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『アナ雪2』、海外アニメ作品オープニング記録樹立 興収255億の前作に迫る上での死角は?

リアルサウンド

19/11/27(水) 19:00

 『アナと雪の女王2』が予想通り空前のロケットスタートをきった。先週金曜日に公開された同作は、土日2日間で動員121万1000人、興収16億1600万円。初日から3日間では動員145万2530人、興収19億3974万6600円と20億円に迫る勢い、2位に初登場した『決算!忠臣蔵』の土日2日間の興収が2億400万円(これでも十分にヒットと言える数字だ)なので、2位に興収の約8倍という圧倒的な差をつけて初登場1位となった。もちろん、これは本年度のオープニング最高記録にして、海外アニメーション作品の史上オープニング最高記録をも更新した。正確な数字は算出不可能だが、概算するとこの週末に映画館のスクリーンにかかっていたすべての作品の動員及び興収の半分以上を『アナと雪の女王2』が占めていたことになる。

参考:『アナと雪の女王2』なぜ北欧神話がモチーフに? 監督&プロデューサーが影響を受けた“自然の力”

 この状況は日本以外でも同様だ。北米のオープニング興行収入は1.3億ドル(約142億円)突破(Box Office Mojo調べ)。全世界でのオープニング興収も3.5億ドル(約382億円)を突破して、アニメーション作品の史上オープニング最高記録更新となった。前作から(本国公開のタイミングで)6年というインターバルから、当時作品に夢中になっていた子供たちがもうすっかり成長していることを危惧する見方もごく一部にあったが、それはまったくの杞憂であったか、あるいはさらに新しい世代に波及しつつあるということだろう。

 もっとも、その前作『アナと雪の女王』との日本での初週末興収比で211.7%という今回の数字に驚く前に、二点ほど釘を刺しておく必要がある。一つは、あまりにもスタートダッシュが効きすぎていること。これはメガヒットした作品の続編によく見られる傾向でもあるが、特にディズニーのアニメーション作品の場合、歴史的ヒットとなった作品の多くは、2週目以降に初週を上回る成績を記録してきた作品が多い。つまり、メディアやネット上ではなく、職場や学校といった日常生活の環境において話題が広がっていくことが作品のヒットを後押ししていくケースだが、『アナと雪の女王2』の場合、既に作品があまりにも広く知れ渡っているため、そのような時間差のある波及効果はあまり見込めないかもしれない。

 もう一つ。これは同じメガヒット作品である新海誠監督の『君の名は。』から『天気の子』への流れでも見られた現象でもあるが、作品のヒットを大いに後押しした主題歌及び挿入歌が、前作の時ほど現象化していないということ。これも、インパクトという点で前作(言うまでもなく、『君の名は。』と『天気の子』はシリーズ作品ではないが)を超えることはそもそも難しく、そのイメージを踏襲した上でどこまでフレッシュな作品と音楽との相乗効果を生み出すことができるかというのが後発の作品の宿命なわけだが、特に『アナと雪の女王』と「レット・イット・ゴー~ありのままで~」の組み合わせはあまりにも強烈だっただけに(原題とはまったく異なる作品の邦題、楽曲の日本語サブタイトルも秀逸だった)、楽曲を中心とする社会現象化の再現というのはほとんど不可能なのではないか。実際、今のところCDの売り上げや配信の再生回数のチャートでも、前作ほどの大ヒットになりそうな兆しはない。

 以上をふまえて『アナと雪の女王2』の興収を予想するなら、興収約255億円という大記録を打ち立てた『アナと雪の女王』に肉薄するところまでは及ばず、150億円~170億円程度に落ち着くのではないだろうか。それでも、『アラジン』(累計約121億円)、『天気の子』(累計約140億円。現在も公開中)を超えて、本年度のナンバーワン作品になる可能性は濃厚だ。(宇野維正)

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