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JABBA DA FOOTBALL CLUB『国道9号線』インタビュー ヒプマイ楽曲提供やソロ活動を経て突破した“自分像”

リアルサウンド

20/3/27(金) 17:00

 『ヒプノシスマイク』(以下、ヒプマイ)への提供楽曲「School Of IKB」がiTunesチャート総合1位・オリコンウィークリーチャート1位を獲得、メンバーのROVINとアバンティーズ・そらちぃとの2MCユニット「ROVIN × Buddy」も大きな話題となった4人組ラップグループ・JABBA DA FOOTBALL CLUBが、2ndシングル『国道9号線』をリリースした。

 リーダーNOLOVの地元を走る国道の名をそのままタイトルに掲げたこの曲は、ストリングスセクションと女性コーラスをフィーチャーした壮大な広がりを持つドラムンベースチューン。抜け出せない閉塞感や、現状に燻る焦燥感を抱えつつも、それらを打破し「想像のさらに先の自分」を目指そうと訴えかける力強いメッセージソングに仕上がっている。

 今回リアルサウンドでは、メンバー全員へのインタビューを企画。新曲の制作エピソードはもちろん、ヒプマイ提供曲の反響や、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が続く中、どのような思いを抱えて日々を過ごしているかなど、率直に語ってもらった。(黒田隆憲) 

勝手に想像している「自分像」にとらわれていた

ーー新曲「国道9号線」のタイトルは、どこから来ているのですか?

NOLOV:もともとは「国道」というタイトルだったんですよ。9号線というのは僕の地元、島根を通ってるんですけど……出身どちらっすか?

ーーいきなり逆質問ですか?(笑)。僕は埼玉です。

NOLOV:何号線ですか?

ーーよく使っていたのは16号線かな。

ROVIN:ですよね? 僕は千葉なんで一緒です。

ROVIN

NOLOV:なんか、多分それぞれの国道ってあると思うんですよ。東京に住んでいたら、多くの人は国道246号っていうだろうし。僕は、このメンバーの中で一番田舎に住んでいて、僕にとっての国道は9号線なので「じゃあもう、ずばり言っちゃえ」みたいな。

ーーレペゼン的な意味も含めて。いつ頃から作り始めたんですか?

NOLOV:去年の5月くらいには出来ていました。前作シングル『新世界』を作り終えた後に、「夏の曲が欲しいな」という話になったのですが、その頃ちょうどめっちゃ食らってて。人生ドン底というか、こんなの初めてっていうくらい落ち込んでたんですよね。

ーー何があったんですか?

NOLOV:友達が死んで、じいちゃんも死にかけてて、彼女にもフラれて……っていう(笑)。自分を形成していたものが、ボコボコとなくなっていくような感じだったんですよね。しかも『新世界』のリリースが控えていて、メジャーデビューも決まって色々とナイーブになっていたし。それで、母ちゃんのボックスの軽自動車に乗って国道9号線を走りながら、バオちゃん(BAOBAB MC)が作ったオケを流しながらサビのリリックをずっと考えてたんですけど、その時に思ったんです。「メジャーデビューということは、この島根のド田舎まで自分たちの曲が流れるんだな」って。東京で暮らしているうちに、そういう感覚が分からなくなってたんですよね。

 しかも、周りの目ばかり気にしてたなと。「俺ってダサくないかな」「自分たちの曲はイケてるのか?」みたいな。でも、そもそも自分たちが音楽を始めたのは、そんなことを気にするためじゃなかった。しかも、自分が思っているほど周りの人たちは自分に注目してるわけじゃない。結局、自分が勝手に想像している「自分像」にとらわれているわけなんですよね。

NOLOV

ーー「周りからこう見られているのでは?」という自分像ですね。

NOLOV:そうなんです。例えばバオちゃんは、こういう体型だから(笑)、子供の頃とか「将来は相撲取り?」みたいなことを言われたと思うんだよ。

BAOBAB MC:めっちゃ言われてた(笑)。

NOLOV:そうやって言われ続けることで、自分でも暗示をかけてしまってそれ以外の自分を想像できなくなってしまう。〈夜の国道をぶっ飛ばして 想像の僕の先へ行こうよ〉というラインは、そんな「想像上の自分」から解放されようぜ? ってことを歌いたかったんです。17歳の時の自分は閉じた環境の中にしかいなかったから、それが分からなかった。27歳になった今、「世界はもっとバカ広いし、何にだってなれるんじゃね?」と思うんですよ。バオちゃんが今からモデルを目指したって全然構わないじゃないですか。

