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芳根京子と土屋太鳳の魂がぶつかり合う 2人の重なるキャリアと『累-かさね-』での“対等さ”を考察

リアルサウンド

18/9/18(火) 10:00

 木村拓哉と二宮和也という2人の“俳優”の対決が見られる『検察側の罪人』が大きな話題を呼んでいるが、ここに2人の“女優”同士の凄まじい戦いが巻き起こる作品が誕生した。『累-かさね-』である。芳根京子と土屋太鳳という、日本映画界の最前線に立つ若き女優の魂がこれでもかとぶつかり合っているのだ。

【写真】『累-かさね-』で対峙する芳根京子と土屋太鳳

 本作は、高い演技力を持っているが自身の容姿に強烈なコンプレックスを抱える淵累(芳根)と、圧倒的な美を持つが女優として芽が出ないでいる丹沢ニナ(土屋)が、謎の口紅を用いたくちづけによって「顔」が入れ替わるというもの。これにより、芳根は“累”としての劣等感だけでなく、“ニナ”の高慢ちきな性格をも演じなければならず、土屋においてはその逆である。こうして文字として並べてみると、いささか複雑な設定に思えるが(実際、複雑なのだが)、芳根と土屋、両者の“明”と“暗”とが巧みに転換し続ける演技によって実現されている。

 ここで重要なのが、両者のパワーバランス。それぞれの欲望のため、利害関係の一致から顔交換の契約を結ぶのだが、やがて累によって自分の人生のすべてを奪われているのだとニナは感じはじめ、彼女らの間に保たれていた契約による均衡は崩れていく。ここから、累とニナによる自身の尊厳を懸けての、そして芳根と土屋による同世代の女優同士の魂を懸けての、激しいぶつかり合いが繰り広げられていく。たしかに“戦い”ではあるのだが、どちらかが過剰になるとバランスが取れなくなる。両者が対等でなければ、ぶつかり合いにはならないことは言わずもがなだ。

 この2人といえば、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)にどちらも出演。その後土屋は同枠の『まれ』にて、芳根は『べっぴんさん』にて、それぞれ主演を務めている。“若手女優の登竜門”とも呼ばれる朝ドラでヒロインを務めた経験は、現在の彼女たちを形づくる大きな要素となっているだろう。

 土屋は2017年の『PとJK』から今作にいたるまで、すべての出演映画にて主演。ティーン向け映画への出演が多いということもあるが、“若手女優”と聞いて真っ先に土屋を思い浮かべる方も多いはずである。だがそれだけでなく、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』ではベテラン俳優陣に囲まれながら難病に立ち向かう女性を見事に演じきり、今年の頭には森山未來が主演を務める舞台『プルートゥ PLUTO』の再演で舞台に立ち、そのポテンシャルの高さをリアルタイムで観客に証明した。

 対する芳根は、昨年公開されたアニメの実写化作品『心が叫びたがってるんだ。』や、外山文治という気鋭の監督による短編作品『わさび』など、多角的に活躍。さらにその前年には『64-ロクヨン-』といった日本映画界のオールスター戦に名を連ね、間もなく封切られる『散り椿』でも老若男女の実力者たちが結集した中、メインキャストとしては最年少の彼女が参戦を果たしている。ティーン層の注目を集めつつ、ターゲットの拡大を徐々に試みているように思える土屋とは異なり、あらかじめターゲットを大きめに想定している印象だ。

 そんな2人はアプローチは違えどキャリアを眺めてみれば、どことなく重なる部分があるように思える。土屋は、先日最終回を迎えた『チア☆ダン』(TBS系)で主人公を演じ、その溌剌とした姿で同世代の多くの女優たちを率いているが、芳根も前々クールの『海月姫』(フジテレビ系)にて主演を務め、クセの強いキャラクターたちを演じる年齢も様々な女優陣を率いてみせた。この両者に共通する、朝ドラ主演経験や、若手俳優が集結する作品での主演経験、また、先輩たちが揃った作品においての重要なポジショニングなど、現在の日本映画界での2人の立ち位置の近さを読み解くのは間違いではないだろう。最前線に立つ2人の『累-かさね-』での対等なぶつかり合いの背景にはこういった経緯があるのだ。ぜひとも手に手を取り合い、これからも切磋琢磨して日本映画界を導いていってほしい。

(折田侑駿)

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