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『HARE NOVA Vol.07』ライブレポート 「バンドはナマモノ。オーディションがすべてじゃない」

リアルサウンド

15/3/30(月) 18:53

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 会社設立40周年を迎えるソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)が、2014年の春から夏にかけて行ったライブオーディションシリーズ「HARE NOVA」。22組のニューカマーがライブに出演し、そのうち大阪を拠点に活動するガールズロックバンドの絶景クジラが、SMA主催の日比谷野外大音楽堂でのイベントにオープニングアクトとして出演した。

 そして「HARE NOVA」シーズン2となるライブが、2015年2月24日(火)に東京・渋谷club asiaで開催された。この「HARE NOVA シーズン2」は1月27日(火)にも開催されており、2回のマンスリーステージにて選出された出演者は、3月に行われるSMAのプレゼンテーションライブにファイナリストとしても出演する予定だ。
HARE NOVA オフィシャルHP:https://sma40th.com/harenova/

 今回も前回までに続き、イベントにゲストウォッチャーとしても参加した音楽ジャーナリストの宇野維正氏によるライブレポートを掲載する。(編集部)

■出演アーティスト
ハザマ リツシ
The Rolly
真田 嶺
イエスマン
とけた電球
片平里菜(ゲストアクト)
※出演順

■MC
トミタ栞(シンガー)
冨永周平(ソニー・ミュージックアーティスツ「HARE NOVA」制作チーフ)

■ゲストウォッチャー
原田公一(ソニー・ミュージックアーティスツ)
中山道彦(ソニー・ミュージックアーティスツ)
杉本陽里子(ビクターエンタテインメント)
日置淳(ポニーキャニオン)
宇野維正(音楽ジャーナリスト)

ハザマ リツシ

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 18歳で奄美大島から上京、「寸止海峡」というド直球のロックンロールバンドでボーカルを担当していたハザマリツシ。2013年にバンドが解散して以降は、ソロのシンガーソングライターとして活動している。もっとも、この日のステージは自作(?)トラックにのせてMCをするという意表をついたスタイル。能年玲奈への溢れる想いをひたすら連呼し続ける「能年玲奈」はオーディエンスを困惑に陥れる問題作。最後は本来(?)のギター弾き語りのスタイルで、故郷の友人へのセンチメンタルでエモーショナルな思いを綴った「ゲストリスト」を熱唱して締めくくった。

■ゲストウォッチャーコメント
中山道彦「人間は好き。いいヤツだなって。もし同じ世代だったら一緒にバイトをしたい(笑)。肝心の音楽では半径数メートルのリアリティと共感を表現していると思うんだけど、実はそれってすごく難しいことなんです。リスナーから共感を得ようと思ったら、その共感の先まで歌わなくてはいけない。頑張ってください」
宇野維正「普通の人とは違うハッとさせられるような視点がもうちょっと欲しい。あと、トラックものをやるなら、歌がもっと前面に出てくるような効果的なトラックの作り方をする必要があると思います」

The Rolly

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 幼なじみ&兄弟による4ピースバンド、The Rolly。メンバーのうち2人が20歳、残り2人が19歳、結成からもまだ2年に満たない若いバンドだが、それでいながら古典ロックのツボを押さえたかのような骨太なソングライティングと堂々たるステージ上の佇まいが印象的。歌声そのものは野太いのに高音まで綺麗に伸びていく織裳陵平のボーカルも、ミディアム主体の楽曲群に見事にマッチしている。高速化/複雑化が止まらない今の日本のロックシーンにおいて、彼らのようなバンドが台頭することがあったらおもしろいことになるのでは?

■ゲストウォッチャーコメント
原田公一「結成から間もないということもあって、バンドとしての一体感がまだ物足りなかった。でも、ドラムとベースは兄弟だし、これから鉄壁のリズム隊になるかもしれませんね。場数を踏んでいけば、いいバンドになっていく予感がします」
杉本陽里子「ステージに上がってきた瞬間にすごく華と色気があって、まだ19歳と20歳と聞いてとても驚きました。バンドの骨組は完成されていると思うので、あとはもっとギター2本のアンサンブルや音色などを探求していってほしいですね」

真田嶺

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 函館出身、22才の男性シンガーソングライター。学生時代には留学先のスウェーデンでも音楽活動をしていたという。ソロ活動と並行してバンドでも活動しているとのことだが、今回のソロでのパフォーマンスは途中自身で手元のサンプラーなども駆使しながらのプロフェッショナル的で洗練されたもの。楽曲はどれも非常にメロディアスで完成度が高く、即戦力的なオーラを放っていた。声、メロディ、歌詞とすべての耳当たりが良いのが長所である一方、初見のオーディエンスに訴えかける個性という点では何かプラスアルファが必要だとも感じさせられた。

■ゲストウォッチャーコメント
日置淳「声のトップ(高音)の部分がすごく気持ちいいので、自分の声のキーにより合った曲というのがわかってくると、もっと曲の魅力が伝わりやすくなるんじゃないかなって思いました」
杉本陽里子「非常にメジャー感がある、包み込むような声の持ち主で、最初から引き込まれました。ただ、ちょっとスタンダードすぎるというか、引っかかりが少ない気もするので、もっと思い切って自分の持ち味を出してみたらいいと思います」

