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2020年、私を支えたもの Vol.2 末満健一 / 杉原邦生 / 鈴木裕美 / 立石俊樹 / 多和田任益 / 中川晃教 / 中村壱太郎 / 七海ひろき / 野上絹代

ナタリー

21/2/22(月) 18:00

上段左から末満健一、杉原邦生、鈴木裕美、立石俊樹。下段左から多和田任益、中川晃教、中村壱太郎、七海ひろき、野上絹代。

1月30・31日に開催されたオンラインイベント「マツリー」にて先行公開したコラム企画「2020年、私を支えたもの」をお届け。同企画では、総勢26人の“舞台人”たちがそれぞれ、激動だった2020年に自身を“支えたもの”を紹介した。この連載では俳優、ダンサー、作家、演出家たちの日常を支えたさなざまなものを、3週にわたって掲載する。

Vol.1では8名が個性豊かな“サポーター”を紹介した。Vol.2には、末満健一、杉原邦生、鈴木裕美、立石俊樹、多和田任益、中川晃教、中村壱太郎、七海ひろき、野上絹代が登場。なお掲載は五十音順となっている。

末満健一

1年前には思いも寄らなかった世界。あらゆる業界が危急に立たされ、演劇界もその1つでした。幸いにも昨年は執筆仕事が中心だったこともあり、緊急事態宣言中もそのあともずっと忙しく、むしろコロナのせいでより多忙になったところもありました。立ちゆかぬ未来への不安に、目前の仕事に没頭することで対峙してきたように思えます。2020年、あなたはなにに支えられましたか──と尋ねられたとき、まっさきに浮かんだのが「演劇」という言葉。演劇が、演劇に纏わる人々が、僕の支えでした。これからも厳しい状況は続くでしょうが、演劇に支えられながら、そして演劇を支える一端として、2021年も仕事に没頭する日々を送りたいですね。

末満健一(スエミツケンイチ)

1976年、大阪府生まれ。脚本家・演出家・俳優。関西小劇場を中心に俳優として活動したあと、2002年に自身の脚本・演出作品を発表する場として、演劇ユニット・ピースピットを旗揚げ。2011年、脚本・演出を手がけたTAKE IT EASY!「千年女優」の再演以降、活動の場を東京にも広げる。2019年には、自身が手がけるライフワーク的作品・TRUMPシリーズが10周年を迎え、現在「ヤングエース」(KADOKAWA)にてコミカライズ連載中。1月から3月にかけて「舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」(脚本・演出)、4月から6月にかけて「舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」(脚本・演出)、夏には舞台「鬼滅の刃」新作公演(脚本・演出)が上演される。

杉原邦生

2020年に限ったことではないのですが、「茅ヶ崎の海」はいつも僕の大きな支え、と言うよりもっと根源的な、僕自身を形成している一大要素であるような気がします。ふと思い立って散歩したり、ランニングしたり、サイクリングしたり、コーラ飲んだり、海辺のカフェでケーキ食べたり、好きな音楽聴いたり、サザン歌ったり、考え事したり、ただただボーッとしたり、あの頃の自分を思い出したり、花火したり、波と戯れたり。2020年も幾度となく訪れ、そのたびにたくさんのエネルギーをもらいました。そしていつも、ここから新しい何かが始まっていったように思います。演出プランを考えつく場所ではないけれど、行き詰まったときにまっさらにしてくれる。そういうところです。

杉原邦生(スギハラクニオ)

1982年、東京都生まれ、神奈川県茅ヶ崎市育ち。演出家・舞台美術家。京都造形芸術大学 映像・舞台芸術学科在学中の2004年にプロデュース公演カンパニー・KUNIOを立ち上げ、これまでに「エンジェルス・イン・アメリカ」「ハムレット」、大学の恩師でもある太田省吾の名作を蘇らせた「更地」や「水の駅」などを上演。木ノ下歌舞伎に2006年から2017年まで参加し、「黒塚」「東海道四谷怪談―通し上演―」「三人吉三」など11演目を演出した。近年の演出作に「スーパー歌舞伎II『新版 オグリ』」(市川猿之助との共同演出)、「グリークス」トライストーン・エンタテイメント「少女仮面」シアターコクーン ライブ配信「プレイタイム」(梅田哲也との共同演出)、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「オレステスとピュラデス」など。2・3月にPARCO劇場オープニングシリーズ「藪原検校」の演出、4月にはCOCOON PRODUCTION 2021「シブヤデアイマショウ」のコーナー演出を手がける。2018年(平成29年度)第36回京都府文化賞奨励賞受賞。

