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BTS(防弾少年団)はアメリカでどう評価されている? K-POP全体にもたらす影響を考える

リアルサウンド

18/11/2(金) 8:00

■BTSはアメリカ国内でどう認識されている?

 4万人規模のニューヨーク・シティフィールドでの公演を含むアメリカ国内での『BTS WORLD TOUR ‘LOVE YOURSELF’』15公演、ヨーロッパでの7公演を終え、11月からは日本でのドームツアーが始まるBTS(防弾少年団)。彼らがミニアルバム『花様年華pt.2』で初めてアメリカのビルボード本チャートにランクインしてから3年が経過しようとしている。その間には、『Billboard Music Awards』(BMA)でのソーシャルメディアアワードを経て、ビルボード200ではおよそ1年の間に2枚のアルバム(『LOVE YOURSELF 轉 ’Tear’』『LOVE YOURSELF 結 ’Answer’』)が1位を獲得、4万人規模のスタジアムライブを行うほどのファンドムをアメリカ国内に形成するに至った。ニューヨークの国連本部にて9月24日(現地時間)に行われたスピーチは、ABCやCNNなどのメディアでも紹介された。このように着実にアメリカでも知名度を高め、注目を集めるBTSは今現在、アメリカ国内でどのような存在として認識されているのだろうか。

(関連:BTS(防弾少年団)、ファン=ARMYはなぜ団結力が強い? アイドルとの“適度な距離感”を考える

 実際の公演に参加したレポート記事におけるアメリカのオーディエンスの声を読む限りでは、「K-POPの人気男子グループ」ということを超えてアメリカにおいても「人気のboy band」であるという認識がされているようである。次世代リーダーとして表紙になったTIME誌の記事でも「One DirectionやThe Beatlesのようなときめくルックスと耳に残るコーラス、New Kids On The Blockや*NSYNCのようなダンスがミックスしたマニアを誘う存在」とアイドル的人気を誇った過去のグループと並んで紹介されていた。

 つまり、アメリカにおける彼らのリスナー=ファン自体は日本や東南アジアなどの他の海外のファンと本質的には変わりなく、日本のファンと同じようにBTSが好きということではないだろうか。YouTubeやSNSが発達した現代においては新しいコンテンツが広がっていくとき、まず最初に元からはまっているマニア層、ここで言えば“K-POPファン”の中で人気が出て、そこで形成されたコア・ファンドム層が発信する情報がさらにK-POPを聞いたこともなかったような一般層・一般的なメディアに広がって行くーーというのがメジャーな経路ではないだろうか。

 人が多く集まっているところに情報が集まり、さらに情報が集まっているところに人が集まるという相乗効果が現代ではヒットの定石の一つとも言える。以前の記事でも書いたが、BTSはデビュー当時よりアメリカ国内でのショーケースやK-POPコンベンション『KCON』にほぼ毎年ライブ参加しており、アメリカ国内のK-POPファンの間では注目度が高くある程度のファンドムが形成されていた。特に熱狂的で有名だった韓国内のARMYのアティチュードをそのまま引き継いでいる最初のアメリカ国内のファンドムが、今のファンドム拡大の基盤の一端にもなっている。この点でBTSは「韓国スタイルの熱烈なアイドルファン活動をアメリカにもたらした」とも言える。

■なぜBTSのみがアメリカで成功できたのか?

