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森崎ウィンのパフォーマー論「森崎ウィンという鎧を着ているからできることもある」

ぴあ

森崎ウィン 撮影:友野雄

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自分らしく生きること。それは、とてもシンプルで、とても難しいこと。だけど、私たちがもっとハッピーに生きていくために、自分らしさは欠かせない。

そんな“自分らしく生きること”の大切さを、とびきりポップに、どこまでもキュートに教えてくれるのがミュージカル『ジェイミー』だ。

主人公は、16歳の高校生・ジェイミー。彼には、ドラァグクイーンになるという夢があった。その第一歩として、高校のプロムにドレス姿で参加しようと決意するが、その行く手には様々な偏見や迫害が待ち構えていた。

演劇の本場・イギリスで大ヒットしたミュージカルが日本初上陸。確かな実力とフレッシュさを兼ね備えたメンバーで華やかにお届けする。

そこで今回は、主人公・ジェイミー役を演じる森崎ウィン(※Wキャスト)にインタビュー。森崎ウィンの考える自分らしさとはなんだろうか。

ポジティブな光の裏にある影の部分を垣間見せられたら

――俳優としてドラマや映画に出て、アーティストとして歌ったり曲をつくったりして。多彩な活動をしている森崎さんにとって、ミュージカルはどういう位置付けですか?

映像も、音楽も、いつでもどこでもアクセスできるものがほとんど。記録として残っている限り、その瞬間の僕をいつでも確認できますよね。もちろんそれはその良さがあるんだけど、ミュージカルは1公演1公演がその場限り。その瞬間の僕はその瞬間でしか確認できない。すごく特別だし、今この瞬間に生きてるリアルな僕を覗き見できるものなんじゃないかなと思っています。

――ミュージカルは『ウエスト・サイド・ストーリー』以来。またやりたいという気持ちはありましたか?

ありました! ずっとやりたいなと思っていたので、お話が来たときは純粋にうれしかったですね。

――台本を読んで印象的だったのが、ジェイミーは決してただ夢にまっしぐらというわけではなく、落ち込んだり悩んだりするんですよね。そこがいいなと思いました。

リアルですよね。ジェイミーはいろんな葛藤を抱えていて、それを乗り越えたからこそポジティブになれた。僕自身もそうですけど、ずっとポジティブな人間は絶対いない。僕の演じるジェイミーから、ポジティブな光の裏にある影の部分もちゃんと垣間見ることができたら、より美しくなるんじゃないかなと思っています。

――ジェイミーがドラァグクイーンに憧れるのはなぜだと思いますか?

ジェイミーは壮絶な家庭環境で育って、住んでる場所もすごい田舎だし、未来が開けているのかどうかもわからない、自分の将来だって他人から決めつけられてしまうようなところで暮らしている。そういう中でたまったストレスを、ドラァグクイーンという大きな鎧をつけて誰かになりきることで発散できた。だから、ドラァグクイーンになりたいのかなと。

そういう意味では、僕がブルーノ・マーズに憧れるような感覚に近いのかもしれないなと思っています。ドラァグクイーンというものをきっとどこかで目にして、そこに行けば自分はもっと自由になれると思った。その瞬間、きっとジェイミーは大きな夢をもらったんじゃないかな。

――その感覚って、いわゆるパフォーマー全般に通じるものがあると思っていて。表に立つ人って、弱い自分を心の内側に隠していて。表に出るときはある種の鎧を着ているところがあるんじゃないかなって。

ああそうかも。なんかそれって面白いですよね。

――だから、これはパフォーマーの話でもあると僕は感じました。

そうそうそう! これってパフォーマーの話なんですよ。僕自身、森崎ウィンとして鎧を着ていることがないとは言いません。けど、嘘ついているわけではない、ということだけは伝えたくて。森崎ウィンという鎧を着ているからこそできることもたくさんありますし。

誰かになる、というよりは、自分の向き合いたくないものを一旦忘れる瞬間がこの仕事をしているときなのかなって。だって、こうやって喋っている間は、日常、例えば確定申告のこととか考えなくていいわけだから(笑)。それはやっぱり大きいですね。

リアルなウィンが経験したことを、ジェイミーに重ねたい

――ジェイミーの核となっているのが、父親との関係です。

形は違えど、家族の問題ってたぶん誰しもが抱えているもの。僕自身ももちろんあります。それは、ジェイミーと写し絵みたいにぴったりと重なるわけではないですけど。なんて言うんだろう。僕とジェイミー、それぞれ色の違う下敷きを重ねて出てくる色が、たぶん僕の演じるオリジナルのジェイミーになる。リアルなウィンが経験したことと、ジェイミーが経験したこと。重ねられる部分はきっとあるし、そこは重ねていきたいなって。

――親に認められたいという気持ちは、森崎さんにもありますか?

もちろんありますよ。この仕事を始めたときからずっと親は僕に対して「いつまでやるの?」という感覚があったと思うので。

――初めて親に認めてもらえたと思った瞬間は?

