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野村正昭 この映画がよかった! myマンスリー・ベスト

私の7月第1位は、日本映画『海辺の映画館』、外国映画『カセットテープ・ダイアリーズ』に決定!

毎月連載

第24回

20/7/31(金)

7月公開の日本映画、この10本

①海辺の映画館-キネマの玉手箱
②zk/頭脳警察50 未来への鼓動
③コンフィデンスマンJP プリンセス編
④ステップ
⑤のぼる小寺さん
⑥アルプススタンドのはしの方
⑦私がモテてどうすんだ
⑧MOTHER マザー
⑨河童の女
⑩一度も撃ってません

※対象は6/26~7/31公開のもの

コロナ禍の影響で、映画のメジャー大作は軒並み公開延期の状態。シネコンでは本来ミニシアターで上映される予定だった作品が格上げで公開されたりしているけれど、やはり体力(宣伝?)不足が祟ったのか、1週間で打ち切りになるケースも続出しているようだ。いきなり上映され、そこで題名を初めて知る作品も多く、途中から上映回数が短縮されたりして、結局観逃してしまった映画もある。旧作上映も目立ち『風の谷のナウシカ』や『仁義なき戦い』『リトル・ミス・サンシャイン』なども堂々と上映されているので、このテンにも入れてしまおうかと、一瞬考えたりもしましたが、さすがにそれは……。まあ、それほど迷走状態が続いているということなんだろうと、ここでは7月31日公開迄の新作に絞りました。

さて『海辺の映画館-キネマの玉手箱』は大林宣彦監督の最新作にして遺作。本当ならばコロナ禍直前に公開されるはずでしたが、公開延期になり、しかし、これぞ大林作品の集大成というべき傑作。閉館間近の映画館、オールナイト上映の真っ只中に、スクリーンの中の戦争にタイムスリップした若者たちの物語ですが、自主映画時代を彷彿とさせる映像マジックがぎっしりと詰め込まれた、まさに、めくるめく玉手箱。必見作ですが、大林監督存命中に初日を迎えさせてあげたかった。

日本映画はこの苦しい状況下で、予想以上に収穫が多く、『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』『ステップ』『河童の女』は〈水先案内〉でも書かせてもらいましたが、タイミングさえ合えば『のぼる小寺さん』『アルプススタンドのはしの方』をお勧めしたかった。どちらも実に愛すべき小品です。『MOTHER マザー』『一度も撃ってません』は、いずれも世評は高く完成度の高い力作であるのはわかりますが、筆者の中ではもう一つ腑に落ちず、ランキングでは下位にしてしまいましたが、悪しからず。それにしても、一刻も早く映画館が以前のような賑やかな空間に戻りますように。(私が観た7月の日本映画は16本)

『zk/頭脳警察50 未来への鼓動』(C)2020 ZK PROJECT

7月公開の外国映画、この10本

①カセットテープ・ダイアリーズ
②イップ・マン 完結
③ランボー ラスト・ブラッド
④剣の舞 我が心の旋律
⑤追龍
⑥WAR ウォー!!
⑦タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~
⑧グランド・ジャーニー
⑨オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡
⑩プラド美術館 驚異のコレクション

※対象は6/26~7/31公開のもの

外国映画は、正直申し上げると順不同のテンで、決定的な一本こそありませんでしたが、見方を変えれば、バラエティに富んだラインナップになりました。そのせいか、観客を選ぶタイプの作品もあり、エンタテインメント大作が少ないのは、やはり、コロナ禍の影響でしょうか。とはいえ、日本映画のテンにも書きましたが、諸事情で『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』『悪人伝』『バルーン 奇蹟の脱出飛行』『パブリック 図書館の奇跡』などを観ることができず、いずれは観るつもりですが、テンの対象にはできず残念。

その中でも、『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督の新作『カセットテープ・ダイアリーズ』は個人的な思い入れもあって、泣かせる映画でした。パキスタン移民の青年が、音楽、それもブルース・スプリングスティーンに影響を受けて成長していく姿は、ある意味、青春映画の王道ともいうべきで、ぜひぜひ1人でも多くの人に観てほしい。

『ランボー ラスト・ブラッド』のラスト・クレジットでは、シリーズ1作目からのスタローンの姿が出てきて、ああ、昔のスタローンは若かったけど、情無い顔してたんだなあ、年齢を重ねて渋くなってきたんだなあと、当たり前といえば当たり前の感想が脳裡をよぎり、それにしてもスタローンは『ロッキー』→『クリード』への展開といい、『エクスペンダブルズ』シリーズの企画力といい、映画ファンの間からは、どう見ても侮られているとしか思えないけど、プロデューサーとしての映画センスは結構いけてるんじゃないかと思っているのは私だけでしょうか。やっぱり、ただのキン肉マンではないと思うよ。『タッチ・ミー・ノット ~ローラと秘密のカウンセリング~』はマイノリティーと呼ばれる人々の性を描いた異色作で、最初のうちこそ観ていて怯んでしまうけれど、人間の個性について考えさせられる道徳的な映画ではないでしょうか。『オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡』『プラド美術館 驚異のコレクション』などドキュメンタリーの佳作も面白く観ましたが、洋画では他にも『WAVES/ウェイブス』『悪の偶像』『ハニーランド 永遠の谷』などがはみ出してしまい、申し訳ありません。(私が観た7月の外国映画は19本)

『イップ・マン 完結』(C)Mandarin Motion Pictures Limited, All rights reserved.

プロフィール

野村正昭(のむら・まさあき)

野村正昭(のむら・まさあき) 1954年山口県生まれ。映画評論家。年間新作800本を観る。旧作も観るが、それを数えると空恐ろしい数になるので、数えないことにしている。各種ベストテンの選考委員を務めている。

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