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没後35年 源氏鶏太と大衆小説の愉しみ

20/3/17(火)

『藤十郎の恋』(3/21〜27) 神保町シアター 特集「源氏鶏太と大衆小説の愉しみ」(3/7〜4/3)で上映 松竹を退社、東宝に移籍した長谷川一夫(林長二郎)が、暴漢に顔を斬られたのは1937年のこと。そのとき撮影中だった『源九郎義経』は製作中止になり、翌38年製作の『藤十郎の恋』が移籍第一作になった。 本作はその17年後の1955年に作られた菊池寛原作の同名小説の再映画化作品。監督が山本嘉次郎から森一生に、脚本が三村伸太郎から依田義賢に、ヒロインのお梶が入江たか子から京マチ子に変わり、藤十郎には前回同様に長谷川一夫が扮している。 ライバルに人気を奪われた焦りから演技に行き詰まりを感じた藤十郎は、近松門左衛門に新作『大経師昔暦』を書いてもらう。同じ長谷川と香川京子の共演で溝口健二が監督したあの名作『近松物語』の、そもそもの原作だ。 しかし、藤十郎にはその芝居の濡れ事(おさんを口説く茂衛門)の演技の工夫がつかない。明日が幕開けという前夜、行き詰った藤十郎はお茶屋の人妻お梶に「昔から愛していた」と打ち明ける。藤十郎の突然の告白に動揺し、戸惑い、迷った末、お梶は藤十郎を受け入れる。彼女のその仕草をじっと観察していた藤十郎は、突然部屋を出て、「役に工夫がついた」と稽古を始める。 新狂言の初日、「藤十郎がある茶屋の女房を相手に役の案を得た」という噂を聞いたお梶は……。 藤十郎が演技のために偽りの愛を仕掛け、逡巡のすえに藤十郎を受け入れるまでのお梶の一連の「仕草」。密室での長谷川と京マチ子のふたり芝居が最高潮に達した瞬間だ。 見真似物真似の演技で観客を陶酔させるのは罪悪なのか。嘘が真実に転じることはないのか。 ならば演技とは何か? 模倣とは? 真実の愛とは? そんな問いかけから逃れられなくなる一作だ。

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