鈴木裕美

家の中でモノを作ること。

演劇の現場が3本、中止や延期になってしまったので、とにかく衣食住に関する何もかもを、家にこもって、ひたすら作って、創作意欲を落ち着かせていました。

衣部門。リュックや浴衣や洋服。洋服は友達のものも。20点くらい作った。

食部門。タイ料理や低温調理器具を使った肉料理。定番昇格はタイの春雨とシーフードのサラダ、ヤムウンセンとヒレカツ。

住部門。シャンデリアやフライングリース、玄関に置くキャビネット。マスキングテープで壁紙の色を変える、などなど。おかげで今、家の中は、ちょっとどうかと思うほどデコラティブ。

鈴木裕美(スズキユミ)

演出家。1982年、日本女子大学在学中に自転車キンクリートを結成。自転車キンクリートSTOREを含むほとんどの公演に関わり、「OUT」「第17捕虜収容所」「法王庁の避妊法」「富士見町アパートメント」などを演出。現在は小劇場から大劇場、ストレートプレイ、ミュージカル、ダンスと多種多様なジャンルの作品の演出を手がける。2011年に個人ユニット・鈴木製作所を旗揚げ。第35回紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回、15回、18回読売演劇大賞優秀演出家賞、第10回毎日芸術賞・千田是也賞、第33回菊田一夫演劇賞、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。4月にミュージカル「ゴヤ -GOYA-」の演出が控える。

立石俊樹

2020年は世界的にもとても大変な年だったと思います。僕自身もイベントやお仕事が中止になり、思うように活動ができないことで、もどかしさや悔しさを感じる日が多かったです。

そんな中、一番身近なもので支えてくれたのは大好きなコーヒーでした。もともとお仕事の前には必ずコーヒーを飲んでリラックスするのがルーティーンだったこともあり、特に自粛期間は自宅でコーヒーを飲んで心を落ちつかせて、カフェミュージックをかけながらゆっくり過ごしました。

コーヒーは、焙煎された豆をお店で購入し、家で電動ミルを使ってひいてドリップして飲んでいます。香りを嗅ぐだけで自然と深呼吸できるようになったり、肩の力が抜ける感覚があるのでリラックスできているんだなと実感してます。

自粛生活で不安なときもありましたが、コーヒーを飲みながら、ぼーっとする時間。何も考えず、ただその空間を楽しみ、リラックスする時間を作ることで、前向きな自分でいることができました。

毎日の小さな幸せのきっかけをくれたコーヒーが以前よりももっと好きになった年でもありました。これからもよろしくね、コーヒーちゃんっ!

立石俊樹(タテイシトシキ)

1993年、秋田県生まれ。2017年に「ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン」幸村精市役で俳優デビュー。「MANKAI STAGE『A3!』」茅ヶ崎至役でも知られ、テレビドラマ「社内マリッジハニー」「テレビ演劇 サクセス荘3」、テレビドラマ・舞台「チョコレート戦争」などに出演。3・4月に上演されるに上演される「ミュージカル『黒執事』~寄宿学校の秘密~」ではセバスチャン・ミカエリス役で主演を務める。ダンス&ボーカルグループIVVYのメンバーとしても活動中で、2020年には1stアルバム「AWAKE」がリリースされた。

