Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

ぴあ

いま、最高の一本に出会える

KAMIJO×國分功一郎が語るX JAPANの功績 ヴィジュアル系の「自由」と「品格」とは?

リアルサウンド

14/3/31(月) 8:00

20140330-kamijo.jpgX JAPANの曲が流れたラジオ番組について語り合うなど、大いに意気投合したKAMIJOと國分功一郎。

 ヴィジュアル系アーティストKAMIJOと哲学者國分功一郎の異色対談。前編【KAMIJO×國分功一郎の異色対談 ヴィジュアル系はいかにして海外で支持を広げてきたか】に続く後編では、両者がともに尊敬するアーティストとして名を挙げるX JAPANの功績に関して意見を交わしたほか、KAMIJOの作曲術、創作スタンスについても話が及んだ。(編集部)

「X JAPANは“向こう”が作ったルールに乗らなかった」(國分)

國分:海外進出については、X JAPANの話を非常に重要な例として考えたいんです。僕はX JAPANが大好きなんですけど、以前読んだYOSHIKIのインタビューで面白かったのが、海外レーベルと交渉していたらレーベル側から「お前たちは激しい曲をやりたいのか、バラードでやりたいのかどっちなんだ?」と聞かれたというんですね。アメリカの市場は激しいものと静かなものが棲み分けられていて、レーベルとしてもそれらを分けたいらしい。でも、X JAPANにしてみれば、「両方あるのがXだから、それをやりたいのに…」ということになりますよね。ファンとしても同じ気持ちです。

「向こう」が作ったルールで認めてもらうことを望むミュージシャンだったらここでレーベルの要求を飲んでしまうんでしょうが、YOSHIKIはそうじゃなかった。当時のX JAPANというバンドの事情もあったとはいえ、無理に「向こう」が作ったルールに乗るのはやめて、結局その時点での海外進出を断念した。すごく勇気のいる決断だったと思うんですけど、それが結果的には良かった。その後、海外のファンが逆にX JAPANを発見していくことになり、アメリカでもヨーロッパでもツアーを行うようになった。自分たちのやりたいことを曲げて海外進出しても何の意味もない。そういった姿勢はKAMIJOさんたちのなさってきた活動にも共通していますよね。

KAMIJO:僕たちは日本で流通されている作品をそのまま海外でリリースしています。Versaillesが始まったばかりの頃もドイツのメーカーからオファーがありまして、僕たちの原盤をそのまま使ってくれと言いました。今の日本のレコード会社もそうですけど、本当に自由ですね。やりたいようにやっています。

國分:僕はそれが本当に素晴らしいと思うんです。「こうしなければならない」「こうしなければ認めてもらえない」という束縛がない。本当に自由。

KAMIJO:今回のソロでもワーナーから「Symphony of The Vampire」という30分の曲をリリースさせていただける時点で…(笑)。

國分:まさしく(笑)。KAMIJOさんの新譜は30分のストーリー仕立てですからね。X JAPANにも30分に及ぶ超大作「ART OF LIFE」があるじゃないですか。YOSHIKIがインタビューで、TV出演とかラジオ・オンエアー向けに短い曲が望まれていた雰囲気に抗うようにしてあの曲を作ったという主旨のことを言ってました(参考:BARKS)。もちろんそれだけが理由じゃないんでしょうけど。

KAMIJO:「ART OF LIFE」がはじめて解禁になったラジオって覚えてます?

國分:もちろん覚えてます!

KAMIJO:リフが入ってフェードアウトしていくんですよね(笑)。

國分:たしかそのラジオ、YOSHIKIは出なかったんですよね。あのたった一回だけのラジオ番組の話ができるとはうれしいですね(笑)。KAMIJOさんもやはりX JAPANを先輩としてリペクトされてるんですか。

KAMIJO:もちろんです。日本のロックミュージシャンでX JAPANさんの事を尊敬していない人はいないはずです。今回の作品では第一楽章「Presto」の歌詞の中に「青い血」という言葉があります。X JAPANさん(リリース時は「X」表記)には「BLUE BLOOD」というアルバムがあるじゃないですか。僕はこの言葉をいつか使いたくて、だけど先輩が使ってらっしゃる言葉だし…使いたいけど使えないとずっと迷っていたんです。今回ルイ17世をテーマにした作品を作るにあたって「青い血」って貴族の血であったり、由緒正しい血っていう意味があるので、どうしても必要だったんですよね。それで使わせていただいたんです。

國分:KAMIJOさんにとってX JAPANがとても大切な大先輩だということが分かるエピソードですね。他に意識している先輩バンドだと何があるんでしょう?

