字っていうだけである程度、体裁が整うので、ひょっとすると安っぽくなりがちな部分ですし、中二病っぽいと感じるかもしれない。でも、ギリギリのところはいつも狙いたいなって思ってるんです。

――意味合いとしては、10個の短編小説が入った文庫本ということなのでしょうか。

松川:そうですね。気持ちや心、心臓を詰め込んだ文庫本ということです。「耳で読んでもらいたい曲」というコピーもそこから派生してつけたものです。

――1曲目の「罪之罰」は、壮絶なリズムチェンジやプログレのような構成で、冒頭から攻めていますね。

塩崎:今回、シングルの『薄紅』で僕らのことを初めて知った方もかなり多いと思うんです。だからこそ、ポップな「薄紅」のイメージで聴いたときに「これホントに同じバンド!?」と感じさせて裏切りたかったという意図もあるんです。

――たしかに(笑)。アルバム曲が出てきた時に「薄紅」の置き場所ってすぐに決まりました?

塩崎:「未来前夜」というリード曲があったので、そこからつなげていこうとすぐに決まりました。流れとしてもにしっくりくるものになったと思います。

――そして「楽団奇譚」はライブステージでのパフォーマンスを表現しているような歌詞ですね。

松川:この曲については、歌舞伎を見ながら歌詞を書きました。最近、歌舞伎をちょっと嗜むようになったので、その口上を意識したんです。ただ、デモの段階で真一ジェットがかなり遊び狂っていたので、まじめな歌詞をつけてもしょうがないと思い、こっちも遊びを入れてみることにしました。

――LACCO TOWERの楽曲は真一さんという作曲家と松川さんという作詞家のタッグでもあるわけですね。

松川:ああ、そうかもしれないですね。今回の作品は完全に分かれました。前まではみんなでアレンジしてて、僕もわからないなりになんですけど、「そこベース、もっとウンウン行かれへん?」とか「高いところへ音行かれへん?」とか「リズム、8ビートの方がいいんじゃない?」と言ってたんですが、今回はほぼ入ってないですね。どちらかというと、楽器隊でほぼ固めてくれた人たちのなかに入って、僕は最後に歌詞でお化粧して作品にしたみたいな感じです。

――松川さんの歌詞は季節だけでなく温度や湿度も感じさせますね。例えば「蛍」の<夕立が去った夜だから 濡れた道は月のせいで きらきらと 輝くから ほら夢みたいだ>とか。

松川:ありがとうございます。

――艶とか日本的に感じる部分はそういうところも大きいのかなと。

松川:「蛍」に関してはマジョリティに行く直前のちょうどいい、イモっぽさと洗練された感じのあいだのちょうどいいところをずっと探してて(笑)。言い切らないけど、言い切りたいみたいなとこだったり、言わな過ぎても意味がわからないんで。この曲は僕も10曲の中でもすごく好きな曲です。

――日本人には「全ては言わない」美意識がありますね。

松川:全て日本語詞にしている意味って、そこのような気がしてるんですよ。「言わずもがな」っていうのがすごい大事な気がするし、それこそが日本語の特性というか。日本で育ってきた人間なんで、日本語での表現が一番しっくりくるというのももちろんありますし、その表現の素晴らしさが自分を変えてくれましたから。最初は海外の本から入りましたけど、そこから太宰治や日本人作家の小説に触れたことで、あらためて気づいたというか。10かゼロかじゃない美しさが日本語にはあるし、バンドとして楽器隊が好き勝手やってる中に言葉を乗せていけるこの環境が、自分にとってはすごく幸せですね。

――10かゼロかやイエスかノーか? じゃないことを歌えることによって、松川さんは自分の中の気持ちが出せる?

松川:それぐらいで気持ちを出してる方が僕もちょうどいいというか。言いきってしまうことは何かと戦うことだと思うので、そこに対しては恐怖心もありますね。それは僕がたぶん弱虫だからだと思うんですけど。他のボーカリストを見てるとすごく強い人のように感じてしまうんですよね。そういう人が牽引する世界は確かにあって、付いていく人が多いということもわかっているんですけど、大多数の人はたぶん僕のような感性なんですよね。でも、そんな僕だからこそ歌えたり鳴らせるロックもあるでしょうし、そのほうがより近い存在として感じてもらえるのかもしれない。輝いてない部分の方が多い人が、輝いてる場所で何かを歌ってるという、そのアンバランスさも面白いなと思うし(笑)、そういうボーカリストでずっといたいです。

――弱虫のフロントマンのままでいようと?

