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『ロケットマン』 (C)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

「自分で監督したかった!」製作者マシュー・ヴォーンが語る『ロケットマン』

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19/8/30(金) 18:00

『キック・アス』や『キングスマン』を監督したマシュー・ヴォーンが、エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケットマン』でプロデューサーを務めている。エルトン・ジョン本人から脚本を託されたヴォーンは「この脚本は絶対に映画にしないとダメだ! 自分が手がけなければならない!」と強く思ったという。

マシュー・ヴォーンと言えば数々のヒット作でメガホンをとる“監督”のイメージが強いが、実はプロデューサーのキャリアの方が長い。彼はガイ・リッチー監督の『ロック、ストック&トゥ・スモーキング・バレルズ』でプロデューサーを務め、自身が監督していない『X-MEN:フューチャー&パスト』でも製作陣に名を連ねている。

そんな彼がエルトン・ジョンに会ったのは自身が監督した『キングスマン:ゴールデン・サークル』の頃。あの映画でエルトンはあらゆる紳士たちをなぎ倒すほどの怪演を見せたが、そこで彼はヴォーンに長年に渡って温め続けている脚本を手渡した。それはエルトンと彼の夫でプロデューサーのデヴィッド・ファーニッシュが10年以上かけて脚本家と練ってきたものだ。「読んでみたらとても素晴らしい内容でした。もともと僕はエルトンの音楽が大好きだったので、この脚本は絶対に映画にしないとダメだ! 自分が手がけなければならない! という気持ちになりました」

そこで彼はプロジェクトへの参加を決めたが少しだけ残念なこともあったようだ。「自分で監督したい気持ちもあったのですが、他の作品も手がけていてスケジュール的に自分で監督するのは難しかった。ですから、この作品を通じて残念だったのは……自分で監督したかった! その一方でよかったことは、この作品を自分でプロデュースできたことです」

自分で演出もできるヴォーンが、本当は自分でメガホンをとりたかったプロジェクトを誰に託すのか? 彼はすぐさまデクスター・フレッチャー監督に声をかけた。本作で主演を務めたタロン・エガートンとタッグを組んで『イーグル・ジャンプ』を監督した才人だ。「デクスターはキャストと仕事をするのが本当に上手で、彼らの居心地をよくして最高のパフォーマンスを引き出す特別な能力を持っているんですよ。それに彼は人とコラボレーションするのが好きな人。彼は毎日、撮影現場にポジティブな気持ちと情熱をもたらしてくれる人です」

ちなみに撮影に際し、映画のモデルになっているエルトン・ジョン本人は作品に対して干渉したり、自分を美化して描くように要求することは一切なかったという。「彼はこの映画を作るにあたって、自分の良い時も悪い時も誤魔化さずにすべて描いてほしいと、何かを改変することは絶対にしないでくれと言ってくれました。ですから、この映画におけるエルトンの最大の貢献は“この生を生きてくれた”ことですね。彼が生き抜いてくれたから、この物語が僕たちのもとにやってきたわけですし、素晴らしい音楽もつくってくれました。そして何よりもこの物語を僕たちに綴らせてくれた……これも大きな貢献ですね」

映画で語られるエルトンの人生は決して順風満帆なものではない。幼少期に両親から愛されずに育った彼はいつも本当に自分を直視できずに、現実から遠く離れた華やかな場所や時間を求めて疾走する。結果的に彼はロック・スターになるが、彼の中の孤独や哀しみが消えることはない。ヴォーンは「王様であっても、ただ道を歩いている人であっても不安を感じたり、人とのつながりを感じたり、泣いたり笑ったりするのは同じ」という。

「エルトンと私たちもそうです。彼は自分のことを否定されたり、依存症になってしまう人生を歩んできましたが、私たちも人生の中で自分を受け入れられなかったり、愛を求めているけどその愛を手に入れられなかったり、不幸せな気持ちなってしまった経験をしていると思います。エルトンは驚異的な音楽の才能に恵まれた結果、独特のライフスタイルを築きましたけど、根底では彼も僕たちも普通の人間です。だから多くの人がこの映画に共感してくれたのだと思います」

ヴォーンが手がける作品は『キングスマン』にせよ、『キック・アス』にせよ、どれもトリッキーでド派手で情報が雪崩れのようにやってくるが、観ているといつしか共感したり、感動したりしてしまう作品ばかりだ。今回、彼はプロデュースにまわったが、彼の信念や物語に対する価値観は『ロケットマン』にもしっかりと息づいている。

『ロケットマン』
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