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東京スカパラダイスオーケストラが語る、エレカシ宮本浩次とのコラボ曲に込めた“30年分の音楽人生”

リアルサウンド

18/11/30(金) 8:00

 東京スカパラダイスオーケストラが、ゲストボーカルにエレファントカシマシの宮本浩次を迎えた最新シングル「明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次」を11月28日にリリースした。

参考:東京スカパラダイスオーケストラ×THE BACK HORNが語る、“対バンの刺激” ホットスタッフ40周年記念対談

 来年30周年を迎える東京スカパラダイスオーケストラと今年30周年を迎えたエレファントカシマシ・宮本浩次。「明日以外すべて燃やせ」というストレートなタイトルが示す通り、90年代から音楽シーンの第一線で戦い続けてきた両者のパワーが交わり、熱いメッセージとして昇華された渾身の一曲となっている。

 リアルサウンドでは、東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦、茂木欣一、加藤隆志の3名にインタビュー。宮本浩次の歌声にメンバーが圧倒されたという制作風景をはじめ、コラボで感じた両者の共通点や2001年からスタートした歌モノシリーズの重要性、そして30周年に向けての意気込みについて語ってもらった。(編集部)

■加藤「この曲は宮本さんのために残ってた子どもだった」

一一近年、クリープハイプの尾崎(世界観)さん、ユニゾン(UNISON SQUARE GARDEN)の斎藤(宏介)さん、あとはKen Yokoyamaさんや峯田和伸さん、TOSHI-LOWさんまで、ロックシーンのビッグボスを狙い撃ちにしている印象があったんですけど、今回の宮本浩次さん(エレファントカシマシ)のラスボス感、半端ないです。

茂木欣一(以下、茂木):ラスボスだよね、ほんと(笑)。

加藤隆志(以下、加藤):遂にラスボスに辿り着いた感が(笑)。でも本当にご一緒したかったボーカリストだったので。まず引き受けてもらったのが光栄ですし、今までのスカパラのコラボ史の中でもひとつの集大成となるような作品にしたかったんですね。結果、僕らがずっと温めてたメロディのモチーフと、あと谷中さんの歌詞と、宮本さんの歌唱と僕らの演奏が融合できて。今はなんか、ようやくホッとしてますね。いい曲になって良かったなぁって。

一一このメロディは以前からあったものなんですか。

加藤:沖さんが作ったんですけど……何年前だっけ? 10年?

茂木:10年以上前かな。みんなで「すごくいいメロディだね」って言いながら、「これはおそらく、しかるべき時に取り上げることになるな」って。

加藤:そう。インストで鳴らしてみたり、自分たちの歌唱でトライしてみたこともあって。でも歌唱として考えると、Cメロの、サビと言われる音域が少し下がるんですよね。〈夢も愛も~〉のところ。この曲は実は凄く難しい曲でもあるので、さっき欣ちゃんが言ったように、しかるべき時まで取っておこうってことになっていたんです。

 で、宮本さんとのコラボが決まった時に、まず宮本さんの声とこのメロディを頭で組み合わせたら「あぁ! これは宮本さんのために、このコラボレーションのために残ってた子どもだったんだ!」って。ほんと全員がピンと来たんですね。やっぱり宮本さんの音域の広さ、低音域もはっきり出せる強み。あとこれは歌詞が乗ってからの話ですけど、ひとつひとつの単語の響きも、宮本さんの歌唱であれば一番映えるだろうなと思って。

一一宮本さんに決まってから、谷中さんは歌詞を書き下ろしたんですよね。

谷中敦(以下、谷中):そうですね。だからプレッシャーもありましたけど、気合い入れて書きました。自分たちの世代から若い世代に情熱を渡していく、みたいなテーマで。僕らより上の世代の、ちょっと熱すぎる情熱、バカバカしいくらい燃え盛る炎を持っている先輩方に憧れて、自分もそんな存在になれるかなと思いながら音楽をやってきて、今ここに居るわけですから。若い世代はそういった感覚とまた別の憧れがあるのかもしれないけど、僕らの世代が感じる情熱の炎のリレーをね、できればしたいな、繋いでいきたいなっていう。そういう歌詞です。