 「BTSのみがなぜアメリカで成功できたのか?」という点については、K-POPに限らず「男子アイドルファンドム」というものの特性を考慮しなくてはならない。楽曲的アプローチやパフォーマンス、歌詞の共感性などがよく取り上げられるが、これらの点においてBTSが特別に韓国の他のグループと大きく違う点はないと思われる。唯一違う点は、彼らが最初にアメリカメジャーシーンで注目を受けたのは、楽曲やパフォーマンスそのものではなくファンによる投票で決まるソーシャルのアワードだったということだ。これまで「MIC Drop」のリミックスや『LOVE YOURSELF 轉 “Tear”』収録曲「The Truth Untold」、10月25日にリリースされた「Waste It On Me」と、BTSと度々コラボレーションをしてきた世界的DJ、スティーブ・アオキはRolling Stoneのインタビュー(http://rollingstonejapan.com/articles/detail/28889/3/1/1)で「ストリーミングが出現したおかげで今のファンは大きな影響力を持つようになった。だからこそBTSがセンセーショナルな現象となったんだ。つまり、ファンが彼らを現象にしたってこと」と述べていた。この「ファンの没入度」という点においてARMYの強さは他のK-POPファンドムの中でも特に目立っており、アメリカでも基本的にそれは変わらないようだ。

■BTSがアメリカ人リスナーを揺さぶる要素

 20年以上の歴史があるアメリカのK-POPコミュニティ・Soompiのマネージャーによると、K-POPの、特にMVは視覚的な要素が強く、込められたテーマによってアメリカのリスナーはアメリカの音楽からは感じにくい種類の自分の内面に向かって行くような経験を味わうという。「アメリカでのK-POPは自己発見のプロセスとなるため、その点でファンはかなり興奮してしまう。ユーザーが最初にお気に入りの曲を1曲見つけると、その後は勝手に深く掘り下げるようになる。アメリカ人アーティストたちからは得られないようなモチベーションとファン同士の交流が存在する」と語っている(参照:http://rollingstonejapan.com/articles/detail/28889/3/1/1)。この点においては日本でも同様の経験をする人は少なくないと思うが、韓国とは比較的近いカルチャーを持つ日本ですら新鮮な体験が、全く異なる欧米リスナーに与えるであろうインパクトは想像して余りある。この「内面に向かう経験」「勝手に深く掘り下げる」「モチベーションとファン同士の交友」という点において、BTSがアメリカ人リスナーを特に強く揺さぶる「何か」があるのは確かだろう。

 まず考えられることが、芸能人として「見せる面」と「見せない面」のバランスが絶妙であることだ。例えば、SNSなどでのメディア戦略については多く指摘されるところである。SNSでファンとの交流は「見せる」が、グループアカウントにすることでBTSの外にある個々のプライベートには極力「見せない」。YouTubeやV LIVEなどで練習室や寮、ツアー中の様子など「仕事中の姿は見せる」が、アメリカのセレブのようにパパラッチされるようなプライベートは「見せない」。歌詞でメンバーの心情は「見せる」が、CDのクレジットでは活動楽曲のメインクリエイターが誰かということは「見せない」(韓国の音源プラットフォームには記載されている)。

 さらに、韓国のアイドルが寄付をすることは珍しくはないが、BTSの場合は寄付先がUNICEFであることで海外のファンにもアピールしやすい。国連スピーチや軽度の社会的スタンス表明によって、その辺りが気になる層も充足して消費できるようなキャラクターづけもされている。(韓国のアイドルが政治的スタンスを表明することに関してはまた別の複雑な問題はあるが)コンセプトが本人達の成長譚とシンクロしていることで、メンバー達が素直な心情や行動を見せたりその結果非難を受けることがあっても、その「傷」が逆にシンパシーを呼びファンがよりのめり込むというように、背後にいる事務所の「大人」が見えないようにする術に長けている印象だ。

 歌詞の面では韓国語ネイティブである韓国内とそれ以外の国では正反対とも言える評価の部分もあり、ある種の言語的バイアスが働いていること、アメリカの若者の間でエモラップと呼ばれるネガティブなことを隠さない内面的なリリックのラップが人気というタイミングもプラスに働いていそうだ。パフォーマンスや楽曲の良さはもちろん、若者の間で人気のあるYouTuberのような親しみやすさもあり、共感できるメッセージや歌詞を語りかけてくれるように思える。ビルボードのK-POPライターであるジェフ・ベンジャミン氏がアジアのアイドルによく見られる「神秘主義」はアメリカではウケにくいと言っていたが、神秘主義ではないが生々しすぎる姿は見せないというバランスが丁度良いのではないか。

■BTSのアメリカ人気がK-POP全体にポジティブな展開もたらす?

