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立川直樹のエンタテインメント探偵

貴重な映画体験となったアラン・ロブ=グリエの特集上映、『女は二度生まれる』『日本暴力団 組長』の俳優陣の素晴しさ

隔週水曜

第16回

19/1/23(水)

『囚われの美女』 (C)1983 ARGOS FILMS

 新年に入って2週間の上映延長が決まった<アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ>は『不滅の女』から『囚われの美女』まで6本全部クリアした。12月の忙しいスケジュールの合い間をぬってのシアター・イメージフォーラム通いだったが、平日でも定員108名はかなり埋まっていて、日曜・休日となると立ち見という盛況だった。

 客層も千差万別。60年代から70年代にかけての新宿アートシアターにトリップしたような気分になることもたびたびだったが、知性と毒が混じりあい、美的感覚も十分で迷宮に誘なってくれるような映画体験は本当に貴重なものだった。『もどってきた鏡』(水声社刊)という自伝も刊行されたし、しばらくの間、ロブ=グリエに捕われてしまった状態になっている。

『もどってきた鏡』著:アラン・ロブ=グリエ、訳:芳川泰久/水声社刊

 そして、映画について言えば、僕は毎年、12月30日から1月4日までは完全に家にひきこもり、CDとレコード、本と映像、お酒を楽しむ時間を過しているのだが、自分でも苦笑いするくらいのテレビ・チェックの中で遭遇できた川島雄三監督が初めて大映で撮った『女は二度生まれる』は本当に素晴しい作品だった。

『女は二度生まれる』(C)KADOKAWA 1961

 製作は1961年。主演は若尾文子。九段の芸者街の芸妓の自由な恋愛遍歴を川島雄三らしいタッチで描いているのだが、山村聰、山茶花究……といった共演陣の芝居のうまさは憎らしいほどで、俳優の質とか力量が20世紀と21世紀では全く変わってしまったなあとしみじみ考えてしまったが、それは1月4日に日本映画専門チャンネルでやっていた鶴田浩二主演の『日本暴力団 組長』を観ている時にも思ったことだった。

 というより、深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズの予兆とも言えるような血みどろの抗争が策謀と相まって展開していく内容は、設定やストーリー展開を含めて表現などの規制でもう現在では作れない映画かも知れない。共演は内田朝雄、安藤昇、菅原文太、曽根晴美、河津清三郎、加藤嘉、そして若山富三郎……といったアクと癖の強い、とてもテレビのバラエティ番組でうまく人とつきあうようなことのできない面々。そのダークな濃さに観終えたあとはぐったりしてしまったほどだった。

 でも、それは嫌な疲れではない。ひきこもり前の天皇誕生日に、BS-TBSでやっていたリチャード・アッテンボロー監督の157分の大作『戦争と冒険』もそんな1本で、かのチャーチルの生涯を真正面から描いたものだったが、チャーチルの父ランドルフ卿を演じたロバート・ショウの凄絶とも言える演技と母親役のアン・バンクロフトの気品のある美しさも20世紀ならではのものだった。あとは、ドキュメンタリー系に魅力あるものがずらり。『映像の世紀プレミアム』の第6回『アジア 自由への戦い』は「私は映像で人間の姿を記録したい。そうしないと歴史の中に消えてしまうからだ」という名言を口にした富豪アルベール・カーンが各国に送ったカメラマンが撮影した見応えのある映像は、その内容とともに時のたつのを忘れさせてくれたし、1月3日にNHK BS1でやっていた『欲望の資本主義2018~闇の力が目覚める時~』と『欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~』は気持いい酔いの中で、テレビの前で一生懸命メモをとってしまうほどよくできていた。

『戦争と冒険』チラシ

 知のフロントランナーたちが語る様々な意見。「本来の“自由”とは自分のイメージを作り出せる可能性のこと。いきすぎた“自由市場”という概念に惑わされてはいけない」「20世紀の自由主義型の資本主義ではなく、中国のようなシステムになる」「パソコンもスマホも人間なしには存在しない」「資本主義ではなく、成長資本主義だ」「人間性よりもテクノロジーの億万長者がもてはやされる時代」etc……。

 本当に何という時代になってしまったのだろうと思わされ、番組は終わったが、その2日後に見た宗教学者・山折哲雄さんが珠玉の言葉をつむいでいく『こころの時代~宗教・人生~』で救われたような気分になれるのだからテレビはメディアの遊園地だ。貼り混ぜ年譜のようになった日記とメモと資料の小山の中にはまだ書きたいことがたっぷり過ぎるくらいある。

作品紹介

『アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ』

日程:2018年11月23日〜12月28日
※アンコール上映:2018年12月29日~2019年1月18日
会場:シアター・イメージフォーラム

『もどってきた鏡』

発売日:2018年10月
著者:アラン・ロブ=グリエ
訳者:芳川泰久
水声社刊

『女は二度生まれる』(1961年・日本)

配給:大映
監督:川島雄三
出演:若尾文子/藤巻潤/フランキー堺/山茶花究/山村聰

詳細はこちら

『女は二度生まれる』4Kデジタル修復版 Blu-ray
発売日:2018年11月30日
価格:4800円+税
発売・販売元:KADOKAWA

『日本暴力団 組長』(1969年・日本)

配給:東映
監督:深作欣二
出演:鶴田浩二/菅原文太/内田朝雄/内田良平/河津清三郎/安藤昇/若山富三郎

詳細はこちら

『戦争と冒険』(1972年・英)

監督:リチャード・アッテンボロー
出演:サイモン・ウォード/アン・バンクロフト/ロバート・ショウ/ジョン・ミルズ

映像の世紀プレミアム 第6集『アジア 自由への戦い』

放送日:2018年12月23日(再)
NHK BSプレミアム

BS1スペシャル『欲望の資本主義2018~闇の力が目覚める時~』

放送日:2019年1月3日(再)
NHK BS1

BS1スペシャル『欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を越えて~』

放送日:2019年1月3日(初)
NHK BS1

『こころの時代~宗教・人生~「ひとりゆく思想」』

放送日:2019年1月5日(再)
NHK Eテレ

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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