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乃木坂46 白石麻衣、作詞曲「じゃあね。」MVに残されたラストメッセージ 歌詞と映像から卒業への思いを読み解く

リアルサウンド

20/3/13(金) 6:00

 乃木坂46 白石麻衣のソロ曲「じゃあね。」のMVが公開された。

(関連:乃木坂46白石麻衣、ソロ曲「じゃあね。」MV

 「じゃあね。」は白石自身が作詞を担当した最後のソロ曲。坂道グループにおいて、秋元康以外で作詞を担当したのは白石が初めてである。白石は2018年7月に出演した『another sky-アナザースカイ-』(日本テレビ系)にて「私、今、作詞がしたくて。音楽ができる立場に立ってるから、何かメッセージが伝えられるものを作れたらいいなと思っています」と話していたが、その夢が見事実を結んだのが「じゃあね。」である。

 MVを手がけたのは白石がセンターを務める「立ち直り中」や西野七瀬のラストソロ曲「つづく」のディレクションを担当した湯浅弘章。MV公開に合わせて、湯浅はTwitterで「『とある乃木坂ファンの少女の8年間と白石麻衣の休日の1日』という構成」「歌詞の内容や意図を白石さんから聞いて映像化」と明かしており、東京サマーランドで明るくはしゃぐ白石と、過去のライブ映像やメイキングを対比させることによって歌詞に込められた白石のラストメッセージがより印象的に浮き上がってくる。

 白石は2017年、25歳を迎えた辺りから卒業について考えていたというが、その思いが表れているのが

〈坂道の途中で迷ってた 時に訪れたさよなら “いつかは”と思ったって 口には出せなくって〉
〈いつもふざけ合ったあの部屋 気づけば隣にいてくれてた あなたが変えてくれたの〉

 という歌詞だ。深川麻衣、橋本奈々未、生駒里奈、若月佑美、西野七瀬、衛藤美彩、桜井玲香の卒業コンサートが映し出される中で、白石はいつも隣で1期生の同期を送り出してきた。そんな白石もついに送り出される側に。

〈さよならとありがと。〉
〈さよならをありがとう。〉

 最初と最後のサビ終わりにはそれぞれこのフレーズが歌われているが、前者はこれまでの卒業生への気持ちを、後者は送り出される側となった心情を、出逢いの地である乃木坂で涙ながらに歌っている。「と」「を」、「ありがと。」「ありがとう。」の少しの違いで、真逆の立場を表現するという初の作詞としては見事なテクニックだ。

〈あの夏の歌声 覚えていますか? 土砂降りでもいいよ またいつか…なんてね〉
〈せめてまだあと少しだけは あの花火が上がるまでは あの歌を歌うまでは〉

 この歌詞では乃木坂46にとって夏の風物詩となっている『真夏の全国ツアー』が歌われており、本編ラストで打ち上がる花火、明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場の2会場間で開催された2018年の「シンクロニシティライブ」が思い出される。「ガールズルール」で威勢良く会場を煽っていた白石の姿が、今年の夏にはもういない。

〈手を取り輪になって 目を閉じた 隣で感じていた鼓動が こんなにも近くって こんなにも遠いなんて〉

 この歌詞が表すのは、2年連続での大賞受賞となった2018年『日本レコード大賞』(TBS系)での円陣の様子。この詳しい背景は2019年公開になった映画『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』で描かれており、リハーサルで行われた振付師・Seishiroとの円陣は、ドキュメンタリーの山場の一つである。異空間とも言える張り詰めた緊張感の中で、白石は「シンクロニシティ」で先頭に立ち大賞を受賞した。円陣で隣にいたSeishiro、松村沙友理の存在はもちろん、大賞発表の瞬間に西野七瀬と抱き合った光景が目に浮かぶ。

 乃木坂46結成から8年間の軌跡と次第に大きくなっていったグループの重み、ライブでのファンの存在、そしてかけがえのないメンバーへの思いを歌った「じゃあね。」は、“乃木坂46愛”に満ちた白石の心情が伝わってくる楽曲だ。

 同時にMVを観て印象的だったのが、乃木坂46ファンの少女の8年間も一緒に描かれていたこと。監督の湯浅は、先月ナゴヤドームで開催された『乃木坂46 8th YEAR BIRTHDAY LIVE』(以下、バスラ)3日目のオープニング映像を手がけており、そこにも乃木坂46のライブを心待ちにする少女がナゴヤドームに足を運ぶ様子が描かれていた。伝わってくるのは乃木坂46、そして白石が多くの人の憧れであり、夢になっていたということ。実際に3期生の梅澤美波は、白石に憧れて乃木坂46のオーディションを受けたメンバー。乃木坂46の中でも先陣を切ってモデルとして活躍し女性ファンの支持を得た白石は、アイドルの新たな領域を広げた人物でもある。白石が卒業をした後にも、彼女がアイドルとして蒔いた種は続いていくだろう。

 また、一時Twitterのトレンドに入るほど話題となっていたのは、白石とすれ違った少女が口にする「テレビの中の人だ」という言葉だ。これは「立ち直り中」MVのラストシーンで橋本奈々未がつぶやくセリフ。「立ち直り中」は、紡績工場で働く女性たちの姿が描かれており、芸能活動を夢見る白石と、悲しい過去を持つ橋本が幸せを求めてそれぞれの道へ旅立つ作品。「テレビの中の人になりたい」と夢見ていた白石が未来では芸能界で活躍し、母親として子供の手を引き歩く橋本が白石と再会した際に「テレビの中の人だ」と声をかける。『バスラ』では、橋本のソロ曲「ないものねだり」をかつて“御三家”と言われた白石、松村の2人で歌い、「7(なな)」「3(み)」とハンドサインを送った。湯浅監督の心意気と口にはせずとも“ズッ友”として思い続ける白石の心情が垣間見える。

 白石は少女のその言葉に振り返り、「じゃあね。」と手を振る。その場所は乃木坂。当時、卒業を控えた深川麻衣が「ハルジオンが咲く頃」で、同じく伊藤万理華が「はじまりか、」で坂を登り、それぞれが自分のフィールドで輝きを放っている。白石のさよならの時はもう少し先。彼女もまた、新たな坂を登り始めようとしている。(渡辺彰浩)

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