松川:はい。なんかね、僕が全知全能みたいな人間であればそんなことする必要ないんでしょうけど。やっぱりこういう世界に来て周りの人といろいろお話しをしたり、いろんなことを経験すると、ほんとに自分が凡才だったことがすごくラッキーに感じるんです。最初は何も持っていない自分がすごく怖かったし悲しかったんですけど、「そんなヤツが音楽をやって誰かに何かを伝えてもいいじゃないか」とどこかで思えるようになった時に、扉が開けたような気がします。最近はライブでもより素直であったほうがいいのかもと思うことも増えました。

――素直さという意味ではラストの「相思相逢」の優しいメロディとJ-POP調のアレンジ、”ありがとう”というワードで終わるところも、LACCO TOWERの音楽として新鮮に感じました。

松川:これは今回書いた内容のなかでも、一つ間口を広げることができたと思えるものです。バンドってそれぞれ、自分たちがやっていいこと、やっていけないことの境界線を引いていると思うんですけど、今の僕らの年齢になってみて、いろんなものをひっくるめて「ありがとう」って言ってみることに前向きになれたり、ライブではそういうことを常に言っているからこそ、自分の中で納得感があったんです。前の9曲を書き上げた後にこの曲の歌詞を書いたというわけではないのですが、今の状況をまとめられる曲として「相思相逢」はまさにベストで。歌詞としても僕の中で一歩前進したというか、少し優しくなれた曲になりました。

――LACCO TOWERの曲は、耳で聴いたままではなく「耳で読んでほしい曲」であることが、リスナーそれぞれの想像をかき立て、感覚を震わせているのだと思います。

松川:もちろんストレートに伝える方が、ポップスとしては大事なのかもしれないですし、エッジを利かせるのは簡単なんです。でも、どちらにも振り切れなくて自分のアイデンティティを求めることができず、悩みながら歩いて行ってる人の方が多い世の中だからこそ、マイノリティとマジョリティの間にある、ちょうどいい感覚を届けたいんです。LACCO TOWERの歩みかたも今までそうだったので。少しずつチャレンジしていくことこそがロックだと訴える、そういうバンドでありたいなと思うんですよね。

――ところで今夏はさまざまなフェスに出演するそうですね。

塩崎:初めて出演させていただくフェスも多くて、新人枠として出るからには、10歳下ぐらいのヤツらとバチバチやりあう覚悟はしてます(笑)。

松川:持ち時間が短いので、ソリッドに僕らのかっこよさを伝えるだけで終わるようなライブをしようかなと思います。どうしても僕らは本質を伝えるのに時間がかかるバンドだと自覚しているので、一つの風景として僕らのパフォーマンスを楽しんでほしいです。ちょっとでも琴線に引っかかったら、後でキャッチアップしてくれればと。

――昨年の『TRIAD ROCKS』でも初見のお客さんを驚かせていたし、大きいステージでイニシアチブが取れるバンドだと思うので、夏以降もっと大きなところへ行けるんじゃないですか?

松川:ライブをやって成長する部分があるのはたしかですね。35歳ですけど、まだまだ伸びしろはあると思います。それに、この年齢でずっと青春を謳歌しているからこそ、面白がってもらえるのかなって。ミュージシャンやバンドマンだからというわけではなく、一人の人間として精一杯表現している様子に何かを感じてもらえたら嬉しいです。

(取材・文=石角友香)

■リリース情報
アルバム『心臓文庫』
発売:6月8日(水)
価格:¥3,000(+税)
<収録曲>
1.罪之罰
2.未来前夜
3.薄紅
4.蜂蜜
5.楽団奇譚
6.蛍
7.世界分之一人
8.秘密
9.珈琲
10.相思相逢
全曲作詞:松川ケイスケ/作曲・編曲:LACCO TOWER

薄紅:フジテレビ系TVアニメ『ドラゴンボール超』
エンディング主題歌(2016年1〜3月)

秘密:『劇場版 新・ミナミの帝王』主題歌(今冬公開予定)

■配信情報
アルバムリード楽曲「未来前夜」先行配信中
iTunes Store
※アルバム予約注文も可能

レコチョク

■ライブ情報
『LACCO TOWER 「心臓文庫」リリースツアー“心造旅行”』
7月18日(月・祝) 恵比寿LIQUIDROOM《ワンマン》
9月9日(金) 神戸 太陽と虎 【GUEST】??/??
9月10日(土) 岡山CRAZYMAMA 2nd Room 【GUEST】??/??
9月11日(日) 広島CAVE-BE 【GUEST】??/??
9月17日(土) 仙台CLUB JUNK BOX 【GUEST】??
9月22日(木・祝) 札幌BESSIE HALL 【GUEST】??
9月25日(日) 福岡Queblick 【GUEST】??
10月8日(土) 名古屋APOLLO BASE 【GUEST】??
10月14日(金) 京都MUSE 【GUEST】??
10月16日(日) 新潟CLUB RIVERST 【GUEST】??
10月22日(土) 高崎clubFLEEZ 【GUEST】??
10月28日(金) 大阪ROCKTOWN 【GUEST】??
11月12日(土) 品川ステラボール 《ファイナルワンマン》

FC先行受付(抽選):6月8日(水)12:00~6月19日(日)23:59
※7月18日(月・祝)恵比寿LIQUIDROOM以外の全ての公演が対象。
LACCO TOWER OFFICIAL SITE

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