イエスマン

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 ボーカル&ベースのsayoko NAGAMUUとドラムのたかきひでのり、そこにサポートのキーボードが加わったギターレスの3ピースポップバンド、イエスマン。結成からまだ2年。途中、前任のキーボードが脱退して半年以上活動を停止していて、今の3人になってからはまだ3ヶ月余りというのが信じられないほど完成された独自の世界を持っている。ポップソングのフォーマットに縛られない予測不可能な楽曲構成と、そこに自由に漂う個性豊かなNAGAMUUのボーカル。ゲストウォッチャーともタメ口でやり取りする強烈なのに愛らしいキャラクターと合わせて、スターの片鱗をうかがわせた。

■ゲストウォッチャーコメント
中山道彦「NAGAMUUさんの圧倒的な存在感と、それを支えるドラムとキーボード。まだ結成から短いのにこれだけ確固とした世界観ができているのは本当にすごい。奇跡的な出会いだと思うので、その奇跡を大切にしてください。代表曲と呼べるような楽曲が生まれるのを楽しみにしてます」
日置淳「素晴らしいパフォーマンスでした。ボーカルの自由さに耳を奪われますが、実は手元のベースはものすごく丁寧に弾いていて、ドラムも押し引きやタメが非常に緻密に構成されていて、全体的に非常にスキルが高い。もっといろんな曲が聴いてみたいです」

とけた電球

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 都内を拠点に活動する4人組バンド。実はボーカル/ソングライターの岩瀬賢明はまだ高校生。一見シンプルでストレートなギターバンドのようでいて、とても10代とは思えないようなアダルトな空気を醸し出す非常に洗練された楽曲が持ち味。バンドのど真ん中に幹の太い楽曲があって、それを大事に育て上げるように各パートが寄り添っていて、とても真面目に音楽に取り組んでいる様子が伺える。あとは、パフォーマンスの場でいかにオーディエンスを魅了していくのかというのが課題だろう。

■ゲストウォッチャーコメント
原田公一「曲がすごくいい。全曲好きでした。楽器の音色面での工夫の余地だとか、曲のタイトルが素っ気なさすぎるとか、課題はたくさんあると思いますが、今後の成長がすごく楽しみです」
宇野維正「昔のオリジナル・ラブとか最近のバンドだとマルーン5とかを思わせる、実は今の日本にあまりいないタイプのバンドですよね。あとはその音楽性に合わせてもっと本人たちがチャラさを身につけるようになれば、よりバンドの色気が増すんじゃないでしょうか」

150330_hn_6.jpg片平里菜

以上、音楽的に非常にバリエーション豊かだった5組の出演者に続いて、ゲストアクトとして片平里菜が豪華メンバーを揃えた貴重なバンドセットで登場。1年前に福島から上京したばかり、当日の出演者ともほぼ同じ世代(実際にハザマリツシとは2011年の「閃光ライオット」で同じステージに立ち、それが彼女のデビューのきっかけとなった)ということもあって出演者たちへの親近感をステージ上で表しながらも、音楽シーンの最前線に立っているシンガーソングライターとして格の違いを見せつける素晴らしいパフォーマンスを披露。「デビューまであと一歩」のその「あと一歩」の大きさを感じさせるという意味でも、HARENOVAという場にしか生まれない特別な空気を生み出し、2015年のシーズン2を最高なかたちで締めくくってくれた。

原田公一「一番印象に残っているのは最後のとけた電球ですね。自分はいつもメロディを重視しているので、岩瀬くんの書くあのメロディはとても大きな収穫でした。あと、イエスマンも可能性に溢れたバンドでしたね」
杉本陽里子「いい出会いをたくさんいただいて感謝してます。また機会があったら是非また参加したいですね」
日置淳「これだけ『CDが売れない』と言われる時代でも、志の高いアーティストというのはたくさんいて、みんなCDを出したいと思っている。そういう若い才能が頑張っている姿を見れただけですごく光栄でした」
中山道彦「いつも思うんですけど、こういう場ってタイミングがすべてなんですよ。バンドにとってベストのタイミングというのもあるし、それを評価する側にとってもベストのタイミングというのがある。とけた電球は2年前から見てますけど、今日のステージを見て、この2年でものすごく成長していることに驚きました。本当にバンドってナマモノなんですよ。だから、バンドの皆さんに伝えたいのは、オーディションがすべてじゃないということです。いつでもチャンスがあるので頑張ってください」

(文=宇野維正/撮影=Ohagi)

■ライブ情報
「SMA 40th presents NEXT NEW LIVE SERIES HARE NOVA ハレノヴァ Vol.07」
2月24日(火)  東京・渋谷 clubasia (開場18:00 / 開演18:30)

「SMA 40th FINAL みんなとうた」
日時:4月1日(水)イベント広場 11:00~20:00 / 野外ステージ 12:00~19:00
場所:東京都 代々木公園 イベント広場/野外ステージ (雨天決行/荒天中止)
料金:無料
https://sma40th.com/minnatouta/

■原田公一:1977年より南佳孝のマネジメントを担当。その後、UNICORN、PUFFYほか、多くのアーティストに携わる。現・ソニー・ミュージックアーティスツ取締役。
UNICORN オフィシャルHP:http://www.unicorn.jp/
PUFFY オフィシャルHP:http://www.puffy.jp/

■中山道彦:株式会社ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役社長

■杉本陽里子:カラフルレコーズにてディレクターとして多くのロック系アーティストを担当

■日置 淳:当日のゲストアクトの片平里菜ほか、cinema staffなど担当

■宇野維正:音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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