ーーなるほど。〈想像の僕〉というのは、〈理想の自分〉という意味なのかと僕は思いました。「理想の自分の、さらに先を目指そう」みたいな。

NOLOV:そういう意味で取ってもらっても全然いいです。というのも、「理想の自分」って、意外とハマってないことも多い気がしていて。自分で思い込んでいる「いい部分」と、周りの人たちが思っている「いい部分」は違うことってあると思うんですよ。「俺、お笑い目指してるんで」って思ってる奴が、全然おもんないこともあるし(笑)。「それよりお前には向いてることあるんちゃう?」って。いずれにせよ、自分で勝手に規定してしまったイメージから解放されようぜ?ということが言いたかったんです。

ーートラックはどんなところにこだわったんですか?

BAOBAB MC:まず、NOLOVからもらったアイデアをベースにざっくりとトラックを作って、それを彼に渡してラップを乗せてもらってから、さらにブラッシュアップしていくという感じでした。今回、「ストリングスを入れたい」って言ってたよね?

BAOBAB MC

NOLOV:そう。ストリングが鳴っている後ろで壮大な女性コーラスが広がるような、エモーショナルででっかいトラックにしたかった。だったらビートはドラムンベースだな、みたいな感じで作っていきました。そこからみんなで手分けしてリリックを乗せていったんです。

BAOBAB MC:結構、ぶっ飛んだアイデアを出してくるんですよ(笑)。ストリングスとか今まで考えたことなかったし、バイオリンだと思って打ち込んだ音色がヴィオラだったりもしたんですけど。

NOLOV:そうそう(笑)。

BAOBAB MC:「この音域はヴァイオリンじゃなくてヴィオラだよ?」「音域……?」みたいな(笑)。そうやって、トラックを作りながら色々学んでいる感じなんですよね。

ーーBAOBAB MCさんの作るトラックは、これまでもヒップホップ以外の要素がたくさん入っていますよね。特にロックからのインスピレーションは大きいのではないかと。

BAOBAB MC:そうなんです。もともと僕はバンドでギターをやっていたし、X JAPANのHIDEさんがめちゃくちゃ好きだったんですよ。他にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやTHE MAD CAPSULE MARKETS……そういう音楽を幼少期にめちゃくちゃ聴いていました。バンドでも、ギターだけじゃなくてMPCを叩いたりするような、すごく変な音楽をやっていた。そうのうちDJもやるようになり、「トラックを作るの楽しそうだな」って。そんな時にNOLOVと出会ってJABBAを始めることになったんです。なので放っておくとすぐギターを入れちゃうんですよ(笑)。曲を作る時も鍵盤じゃなくてギターから作ることの方が多いし、ヒプマイの曲でもギターを入れたし。

ーーなるほど。コードの響きが印象的な、切ない曲が多いのもそこから来ているのかもしれないですね。

BAOBAB MC:嬉しいです。コードの響きや広がり感は自分でも大切にしていますね。今回の曲も、広大な場所で4人が並んでいる風景をイメージしながら作っていきました。

ーーちなみに、今お話に出たヒプマイでは、イケブクロ・ディビジョンBuster Bros!!!の山田二郎(cv.石谷春貴)に、「School of IKB」という楽曲を提供しましたよね。どうでしたか?

ASHTRAY

ASHTRAY:自分以外の人が歌う曲を作るのはやったことがなかったで、すごく楽しかったですし、たくさんの反響をいただけたのは嬉しかったです。ホッとしましたね。「あの曲だけダメじゃね?」って言われたらどうしようかな……と思ってたので(笑)。

BAOBAB MC:それまでの山田二郎くんの楽曲は、ゴリゴリのヒップホップ だったので、それとは真逆の曲を作るのはチャレンジングでしたね。曲調としては自分の得意分野なので、できた曲自体には満足していたけど、それがヒプマイのファンに受け入れられるかどうかがちょっと不安でした。なので、聴いてくれた人たちから「ありがとう」って言われたときは嬉しかったです。

ーーファン層が広がった感触はありました?