KAMIJO:やっぱり僕にとってのヴィジュアル系の頂点にいるのはX JAPANさんですし、僕の直接の先輩にあたるのはMALICE MIZERさんです。その流れといいますか、貴族的な「品格」というんですかね? そういったものは先輩方を見習って、人としてもちゃんとしていたいなと思っています。

20140330-kamijo2.jpgKAMIJOの作曲術について、國分が矢継ぎ早に質問を投げかけた。

「僕はヴァイオリンのようなボーカリストになりたい」(KAMIJO)

國分:ところで、KAMIJOさんは基本的に作曲は何でやっているんですか? すごく気になるんですけど…。

KAMIJO:鼻歌です。そのあとは基本は鍵盤ですね。歩いている時にメロディが浮かんで、それを録音しておいて、鍵盤とDTMで作っていきます。

國分:KAMIJOさんの楽曲ではストリングスなどのオーケストラの音が非常に重要な位置を占めてますけど、オケはシンセじゃなくてミュージシャンに注文しているんですか?

KAMIJO:全部作り込んだモノをミュージシャンに演奏してもらっています。それでヴァイオリン、ヴィオラ、チェロも生で。今回のストリングスチームは日本でもトップレベルですから。

國分:KAMIJOさんの楽曲ではやはりストリングスが重要なんですね。

KAMIJO:僕はヴァイオリンのようなボーカリストになりたいんですよ。ヴァイオリンの音のようになだらかに歌うボーカリストに。そういった意味でも常にストリングスと僕の協奏曲のような気持ちでやっています。

國分:それはおもしろいですね。つまり、メタルサウンドが中心にあるけれど、ストリングスと自分のボーカルの協奏曲的な部分があると。

KAMIJO:基本僕のメロディに対してオブリを入れるのは第一ヴァイオリン。それに対してサウンドの…土台となるのはたしかにメタルサウンドですけど、やっぱり僕とストリングスというのが2トップですね。

國分:ストリングスとKAMIJOさんのボーカルがツートップというのはとてもよく分かります。他方で、メタルではどういうバンドが好きだったんですか?

KAMIJO:変な話、僕がメタルという言葉を出すのもメタラーの方に対しておこがましいというか…。ただ、メタルの音っていうのは、すごく整頓されている音なんですよ。ギターもドラムもすごく整頓されているので。すごくオーケストレーションとの相性がいいんですね。

國分:なるほど、それはすごい面白い。両極端のように思えるけれど、実はメタルのサウンドは整頓されているからオーケストラの音と相性がいい、と。確かにメタルではリズムが厳密です。ちょっと抽象的な話になってしまいますけど、その他に楽曲制作で大切にしていることってありますか? ポリシーというか…。

KAMIJO:今はバンドであったりどんな音楽でも、すべてそうだと思うんですけど、「芸術」という捉え方はなかなかされなくなってきていると感じています。けれども僕はそれを作り続けたい。

國分:「芸術」という言葉にKAMIJOさんが込めている意味や想いをもう少し説明するとどうなりますか?

KAMIJO:その場を楽しめればいいエンターテイメントになりがちというか。その場その場を楽しめることも、もちろん大切だと思うんです。だけど、これもさっきの言葉と同じ言葉になってしまいますが「品格」が大事なんですよね。それを言い換えれば「芸術性」ということになるのかもしれません。

國分:やはり残ること、残って聞かれ続けていくこと、それかもしれないですね。時間が経っても聴けるものであること。

KAMIJO:僕の音楽が時間が経って色褪せないか? というと、それはまだわからないです。でも、200年後とかに聴いていただけように音楽を作り続けたいと思います。たとえば、今回の作品のテーマにしていた「ルイ17世の心臓」も200年の時を越えてDNA鑑定されているんですよ。

國分:200年っていうスパンを相手にするのは本当にすばらしいですね。僕の本も200年後も読まれて欲しい(笑)。何をするにしても、200年、300年の単位で考えていきたいですね。

(取材・文=藤谷千明/撮影=逸見隆明)

アプリで読む