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SHE’S「Letter」“あつまれ どうぶつの森”CMソング起用で再注目 時代性ともリンクした優しい響き

リアルサウンド

20/3/29(日) 10:00

 昨年10月にデジタルシングルとしてリリースしたSHE’Sの「Letter」が、今、ファン以外のリスナーにも急速に響きはじめている。きっかけは2月28日に公開された任天堂「あつまれ どうぶつの森 × Nintendo Switch Lite」2020春CMに同曲が起用されたことだろう。

(関連:SHE’S「Letter」インタビュー メンバーが考える“いい曲”の条件とサウンドへのこだわり

 CMのストーリーは高校生4人が生活する中で、「Nintendo Switch Lite」を用いて「あつまれ どうぶつの森」を遊んでいる様子が軸にある。それぞれ美術部で絵を描くことに打ち込んでいたり、陸上部でトレーニングに励んでいたり、受験勉強なのだろうか、英語を熱心に学ぶ子もいれば、家業の花屋の仕事を手伝っている子もいる。友達でありつつ、打ち込んでいることや環境はバラバラだ。その4人をつなぐコミュニケーションツールとして、「あつまれ どうぶつの森」で遊んでいる日常は忙しい同世代の女の子たちの心情にスルッとハマるものなのだろう。加えて、リアルの世界でも走り去る自転車に乗る友達を見かけたり、ニアミスをしながらもなかなか一緒に遊ぶことはできない。

 全体的に春霞を思わせるような淡いトーンが青春の儚さと眩しさを素直に届けてくれる映像で、そのムードに音数の少ない「Letter」は心情的にマッチする。必要以上にポジティブで元気な曲調では感じられない、本当は友達と過ごしたい気持ちを心に持ちながら、夜、疲れて帰宅してからお互いを励ますように「あつまれ どうぶつの森」を介してエールを送り合う4人。特にピアノのイントロからすぐに井上竜馬の〈おかえり もう1人の僕〉という声が入ってきた時の柔らかな聴感には文字通りホッとする。CMのストーリーと細部にこだわった演出が見事にマッチしているのだ。

 CMの登場人物に感情移入しながら、徐々に楽曲に引き込まれるピークはやはりサビ。〈僕らは大切な人から順番に傷つけてしまっては 後悔を重ねていく〉――どんな些細なことでも、何か心に引っかかっていることや、ごめんねの一言が言えなかった後悔など、高校生に限らず、あらゆる人が抱える思いだろう。そして続く〈それでも立ち籠める 霧の道を進んでいく あなたを照らせるほどの 優しさを探している〉というパートで、後悔を重ねながらも勇気や思いやりを持って前に進もうとする姿勢が歌われている。ちょうど卒業シーズンや3学期の終わり、これから新しい生活が始まる人たちの背中も優しく押してくれるような共感性の高いメッセージが込められているのだ。

 ティーンエイジャーに向けた青春真っ只中の映像に合わせるにしては、非常にシンプルで穏やかな楽曲である「Letter」。だがむしろそれがリスナーにとっていい温度感なのだろう。このCMの公開とともに各種ストリーミングサービスでもトップソングに躍進しており、TwitterなどSNS上ではストレートに「いい曲!」というコメントや、どこか寂寞感が流れ込んでくる、メロディに懐かしさがある、CMが流れるたびに泣きそうになるといった感想が続々とアップ。このCMで初めてSHE’Sに出会ったリスナーも相当数いるようだ。

 同曲リリース時のインタビューで井上は「「しんどいなぁ」と思った夜を越えるための歌、みたいになったら嬉しいですね。(中略)自分を顧みるのは大事なんですけど、でも肯定してあげられる要素があると前に進みやすい」と語っていた。まさに少しずつ大人になっていく世代の悩みや葛藤をそっと救う楽曲であり、先が見えない今の状況の中、卒業式が行えなかった中高生、そして不安を抱えながら毎日を過ごしている幅広い層にも響く静かな強さがこの曲にはあるのだろう。

 心が救われるようなバラードやミディアムナンバーを得意とするSHE’S。「Letter」に惹かれた人は「Tonight」や「Ghost」(『プルーストと花束』収録)、「Remember Me」、「Home」(アルバム『Wandering』収録)といったピアノバラード、エレクトロニックとの融合が美しい「Clock」(アルバム『Now&Then』収録)なども一聴の価値あり。それらの曲が救いの響きとともに静かに心を温めてくれることだろう。また、パワフルなバンドサウンドでも、ダンスチューンでも、湧き上がるメロディの良さで、様々なアレンジのレパートリーを自然と受け入れることができると思う。5月13日には「Letter」も含む待望の4thアルバム『Tragicomedy』をリリース。CMをきっかけにSHE’Sの音楽に出会った人はアルバムスケールで、彼らの聴き手にさりげなく寄り添う音楽を堪能してみてほしい。(石角友香)

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