多和田任益

僕を支えてくれたのは、ダンスとそれを求めてくださるファンの声です。

自粛期間に自身のニコニコチャンネルでおうちダンスライブを配信したのですが、多くの方がそれを観て感動の声やアンコールの声をくださったんです。

この先板の上に立てるかどうかも不安でしたが、普段劇場に足を運んでくださるお客様や出演作を見てくださるファンの皆さんが、これまでのようにエンタメに触れられない日常に気持ちが落ち込んでいないかもとても心配で、でもそのダンスライブを通じて、皆さんの元気な声が聞けて安心したし、僕自身の力にもなりました。

そして、どんな形でも届け続けることはできるんだという考え方も生まれて、苦境ではなくて新たなものを生み出すきっかけなんだと前向きになれました。

多和田任益(タワダヒデヤ)

1993年、大阪府生まれ。2012年から2014年にかけて「ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」で手塚国光役を演じる。2015・2016年に放送されたスーパー戦隊シリーズ「手裏剣戦隊ニンニンジャー」ではスターニンジャー / キンジ・タキガワ役を務めた。主な出演作に、SHATNER of WONDER #4「ソラオの世界」「Take me out」「熱海殺人事件 NEW GENERATION」ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」、舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズ、「舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」シリーズ、梅棒 EXTRAシリーズ「ウチの親父が最強」「『改竄・熱海殺人事件』モンテカルロイリュージョン」などがある。2020年、梅棒に加入。現在、梅棒「ラヴ・ミー・ドゥー!!」に出演中。

中川晃教

掃除をすること!

明日のことなど誰にもわかりませんが、でも、先のことを考えてモヤモヤとしてしまうとき、体を動かし、頭もまあまあ使い、掃除をすると、不思議と目の前のことに意識が回り始めて、結果として今を見つめることができます。

お役ごめんの物や、資料、また役に立ってくれた道具1つをとっても、感謝の気持ちを持って整理整頓ができました。

そして、長く使い続けてきた物に愛着の気持ちが生まれ、丁寧に磨いたり、汚れを拭いたりと、より一層大切に使いたい気持ちが芽生えてきました。

写真はそのときに見つけたものです。

祖父母の家を受け継いだので、2人の優しさを思い出して、よしがんばろう!と思うことができました。

中川晃教(ナカガワアキノリ)

1982年、宮城県生まれ。シンガーソングライター・俳優。2001年に自ら作詞・作曲を手がけた「I Will Get Your Kiss」でデビュー。同曲で第34回日本有線大賞新人賞を受賞する。2002年、ミュージカル「モーツァルト!」で井上芳雄とW主演し、第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞、第10回読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞。ミュージシャンとして活動を続ける一方、俳優としても舞台を中心に活躍。2018年にはミュージカル「ジャージー・ボーイズ」で主演を務め、同作を第24回読売演劇大賞最優秀作品賞に導いたほか、自身も最優秀男優賞、菊田一夫演劇賞に輝いた。2020年9月より 日テレプラス「中川晃教 Live Music Studio」でナビゲーターを務める。3月にブロードウェイミュージカル「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」、5月に「ららら♪クラシックコンサート Vol.10『ミュージカル特集』~ミュージカル界の巨匠たち~」が控える。

中村壱太郎

コロナ禍の時代に突入した2020年。

3月からまったく歌舞伎の舞台もなくなり、何かしていなくてはいられない自分の性格から、悶々とした日々を過ごしておりました。

しかし「このままじゃいけないな!」と自分で動くことを決意したときに、これまでのご縁と、このコロナ禍で生まれた絆により創作いたしました「ART歌舞伎」。新たな映像作品を創る旅路は困難と喜びの連続でしたが、そんな僕を支えてくれたのは、作品のテーマ曲とも言える、「清経」の楽曲です! 今でもこの曲を聴くと、気持ちを落ち着かせて、また前に進もうと思えます! (1月29日には「清経」を含む「ART歌舞伎」劇中曲が収録されたアルバム「『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎』MUSIC COLLECTION」がデジタルリリースされました)

中村壱太郎(ナカムラカズタロウ)

