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BOYSぴあSelection 第17回 坂口健太郎

坂口健太郎「観た人それぞれに大切な家族のことを思い出してほしい」

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特集

19/6/26(水)

家族っていいな。少しだけ赤くなった瞳でエンドロールを見ながら、そう思った。
6月21日(金)から公開の映画『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』は、リアルとゲーム、2つの世界を舞台に紡がれる不器用な父子の物語。その中で、坂口健太郎さんは口下手な父・暁(吉田鋼太郎)の胸の内を知るべく、オンラインゲーム『ファイナルファンタジーXIV』を使って「光のお父さん計画」を始める息子のアキオを演じた。日頃から「家族が大好き」と公言する坂口さん。観る人の心をぎゅっと掴む熱演の陰には、そんな愛する家族への想いがあった。

クライマックスは、自然に気持ちがこみ上げてきました

─── 映画面白かったです。

ありがとうございます!

─── 特に印象に残ったのが、やはりクライマックスのゲームシーン。普通、お芝居って相手とのやりとりがあって気持ちが動くものだと思うのですが、今作の場合、目の前にいるのは人ではなくゲームの画面。演じる上で、他の作品にはない難しさがあったのではと思ったのですが。

最初に台本を読んだときは、僕も難しそうだなって思いました。でも本番では自分でも驚くぐらい自然に気持ちがこみ上げてきたんですよ。

─── おお。それはどうしてなのでしょう?

まずひとつは撮り順ですね。今回、鋼太郎さんが途中から撮影に合流されるスケジュールになっていて。本来はそれまでに僕がゲームをしているシーンは撮りきる予定だったんです。でもやっぱりラストのゲームシーンは鋼太郎さんと一緒にお芝居をしてからじゃないと撮れないからって、スタッフのみなさんが撮影スケジュールをズラしてくれて。鋼太郎さんとのシーンを撮り終えてから、クライマックスのシーンを撮ることになったんです。

─── そこで父子としての時間を過ごせたことが演技につながったと。

だと思います。とは言ってもアキオと暁の間には距離があって、そこまで父親と台詞を交わすシーンってないんですね。だからどうなんだろうと不安な部分もあったんですけど、鋼太郎さんはそこにいるだけでお父さんっていう感じがして、言葉を交わさなくてももらえるものがすごく多かった。おかげですんなり気持ちが入っていけたのかなと。

─── やはり鋼太郎さんから受ける影響は大きかったですか?

そうですね。これだけ台詞を交わす量が少ないのに、ちゃんとお芝居をした感覚がするのは本当に驚きでした。

─── 坂口さんから見た鋼太郎さんはどんな方なんですか?

変に聞こえちゃうとアレなんですけど、すごく普通でした。たぶんそれは鋼太郎さんが敢えてそのまんまでいてくれたからだと思います。鋼太郎さんが父親としてただそこにいてくれたから、僕も気負うことなくアキオになれた。
実はお会いするまでは、大先輩だし、すごい方なんだろうなってちょっとドキドキしていたんですよ。もちろんすごい方ではあることは変わりないんですけどね。でも実際の鋼太郎さんは全然こっちに圧をかけてくるようなところがなくて。ただそこにお父さんとしていてくれる姿に、アキオとして助けられたという感覚です。

お父さんのことを考えると涙が止まらなくなりました

─── 個人的には、坂口さんの感情がこみ上げてきたときの表情がいつも素晴らしいなと思っています。今回も涙がこぼれるのを必死にこらえて画面に向かって語りかけるクライマックスの表情が絶妙で、胸を掴まれました。

(照れつつ)ありがとうございます。僕は器用に涙を流せるタイプでは全然なくて。すごく準備がいるし、その気持ちをキープするのが苦手なんですよ。きっと感情の表現が上手い役者さんなら心の赴くままにできるんでしょうけど、僕はそうではなくて。かと言って、こうしようああしようって技術的なことを考えると、余計に感情が出なくなる。だから、撮影の前はなるべく何も考えないようにしています。

─── じゃあ今回も本番のときは心を無にして?

このときはすごく不思議でした。テストが終わったあとに、監督から呼ばれて。それで、このシーンの心情について改めて説明を受けていたんですけど。僕もこのときのお父さんのことを考えると胸がいっぱいで、その気持ちを話そうとしたら、泣けてきちゃって、全然話ができる状態じゃなくなったんですよ。それを見て、監督が「このまますぐ撮ろう」と。そういうのもあって、やっていることはすごく難しいお芝居なんですけど、あまり細かいことを考えずにできたのかもしれません。

自分の中にある父子のかけらを集めて、アキオと暁の距離感を構築した

─── それだけ気持ちが昂ぶったのはなぜか聞きたいです。よく坂口さんは「家族が好き」というお話をされていると思いますが、ご自身の家族に対する気持ちが重なったところはありますか?

重なる部分はありましたね。本を読みながら、何でこのときこういう台詞を言うんだろうって解釈をするんですけど、そのときやっぱり自分の家族との記憶から引っ張ってくる部分はありますし。僕の場合、父親とはすごく仲が良いので、今回のお話みたいなぎこちない感じはあまりなかったですけど、それでもケンカをすることはあったし。そういう自分の中にある父子のかけらを集めて、アキオと暁と距離感を構築していったところはあります。

─── もし良かったらお父さんとの想い出を聞かせていただいてもいいですか?

なんだろうなあ。いろいろあるんですけど、今パッと思い浮かぶのは、親父は車が好きだったんですね。それでよく小さい頃は助手席に乗っけてもらって、ご飯を食べに行ったり、買い物に行ったり。そういう記憶はすごく残っていますね。

─── お父さんはどんな方なんですか?

暁ほど寡黙ではなかったかな。よく喋っていたし。どっちかって言うと、趣味人であり自由人っていう感じです。

─── お父さんから影響を受けている部分も?

(少し考えて)もちろんどこかしら絶対に影響を受けているとは思うんですけど、どうだろう。自分ではよくわからないというか。きっと傍から見た方がそういうのってよくわかるんでしょうね。

─── 映画を観ながら、しみじみ家族っていいなと思いました。

嫌な人が出てこないので、すごく優しい気持ちで観られる作品だなって思いました。面白いなと思ったのが、笑ってしまうようなシーンとか、可愛らしいシーンもたくさんあるんですけど、撮影のときはそこまで意図的にここで笑わせるぞみたいな感じじゃなかったですよ。あくまで普通にやってっていう感じで。でもそれがこうして仕上がってみるとすごく笑えるのがいいなって。監督のさじ加減のおかげだなと思いました。

─── 個人的には、佐藤隆太さんが演じる先輩の役が面白かったです。あのジャケットのくだりとか(笑)。

あそこは確か隆太さんのアドリブだった気がします(笑)。いいですよね、すごく。
隆太さんもそうだし、本当に楽しい方ばかりの現場で。財前(直見)さんは現場でもお母さんのような存在でみんなを見守ってくれていたし、(山本)舞香ちゃんも妹然とした感じでいてくれて。そういう意味ですごく歯車の合った現場だったなと思います。きっとそんな家族の空気感が映画にも表れていると思うので、観た人それぞれが大切な家族のことを思い出してくれたらうれしいですね。

撮影/高橋那月、取材・文/横川良明、ヘアメイク/廣瀬 瑠美、スタイリスト/檜垣健太郎(little△friends)

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