『レディ・プレイヤー1』に出たときです。

――わかりやすい(笑)。

ハリウッドは物を言いました(笑)。でもそりゃそうですよ。やっぱりわかんないんですもん、親は芸能界というものを間近で見ているわけではないので。

今でも覚えているんですけど、「ハリウッドの仕事が決まったよ」と言ったときに、母親が泣いてくれたんですよ。「やっと安心できるね。あんた、やっと出世したね」って。あの瞬間が初めて親が芸能人としての僕を認めてくれた瞬間だった気がします。

不要なプライドはあればあるほど成長を妨げる

――今回はベテランから若手まで揃ったバラエティ豊かなカンパニーですね。

ちょうど僕が中間なんですよ。先輩から学ぶこともあれば、後輩に対して教えなきゃいけないことも多いという環境ですね。

――そのポジションにいるときに考えることはなんですか。

何がいちばんいらないかってプライドだと思ったんですよ。たとえば、(同じジェイミー役の)髙橋颯くんは僕より年下だけど、歌稽古のときとか「できない。教えて」って普通に言ってるし。そこで、できないことを「なるほどね」とわかっている顔をしてやる先輩がいちばんダサいじゃないですか。そうなりたくないというのがあって。

逆に僕が颯くんに教えられることはちゃんと教えるし。年齢やキャリアに関係なく、みんなこの場では対等なんですよということは、現場にいる上で大事にしたいことですね。

――昔から年下に聞けるタイプでした?

昔はできなかったですね。最近です、年下を受け入れられるようになったのは。自分の器が小さくて、年下に対してすごい拒否反応があった時期もあるし。

――さっき言ってましたけど、プライドって年をとるごとにちょっとずつ不要になっていくんですよね。

そうなんですよ。もちろんアーティストとしてゼロから自分を発信するときに、これは譲れませんというプライドはずっとある。でも、そうじゃない、不要なプライドは年々減っていきますね。あればあるだけ自分の成長を妨げるなと思って。だって、ここでもっと怒られておけば、もしかして自分が聞いたことのないことを教えてもらえるかもしれない、と思うことってあるじゃないですか。だったら、怒られてでも「マジで教えてください!」と言える方がいいなって。

今はお尻を鍛えはじめています(笑)

――個人的には、ドラァグクイーンの衣装も楽しみです。

衣装合わせはこれからなので、僕も楽しみです。とりあえず稽古に入る前にやることとして、喉を鍛えるのと、筋トレをちょっとずつやりはじめています。

――筋トレは主にどこを?

足を鍛えはじめていますね。ヒールって結構足にくるんで。

――衣装によってはウィンくんの脚線美も楽しめるのかな、と思ったりしています。

脚はわからないですけど、トレーナーさんからはお尻をきゅっと上げるんだって言われています(笑)。意外と僕よりも『ジェイミー』について研究していて。ドラァグクイーンをやるならお尻を鍛えないとなって。とりあえず頑張って仕上げてみます(笑)。

――音楽はどうですか?

すごくキャッチーですね。現代劇らしくポップで万人受けしやすい。誰が聴いても拒否反応を起こしにくい曲じゃないかなと思います。

純粋に好きな曲ばかりだから、歌っていて楽しいですし。ここに前後の芝居がついていったら、楽曲がどう化けていくのか、どう成長していくのかが楽しみですね。

――歌稽古で歌ってみての感想はどうですか?

リズムのとり方が難しいんですよね。イギリスの方はグルーヴ感でリズムをとっているんですよ。でも、日本語にしたときに、ここで切ると言葉の意味がつながらないし伝わらないというところがあって。もらった譜面通りにやると難しいなというのが感想なので、たぶん本番のギリギリまで苦戦していくのかな、と。

この間歌稽古をやって、やっとみんなでひとつの正解が見えたんで、それをちゃんとできるように練習しつつ、僕自身の伝わるグルーヴというものをこれから探していけたらなと思います。

――改めてですが、森崎さんが感じる『ジェイミー』の魅力とは?

自分らしく生きるということを劇中では言っていますけど、すごく重みのある言葉だと思うんですね。この作品を観たからって明日から自分らしく生きられるかというとそうでもない。だけど、こういう人もいるんだったら、自分もちょっと考えてもいいのかな…と思えるぐらいの力はあると思っていて。すごく勇気をもらえる作品です。

――じゃあ、森崎さんにとっての自分らしさとは?

すぐ感情が顔に出ちゃうんですよね。いくつになっても変わらないので、それが自分らしさなのかなと(笑)。

自分はこう考えているけど、隣の先輩が違うことを言ってるから、それに寄せた方がいいのかなと思うときもあるけど。でもそうじゃなくて、自分は今こう感じています、ってちゃんと自分の考えを提示しようとするところも自分らしいなと思うし。

きっと自分らしさって、1日のいろんな瞬間に散りばめられているんじゃないかなと思います。

ミュージカル『ジェイミー』チケットの購入はこちらから
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2170554

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撮影/友野雄、取材・文/横川良明、衣装協力/JOHN SMEDLEY、TIMONE、UNDECORATED

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