1990年生まれ。1991年、三代目中村鴈治郎襲名披露興行「廓文章」の藤屋手代で初お目見得。1995年、五代目中村翫雀・三代目中村扇雀襲名披露興行「嫗山姥」の一子公時で初代中村壱太郎を名乗り初舞台。2014年、吾妻徳陽として日本舞踊吾妻流七代目家元襲名。2016年、野田秀樹作、オン・ケンセン演出「三代目、りちゃあど」に出演。また新海誠監督のアニメーション映画「君の名は。」で巫女の奉納舞を創作。現在は女形を中心に歌舞伎の舞台に精進するほか、春虹の名で脚本執筆、演出にも挑戦している。2020年に配信公演「ART歌舞伎」を制作・上演した。

七海ひろき

2020年、私を支えたものの1つは、ドクターエアの3Dマッサージロールです。

体調面において、これには助けられました。舞台やライブの前後に筋肉を解すことが次の日につながるので、ほぼ毎日これでマッサージをしていました。

そして、何より私を支えてくれたのは、応援してくださるファンのみんなです。

会えない時間が増えていく中で、配信やSNSを通して、同じ時間を過ごそうとお互いが歩み寄ったことにより、これまでよりもさらに絆が深まったと感じました。

伝えても伝えきれないけれど、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。この場をお借りして、お礼を言わせてください。いつも、本当にありがとう。

心身共に健康であるためには、1人でがんばるのではなく、支え合うことが何より大切だと改めて感じました。

これからも、そのことを忘れずに自分のできることを探し続けていきたいと思います。

七海ひろき(ナナミヒロキ)

2003年に宝塚歌劇団入団。宙組配属後、星組に組替えし、男役スターとして活躍。2019年3月に退団した。以降、俳優・声優・ラジオパーソナリティ・歌手など多彩に活動。自身のアルバム曲での擬人化総選挙やスタイリッシュ体操など、遊び心あふれる企画を多数放つ。近年の出演作品に「科白劇(かはくげき) 舞台『刀剣乱舞/灯(ともしび)』綺伝(きでん) いくさ世の徒花(いくさゆのあだばな) 改変 いくさ世の徒花の記憶」、ゲームソフト「アンジェリークルミナライズ」(声の出演)、舞台「ROAD59 -新時代任侠特区-」など。4月には「エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート」に出演する。

※「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶」の「綺伝 いくさ世の徒花」は取り消し線ありが正式表記。

野上絹代

今さら私ごときが「愛の不時着」を推したところで……というのは重々承知しているのですが、書かずにはいられませんでした。

観始めたのは8月。「演劇をやる意味」や「本当に大切にしているものとは」など考え続ける上半期を経て、日生劇場で公演した「MISHIMA2020」の稽古期間中でした。創作の喜びもさることながら緊張の日々で、1日の終わりにリラックスしたくて観始めました。

韓国の財閥令嬢と北朝鮮の将校の恋愛ドラマと聞いて、初めは設定にピンと来なかったものの回を追うごとに完全にのめり込み、周りの「愛の不時着」ファンが私の感想に優しく盛んに反応をくれたのもあって、気付けば主人公の恋愛にジェットコースターのごとくみんなで乗って振り回されている気分に。できるだけ頭を使わず観ていたのですが、主人公2人のトキメキは、頭も感覚も通り越して潜在意識に直接働きかけてくるようで、家族が寝静まった深夜、1人で声を押し殺し、絶叫・悶絶する日々でした。

最終話は涙と鼻水で脱水症状寸前。うず高く盛られたティッシュの山! 致死量の愛! 「サランヘヨ~」って泣く自分をまったく想像してませんでした。

そっか。何も考えず誰も気にせず、感情に浸る時間を私はずっと欲してたんだ。そう気付かせてくれる大事な時間でした。

野上絹代(ノガミキヌヨ)

幼少よりクラシックバレエ、高校から振付活動を開始。大学在学中より同級生らと共に小指値(現・快快)を旗揚げ。以降、俳優・振付家として同団体の国内外における活動のほとんどに参加。また演出家として、演劇・ダンス・映像・ファッションショーなど幅広く活動し、2015年にはソロ活動・三月企画を始動した。2016年度より多摩美術大学美術学部演劇舞踊デザイン学科非常勤講師。

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