 また、彼らは人気グループにしては個人活動が少なく(ソロ作品も常に無料配信で、数字が出るような有料でリリースされたことはない)、あくまでもグループでの活動を優先しているように見える。台湾のジャニーズファンについての研究書『台湾ジャニーズファン研究』(陳怡禎著)によると、ジャニーズファンの間では純粋な関係性の単位としてグループが最優先されており、グループの仲の良さが応援へのモチベーションに大きく関係することすらあると述べている。さらにメンバーの関係性を通じて自分たちもある種の友情にも似たファン同士のコミュニティを作ることそのものがファン活動であり、それがリアルの人生とファン活動を結びつける部分にもなりうるという。どこかの男子グループファンドムに直接身を置く人であれば、これはそのまま世界中の「男子アイドルグループ」にも適用できる感情だと共感できるのではないだろうか。Netflixの『Explained:K-POP』でアメリカのBTSファンが「彼らの仲のいいところが好き。一番仲が良く見える」と言っていたことからも、BTSの「仲の良さ」は世界的な人気やファンによる拡散の原動力において多くの割合を占めるのではないかと思わせる。

 アメリカへの異文化の流入という点でブリティッシュ・インベイジョンと比較されがちなBTSであるが、実際のファンコミュニティを見るとむしろ日本のゲームやアニメのアメリカのファンコミュニティに近い受容のされ方をしているようにも感じられる。アメリカ国内ではThe Beatlesのファンには白人が多かったが、BTSのファンにはさまざまな人種がいるからだ。ウェブの発達により人種間のカルチャーギャップは以前より緩和されつつあるが、やはり音楽ジャンルに置いてはファンドム間の人種の偏りは存在するようで、それはNewsweekが「Black K-POP fan in BTS」という記事をあえて書いたことからも伺える。BTSがアメリカではサイレント・マイノリティと呼ばれていたアジア系であること、白人でも黒人でもないある意味で2次元のように(リアルではあるが)今まではリアリティのあるイメージが持たれにくい存在だったことが、逆に様々な人種からの支持を得やすいプラスポイントになったという部分もあるのではないか。

 アジア人キャストを起用し、今年大ヒットした映画『クレイジー・リッチ!』の観客もアジア系ばかりではなかった。彼らのルックスがアメリカ的マッチョイズムの価値観からは遠いということも驚きをもって指摘されることではあるが、韓国のアイドルの細身でカラフルな髪の色で中性的というイメージは、2次元の世界においてはすでに美的価値として世界中で受け入れられている。アニメーションや漫画はすでに世界中の若者の間ではレアカルチャーではなく「アジアのカルチャーオタクかどうか・アジア人が好きな癖があるかどうか」ということとは関係なく目にしているものであり、潜在的な美的価値観の多様化があったとしても不思議ではない。ただ、それを具現化してくれる3次元の存在が今までのアメリカのカルチャーからは出てこなかったということではないだろうか。

 BTSがアメリカ国内で「人気アイドルグループ」と認識されてくると同時に、K-POPだという特異性がなくなってきたことで逆に音楽的なメディアでは取り上げられることは少なくなってきた。韓国ファンドムにおいて一般的なこととして行われている(良いこととはされていないが)スミンやVPN配布(ストリーミングサービスを用いたファンによるチャート操作)がBuzzFeedで記事として取り上げられ、“zombie streaming”と揶揄され始めたり、ある種の誤解やバイアスにもなりつつある。また、「BTSが好きなだけでK-POPやアジアンカルチャーに興味があるわけではない」という日本のファンドムでも散見される事象もすでに見られている。BTSがアメリカでも人気アイドルグループだと認識されるようになってきたことでアメリカにおけるK-POPやアジアンカルチャー自体にもさらにポジティブな展開があるのか、今後の流れが気になるところである。(DJ泡沫)

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