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『35歳の少女』娘たちへ「ごめんね」から「愛してる」 涙なしでは観られない鈴木保奈美の名演

リアルサウンド

20/12/6(日) 13:15

 柴咲コウが主演を務めるドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)が12月5日に第9話を迎えた。

 時岡家に大きな転機が訪れる。それが多恵(鈴木保奈美)の死だ。

 くも膜下出血に心不全、多恵が意識を取り戻すのは無理だと言われていた。それでも諦めずに望美(柴咲コウ)や愛美(橋本愛)、進次(田中哲司)が希望を灯し続けられたのは、多恵が日々付けていた日記、そして望美が25年の眠りから目覚めた喜びと興奮から録音していたカセットテープにある。

 日記に書かれていたのは、YouTubeをフィールドに時間泥棒と化する望美をもとの娘に戻したいという母としての使命にも似た思い、またあの日のように4人で食卓を囲んですき焼きを食べたいという願いだった。カセットテープに吹き込まれていたのは、涙を拭いながら奇跡を待ち続けた25年間にわたる苦労とこれから娘と描いていく明るい未来。「もう一度あなたを抱きしめることができる。あなたの笑う声をもう一度聞くことができる。あなたと一緒に昔録音したテープを聞くことができる」。未来を信じていた多恵だったが、残念ながら現実は少々違っていた。胸にしまいこんでいた母としての愛を受け取り、望美は多恵が眠る病室へと向かう。

 とんぼは諦めないことの象徴。童謡「トンボのメガネ」に乗せた望美たちの思いが届いたのか、多恵は一時的に目を覚ます。見守る望美、愛美、進次に対して多恵が繰り返すのは「ごめんね」の言葉。進次にはそのまま笑っているだけでいいと、愛美には今まで寂しさに気づいてあげられなかったこと、向き合うことに逃げてしまったことを謝罪する。

 謝ってばかりの多恵に、望美が話しかけるのは「~できた」という希望に溢れた言葉だ。

「ママはいつだって正しい。ママのおかげで私は初恋の人に自分の思いを告げることができた。ちょっと情けなくなったけど、昔と変わらずとっても優しいパパにまた甘えることができた。背が高くて美人さんになった愛ちゃんと兄妹喧嘩することもできた。すっかり白髪になって恐くなったけど、私がちゃんとこの世界で生きていけることを願っているママとまた暮らすことができた。私は世界で一番幸せな娘だよ」

 それはかつて、カセットテープに未来への希望を吹き込んだ多恵へのアンサーだ。来る日も来る日も時間の止まった娘と向き合い続けた25年間を肯定され、多恵はニコッと幸せな笑みを浮かべる。言葉はやがて「ごめんね」から「愛してる」へ。ゆっくりと消えてゆく言葉と心、命の灯。最期を演じた鈴木保奈美のか細くも、意志を伝えようとする眼差しの強さは、多恵という人物像をくっきりと浮かび上がらせていた。人はあっけなく死ぬとも言われるが、感動的なBGMもなく(そもそも『35歳の少女』にはシーンを演出する音楽がほぼないのが特徴でもある)、次のシーンでは火葬場の煙となる描き方はよりリアルな死を感じさせる。

 最終回となる第10話。「まだ自分のことちゃんとしてないから」と望美は結人(坂口健太郎)と向き合うことを躊躇っていた。少しづつ家族の仲が修復しつつある今村家、父・尚志(西岡德馬)の亡くなった広瀬家、愛美の就職と恋愛の行く末も気になるが、メインとなるのはやはり望美と結人の恋路だろう。絶望の淵から這い上がった望美は、ラストにもう一つの幸せを掴み取ることができるのか。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『35歳の少女』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:柴咲コウ、坂口健太郎、橋本愛、田中哲司、富田靖子、竜星涼、鈴木保奈美、細田善彦、大友花恋
脚本:遊川和彦
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:大平太、諸田景子
演出:猪股隆一ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shojo35/
公式Twitter:@shojo35

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