NOLOV:そんな感じはします。特にASHTRAYは「次郎くんに似てる」って。確かに言われてみるとそうかも……?って感じなんですよね。本人もまんざらでもない様子だし(笑)。

自分たちでしか出てこないフレーズを、独りよがりじゃなく表現できている

ーー(笑)。話を「国道9号」に戻します。NOLOVさん以外の3人は、どのようにリリックを作っていったのでしょうか。

ROVIN:さっきも言ったように、千葉出身の僕にとって「国道」といえば16号線なので、前の仕事でもよく使っていた16号線のことを思い浮かべながら(リリックを)考えました。結構、いろんな思い出が詰まっているんですよ。僕は中学生の頃からずっと音楽が好きで、音楽で生きていけたらいいなと思っていたんだけど、そう簡単にはうまくいかない。どうしたらいいのかもよく分からず、「なんでこんなことやってるんだろう」と思いながら、好きな音楽を聴いて車で移動してたんです。そんな燻った時代のことを書こうと思ったら、今の気持ちとそんなに変わってないことに気づいたんです(笑)。確かに、念願どおりデビューも出来て、思い描いた自分よりもさらに先へは行けたけど、そこにはまた「さらに先」が見えていて。

ーー〈何回括りゃいいんだ この腹 時間とか不安とか もうキリねぇし〉というラインは、そういう思いから生まれたのですね。

ROVIN:そうなんです。あと、テクニカルな意味で今回かなり難しいラップに挑戦していますね。リズムの取り方、発音の仕方など誰にも真似できないと思う。「俺にはこれがあるから、ここにいられるんだぞ?」という意味も込めてチャレンジしました。

NOLOV:実際にやってみると分かるんだけど、「よくこんな音の隙間にその言葉入れてるよな」と思うくらいムズイんですよ。太鼓の達人だったら「鬼コース」(笑)。〈ライフイズワンダホー〉や、〈きっと ずっとこんな調子?〉のところとかヤバイ気持ち良さがある。

ASHTRAY:その流れで言うと、俺のラップは至って「普通」ですね……(笑)。

NOLOV:謙遜すんなよ、バシっと言ってやれよ!(笑)

(一同笑)

ASHTRAY:この曲に限らず、俺は結構「起承転結」がちゃんとあるリリックが好きで。〈俺って言う名のパズル どれだけ経ったら完成する?〉というラインでは、自分の中にある「閉塞感」みたいなものを表しつつ、最後の“雨の後はきっと晴れだな”というラインまでどう持っていくか? を考えながら作っていきました。その展開は今回、結構うまくいったと思っていますね。

 「国道」に関しては、俺は東京の板橋出身だし車も持ってないので、夜中に国道をぶっ飛ばすこともなかったんですよ。でも、今話したようなモヤッとした「閉塞感」はありましたね。それを“狭い街の空”というところで書いたつもりです。それが俺にとっての「国道」というか。

ーー高いビルが建ち並ぶ、東京の狭い空に閉塞感を投影したと。

ASHTRAY:そうなんです。そんな場所でも、もしかしたら微かに地平線が見えるかもしれないという希望を最後の8小節で表しているんですよね。

BAOBAB MC:僕もASHTRAYと一緒で、板橋の隣の練馬出身なので国道とか馴染みねえし、そもそも免許がねえなと(笑)。で、今の状況や自分の中にある「閉塞感」ってなんだろう? と考えたら、「昨日の方が今日より楽しい」と思ってしまう時じゃないかなと。そこから〈そりゃそうだ振り返りゃ昨日は楽しい じゃ今日はどうだった ってちょっと怪しい〉というラインが出てきたんです。

 「昨日は楽しかったな」と思うのって、その時に頑張っていたからだと思うんですよ。それに対して、今は頑張っている最中だから「苦しい」と感じてしまう。そのことに気づいて、そこからリリックを膨らましていきました。〈団地街チャリで飛ばしてたら外は真っ暗〉というところで、自分なりの「国道」を表現したつもりです。

NOLOV:今回、みんなのラップが文句つけようがないくらいカッコよく仕上がったなと思います。結構、俺はダメ出しするほうなんですよ。「お前、これじゃ意味わかんねえよ」「伝わんねえよ」とか。でも今回は、今までの曲の中でもダントツでかっこいいと思った。〈俺って言う名のパズル〉なんてフレーズ出てきます? 俺ムリっすよ、こんなフレーズをカッコよくラップできるのASHTRAYしかいない。ROVINの〈ライフイズワンダホー〉も最高だし。自分たちでしか出てこないフレーズを、独りよがりじゃなく表現できているからめちゃくちゃ満足していますね。

『国道9号線』- JABBA DA FOOTBALL CLUB

ーーカップリング曲「めでたし めでたし」は、『君の街まで』というツアーのために作った曲だそうですね?

