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indigo la Endが追求し体現する理想の音楽 最新作『夜行秘密』プラネタリウム配信ライブレポ

リアルサウンド

21/2/22(月) 18:00

 優れたソングライターのもと、自律したミュージシャン同士が音楽をやるために集まり、シーンの動向やトレンドと距離を取りながら、自らの表現を追求する。この日の配信ライブでindigo la Endは、バンドとしての在るべき姿を理想的な形で示した。

 indigo la Endが2月16日、プラネタリウムから生配信ライブ「『夜行秘密』リリース記念 Special Streaming Live at Planetarium 」を開催した。演奏されたのは、翌日(2月17日)にリリースを控えた最新アルバム『夜行秘密』に収録された6曲。ライブはYouTubeのほか、VRアプリ「VR SQUARE」でも生配信。プラネタリウムならではの演出を楽しむことができた。

 ライブはアルバム『夜行秘密』の1曲目に収録「夜行」からスタート。まずは佐藤栄太郎(Dr)、後鳥亮介(Ba)がなめらかなグルーヴを描き出し、印象的な“キメ”のフレーズから楽曲のイントロが始まる。音源とは異なるアレンジから、川谷絵音(Vo/Gt)がハンドマイクで切ないファルセットを交えたボーカルを響かせ、一瞬にしてindigo la Endの音楽世界に没入させられる。淡い青の光を放っていたプラネタリウムの映像は、〈行かないで 行かないで/夜行で駆け落ちたいよ〉というフレーズと同時に満天の星空に変化。楽曲の憂いを増幅させる演出も印象的だった。

 まるでフリージャズのようなセッションに導かれた「左恋」では、肉体的なファンクネスを備えたバンドサウンド、解放的なサビのメロディが交差し、早くも心地よいカタルシスに導かれる。漂うクラゲや爆発する惑星を交えた映像、楽曲が進むにつれて高揚感を増すリズムセクション、歌と絡み合いながら緊張感を高めていく長田カーティス(Gt)のギターフレーズが一つになり、まさに配信ライブならではのシーンへと結びつけた。

 続く「夜光虫」では川谷がアコギを弾き、オーガニックな音像が出現。AOR、ギターロック、ジャズなどを絶妙なバランスで融合させ、独創的でありながらどこかに郷愁を感じるようなアンサンブルに結びつける。メンバー4人とサポートコーラス2人(佐々木みお、えつこ)は円形に並んでいるのだが、お互いに目を合わせるわけでもなく、フラットなテンションで演奏を続ける。緻密に構築されたアレンジと、生演奏ならではの“揺れ”が同時に感じられるのもきわめて魅力的。〈打ちかけだった/文字が踊る様見てた〉という歌詞にリンクするように、〈轟かず〉〈願えぬ心〉〈憎しみ〉〈消せない想い〉などの文字がスクリーンのなかで降ってくる演出も素晴らしい。

 曲が始まると同時に大きな月が出現した「フラれてみたんだよ」では、川谷が紡ぎ出す歌詞の魅力をじっくりと味わうことができた。indigo la Endの楽曲を通し、人と人との繊細な関係性、揺れ動く感情を詩的に描いてきた川谷。この曲では、これまでの作詞のスタイルを維持しながら、〈フラれてみたんだよ〉という言葉が耳に飛び込んできた瞬間のインパクトを加えることで、ポップスとしての強さを高めることに成功している。奥深いストリングスの音色を交えたアレンジも絶品。生音の豊かさをたっぷり体感できたことも、このライブのポイントだったと思う。

 そして、個人的に最も強い衝撃を受けたのは、「晩生」だった。長田のフィードバックギターが響いた瞬間にステージは赤い光に染まり、彗星が次々と流れていく。サウンドの基調は、90年代のシューゲイザーやオルタナ。川谷のSG、長田のレスポールがメロディアスな轟音を鳴らすと、佐藤、後鳥によるリズムセクションも即座に共鳴し、圧倒的な高揚感を生み出す。〈どうして僕じゃ/どうして私じゃ/あなたじゃなかった?〉と叫ぶように歌う川谷のボーカルにも心を打たれた。

 「6枚目のアルバム『夜行秘密』を明日(2月17日)リリースすることになりました」「大事なアルバムになりました。結成10周年とかに関係なく、僕らがやりたい音楽をやり続けた結果が、今回のアルバムになっていると思います。アルバムが長く愛されることを願って、最後に曲をやりたいと思います」と川谷が語った後、ラストの「夜の恋は」へ。プラネタリウム内のドームには、東京の夜景が広がり、〈好きにならずにいたかった あなたを知らずにいたかった〉という美しいコーラスとともに数多くの花火がスクリーンに映し出される。切なさと興奮が入り混じる、indigo la Endらしいエンディングだった。

 終演後に配信されたインタビューで川谷は、「やりたいこととポップスというものの、自分たちが許せる範囲のいい作品が出来た」とコメント。ギターロック、R&B、AORといった幅広い音楽性を吸収しながら、生楽器の響き、生演奏ならではのサウンドを追い求めてきたindigo la Endは、結成10周年を経て、新たな傑作『夜行秘密』に辿り着いた。ロマンティックな演出を施した今回の配信ライブで彼らは、そのことをはっきりと証明したのだと思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

indigo la End 『夜行秘密』リリース記念 Special Streaming Live at Planetarium
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【indigo la End New Album『夜行秘密』リリース記念 Special Streaming Live at Planetarium 】

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