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『赤い闇』監督、現代社会に向けてメッセージ 「最後の頼みの綱は正直なジャーナリスト」

リアルサウンド

20/8/14(金) 17:00

 8月14日に公開を迎えた映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』のアグニェシュカ・ホランド監督が、コロナ禍における現代社会に向けたメッセージを寄せた。

 本作は、秘密主義の独裁国家に潜入した実在のイギリス人ジャーナリストの闘いを描いたサスペンスドラマ。1933年、ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズが、スターリンが統治するソビエト連邦の繁栄の謎を解くために単身モスクワを訪れ、想像を絶する現実を目の当たりにしていく。

 主人公ガレス・ジョーンズを演じたのは、TV『グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース』やNHKでも放送されたBBC制作ドラマ『戦争と平和』で主演を務めたジェームズ・ノートン。そして、ニューヨーク・タイムズのモスクワ支局に勤める女性記者エイダを『ザ・クラウン』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のヴァネッサ・カービー、ニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長ウォルター・デュランティを『ニュースの天才』『フライトプラン』のピーター・サースガードが演じた。

 ホランド監督は、海外の映画業界における新型コロナウイルスの影響について、「配給会社や出資者たちは多くの金額を損失しており、さらなる悪化を恐れています。この状況下での勝者はVODプラットフォームとテレビのプロダクションですね。でもインデペンデント映画にとっては、この先半年や1年は確実に厳しい状況となるでしょうし、この経験のあと、興行が良い方へ向かうのかどうかは誰にも分りません」と話す。

 また、映画の撮影については、「いくつかのプロダクションは再開しました。コロナや衛生的な制限の中、当然コストは多くかかってきますし、お互いに感染させないような制作クルーの集め方のように考えなければならないこともたくさんあります。どうやって役者同士が触れ合うシーンや、エキストラを多く集めたシーンを撮っていくのか、すべてとても複雑で技術的に難しい問題です」と現状の課題を指摘。ホランド監督はヨーロッパ映画監督連盟の名誉会長であり、ヨーロッパ・フィルム・アカデミーやポーランド監督協会、全米監督協会にも所属しており、様々な人たちと話し合い、何ができなくて、何ができることなのかを見つけ出そうとしていると言う。「そして当然、高いバジェットのプロダクションを今始めることはあまりにリスキーすぎますね。保険会社はコロナに関するリスクのカバーはできません。私たちは、未来が不確かな未知の現実の中に生きているのです。そしてこのことは経済や映画のストラテジーにも確実に影響を与えています」と語った。

 ホランド監督は対して、情報が溢れかえり、フェイクニュースが横行する社会に対しても言及。「どんな些細なものであっても真実を見つけ出すというのは極めて難しいことです。だから私はより控えめな表現、『事実(ファクト)』という表現を使っています。事実というのは、あなたが見て、確認したことです。それ以外のことには意見が問われますが、事実に関しては、そのこと自体にフィジカルな面が存在します。つまり客観的な部分が存在し、それをチェックすることができる。だから私は、特にこの、インターネットやSNSでどういうわけか誰でもジャーナリストになれて、情報を発信することができ、ニュースをコントロールできないような時代には、事実(ファクト)を調査するジャーナリズムが重要になるのと思うです。これはジャーナリズムのほかのどの側面よりも大切なことだと私は考えています」と語った。

 また、現在の日本の政権の「公⽂書の改ざん」「破棄」「開⽰された⽂書のほとんどが⿊塗り」など数々の問題、そしてトランプ大統領下のアメリカの現状、イギリスのEU離脱など、世界各地で起きている分断状況に、1930年代のジャーナリズムと今日のジャーナリズムはとても似た状況に直面していると続ける。

「政府というのは正直なジャーナリストの前ではとても謙虚でなければいけないと私は思っています。今、政治家たちにとって、ジャーナリストを自分たちの計略に従わせることはとても魅力的なものです。私たちは社会で起きている分断と同じことがメディアでも起きていることに気づくでしょう。中立立場にあろうとするメディアと、政治的、観念的なイデオロギーには屈せず、より客観的な方法で全体をとらえようと試みているメディア。後者は経済的にひどい状況にいるものです。誰も彼らに資金を払いたいとは思いませんから。誰もがメディアを買収しようとしますし、時にはその買収が金銭ではないことだってあります。(劇中のニューヨーク・タイムズの記者である)エイダやデュランティがスターリンの考えを信じていたように、観念的なことです。彼らのジャーナリズムはスターリンの思惑に沿ってしまっており、客観的な真実ではありませんでした。正直なジャーナリストというのは民主主義をコントロールする最後の頼みの綱です。だからこそ重要な存在であり、同時にそうあることが難しいのです。例えば、いまのアメリカの社会的、政治的状況をみてみると、FOXニュースとCNNが全く異なるようにひとつの現実を伝えていることに気づくはずです。もしメディアが一つの視点だけだったら、視聴者はそこからどうやって自分自身の考えに行きつけるというのでしょう?」

 上記のように、メディアと権力の関係性についても自身の意見を述べた。

■公開情報
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』
新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほかにて公開中
監督:アグニェシュカ・ホランド
脚本:アンドレア・チャルーパ
出演:ジェームズ・ノートン、 ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガード
配給:ハピネット
配給協力:ギグリーボックス
(c)FILM PRODUKCJA – PARKHURST – KINOROB – JONES BOY FILM – KRAKOW FESTIVAL OFFICE – STUDIO PRODUKCYJNE ORKA – KINO SWIAT – SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE
Photo by Robert Palka (c)2019 Film Produkcja All rights reserved
Alexander Janetzko

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