NOLOV:自分たちがインディーズの頃は、音源をリリースするといつも「色んなところ回りたいから各オーガナイザーさん連絡ください」みたいなことを自分たちで発信してたんですけど、メジャーになるとなかなかそういう小回りが効かなくなるんですよね。メジャーだと呼びづらいというか、「お金かかるでしょ?」って思われるみたいで。だったら公募型にして、「連絡くれればどこでも行きますよ」という企画にしちゃえばいいなと。そうしたら、いろんなところから連絡があった。せっかくツアーを回るなら、この感謝の気持ちを楽曲にして、それを持って行きたいと思ったんです。

 僕ら6年目に入るけど、基本的に各地方のオーガナイザーさんに呼ばれ、色んなところでライブができたからここまで来られたと思っているんです。本当、音楽やってなかったら札幌にも熊本にも行ってないよなと。自分だけの小さなコミュニティで満足してたら、全国のお客さん、オーガナイザーさんたちと出会ってない。そんなことを思いながら、バオちゃんと家で制作していたら、〈すれ違う 偶然繋いだ MUSIC〉という最初のフックがすぐ浮かびました。

JABBA DA FOOTBALL CLUB「めでたし めでたし」

ーー聴く側からすると、自分の友人関係のことを当てはめたくなりますね。いっときはとても仲が良かったのに、些細なことで疎遠になって。でもまた、生きていれば何かのきっかけで仲良くなるかも知れない。そんな希望を持たせてくれる楽曲だなと。

NOLOV:ありがとうございます。そんなふうに受け取ってもらえたらすごく嬉しいです。確かにありますよね。「なんか、こいつ話が合わなくなってきたな」と思っても、何年かして「めっちゃウマが合うわ、やっぱり」って思うこととか。僕は以前マイ・ケミカル・ロマンスやグリーン・デイみたいなパンクが好きで、一時期は「あんな音楽だせえ」とか思っちゃっていた時期もあって(笑)、でもまた最近好きになったんです。そうやってJABBAの曲こと、嫌いになってドープなヒップホップに入っていく人もいるだろうし、でもまたいつか「やっぱJABBAかっこいいよね」って戻ってきてくれるかもしれない。俺らはずっとここでやっているから、いつでも戻ってきてくれていいよ? っていう。

 ちなみにこの曲は、ライブではずっとアコースティックセットでやったんですよ。アコギで作った曲なので、俺はカホンを練習して、バオちゃんがギターを弾いて椅子に座って4人並んで。お客さんもすげえ喜んでくれましたね。「あの曲、めっちゃいいですね」ってたくさん言ってもらいました。

ーー今、世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大変なことになっていますが、最後に今後の展望を聞かせてもらえますか?

NOLOV:このあいだ、コロナのせいで仕事が1週間くらいポコッと空いた時にマジやばいなと思いましたね。「暇すぎるんだけど」と思った時に、仕事のありがたさをすげえ感じました。ただ……こればっかりは仕方ないですよね。正直、実態も分からないし。そういう意味では3.11の時の方がまだ分かりやすかった。目に見えて状況が伝わってきたけど、ウイルスは目に見えないし深刻さもはっきりとは分からない。ちゃんと環境が整っていないと音楽はできないことを思い知らされました。まあ、家でも音楽は聴けるし、漫画も読めるし、動画も観れるけど、フィジカルなことが制限されるのってめっちゃフラストレーション溜まりますよね。とにかく、今は健康第一でいるしかないのかな。

 今後の展望としては、各々の活動も充実させたいです。この間もROVIN × Buddyをやったように、そもそも俺らバンドじゃないんだから、どんどんソロやったらよくね? と思うんですよ。JABBAの音楽の骨子は俺とバオちゃんで作っているわけで、それぞれ他にもやりたいことがあるに決まっているし。そう思ったら別々のところで活躍してきて、JABBAに戻ってそのエッセンスを集結させればいいやって。そうやって、常にパワーアップしたJABBAを見せられるようにしていきたいですね。

■リリース情報
JABBA DA FOOTBALL CLUB 『国道9号線』
2020年3月18日(水)発売

初回生産限定盤
¥1,800+税(CD+DVD)

通常盤
¥1,200+税(CD only)

<CD収録内容>
1. 国道9号線
2. めでたし めでたし
3. Have a Good Time Remix feat. ASHTRAY, NOLOV

<DVD収録内容>
特典映像「バオちゃん、この後なんて言う?」

JABBA DA FOOTBALL CLUB各種リンク
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