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和田彩花の「アートに夢中!」

みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ ― 線の魔術

毎月連載

第21回

今回紹介するのは、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ ― 線の魔術」。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)が紡ぎ出した「線の魔術」ともいえる華やかなポスターなどが、いかに時代を超えて愛され、そして後世のアーティストたちに影響を与えたのかを紐解いてく同展。会場には、ミュシャが手がけたポスターなどのグラフィック作品はもとより、彼の作品に強い影響を受けた日本の明治期の文芸誌、1960年代を中心にアメリカ西海岸やロンドンで一大ムーヴメントを巻き起こしたグラフィック・アート作品、そして、日本のマンガ家やグラフィック・アーティストの作品などおよそ250点が展示されている。ミュシャにはもともと関心があったという和田さんだが、ミュシャへの想いに何か変化などは生まれたのだろうか。

時代を超えてなお
愛されるアーティスト

ミュシャはこれまでもたくさん見てきました。日本でもとても人気の高い画家なので、展覧会も毎年のように開催されているような気がします。そんなミュシャは私にとって、装飾的で華やかなポスターのイメージ。少し見飽きたところもあったのですが、今回はミュシャだけでなく、ミュシャに影響を受けた現代の画家やマンガ家の作品や原画、大正時代の画家たちが手がけたデザイン、そして欧米のレコードジャケットなどが一緒に展示されていて、私はそれがすごく楽しかったです。

正直、私はマンガも読まないし、ゲームもしません。マンガの読み方も実はわからないくらい。だからいままでそういった分野には触れたことがなくて。だけど単純に、この人たちすごい!!って思わされました。私の中では全然つながりのない世界なので、そこにもやはり絵画というものは大きな影響を与えているのだと知ることができました。

そして、本当にミュシャはいろんな分野の人々に影響を与え、そのデザインが受け継がれているんだということを実感し、驚かされましたね。

「線」という視点でミュシャを観る

私にとってはただ装飾的で華やかだというイメージだけで楽しんでいたミュシャ。だからいままでそういった視点でしか、話してきませんでした。でも今回、「線の魔術」というタイトルがついているのを見て、初めてミュシャの作品を「線」という視点で見てみたんです。

そこで気が付いたのが、線の多様な表情。ただの線に見えても、その描かれ方は実に様々。もともと、輪郭線を太くとるミュシャの絵は、浮世絵と共通するので、勝手にすごく平面的な絵だと思い込んでいたんです。だからこそ、ちょっと普通の西洋絵画とは違うから、人気を博したんだと思っていました。

でもそうではなく、輪郭線をつけることで、奥行きがすごく出ていることに気付かされたんです。それが今回一番の驚きだったかもしれません。

輪郭線だけでなく、風を含んだような髪の毛の様子、ドレスの裾が翻る姿にも細かな線が多用されています。線を見るだけでもじゅうぶんにミュシャを楽しむことができました。これは大きな発見です。

アルフォンス・ミュシャ《北極星―連作〈月と星〉より》1902年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

線に注目しながら作品を見ていくと、この作品《北極星―連作〈月と星〉より》に驚かされました。平面的だとばかり思っていたミュシャの世界の中に、線で空間が生まれるのか! って。

そしていつも西洋の油絵を観るとき絵具の面ばかり見ていることによって、「絵画」対「ポスター」と勝手に線引きしてしまっている自分に気付かされました。でもそうじゃないんですよね。それを気付かせてくれたミュシャの絵って、実はとても奥深くて、私の今後の絵画の見方の大きな一歩を与えてくれたと思います。

「★」のモチーフ

アルフォンス・ミュシャ《椿姫》1896年 カラーリトグラフ ミュシャ財団蔵 ©Mucha Trust 2019

そして今回もう一つ面白いなと思ったのが、「星」のモチーフをミュシャが使っていること。
「★」って、この形のままではあまり絵画の中で使われないですよね。

でも、この作品の背景を見てください。完全に「★」じゃありませんか?(笑)
星というのは、可愛い一つの記号というか、モチーフとして現代の人も使いますよね。偉大なデザインのプロでもあるミュシャが、こういうふうに使っていると思うと、すごく親近感がわきました。

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