加藤:音楽の世界の先輩方だけじゃなくて、ドラマとかもそうですよね。昔の刑事ドラマは、みんな走ってたじゃないですか。松田優作さんとか水谷豊さんとか、ほんと燃え盛ってる感じで。

茂木:ねぇ。体を張った殴り合いのシーンとか、最近ないもんね(笑)。

一一タイトルを見た時、全部燃やせと煽っていく過激な曲なのかと一瞬勘違いしたんですが(苦笑)。これは意図的に付けたのですか?

谷中:そうですね。あの、MIYAVIが自分の身体に“不退転”ってタトゥーを入れてるんです。背水の陣じゃないけど、決して退かないぞ、みたいな。それぐらいのインパクトが欲しくて。で、この曲は「明日以外すべて燃やせ」ですけど、英語の題名は「We Only Live for Tomorrow」にしたんです。“我々は明日のためだけに生きる”という。極端なことを言うと、今日のことだったり自分なりに考えた予想なんかは全部気にしない、とにかく明日のためだけに突き進め、みたいな。そういう気持ちで振り切らないと生きていくのも辛い場合もあるだろうし。それぐらいの気持ちで進んで欲しいなって。

一一はい。

谷中:若い世代が、身の回りのことを大事にするあまり、そのことしか見えなくなっちゃって、自分の夢も人生も諦めちゃったり。そういうニュースを見たりすると考えますよね。もちろん会社に入れば周りの人たちとの関係が大事だし、学校ならクラスの中での関係が大事かもしれないけど、でも、その外にだって世界はあるわけで。「今いる場所の外にも、もっと夢があるんだ」って思ってもらいたいんです。僕らは外に外に進んでいくっていう意思でバカなことをやってきましたし、思い切って海外にも出ていったり、なんというか「とにかく遠くに行こう!」っていう気持ちでこれまで活動してきたので。そのほうが、身の回りで起こるピンチから逃れられることもあるかもしれない。そういう気持ちをこの歌詞に込めたんですね。

■谷中「この曲には幻の2行があるんです」

一一だから、ただ背中を押すとか、聴くと元気になれます、みたいな単純さはないですよね。冒頭の言葉だって決して美辞麗句ではない。

加藤:〈人生は美しいアルバムじゃない/撮れなかった写真さ〉っていう冒頭の2行、実は僕らの中では違う候補があったんですよ。

一一あ、そうなんですか?

加藤:谷中さんが何度も歌詞を書き直しているなかで、実は別の歌詞が決定していたんですけど、この冒頭の2行も一度宮本さんに送っていた歌詞だったんですね。そしたら歌入れが終わった後、宮本さんが「すいません、ちょっと一回トライさせて欲しいんですけど。僕この2行が好きで歌ってみるんで、もしみなさんが気に入れば使ってもらってもいいですし……」って、逆プレゼンみたいな感じで。

谷中:あの逆プレゼン気合入ってたよね? スカパラ全員が見てる中で、もうすでに決まった歌詞をさらに変更してもらうために歌うっていう。で、まず1テイク目を録って……。

加藤:そのインパクトがね、「うわ、こうなるのか!?」って。

谷中:みんな何も言えなくて、黙っちゃってたら、宮本くん「……もう1回やります! もう1回やらしてください!!」って言って。

茂木:こっちは感動して何にも言えなくなっちゃってたのに(笑)。

谷中:それで歌詞が変更になって。だからこの曲には幻の2行があるんです。それも〈撮れなかった写真〉になるわけです(一同笑)。

■茂木「“僕たちの人生そのもの”が4分半に収まってる」

一一上手い(笑)。歌詞の深みを見ると、今だから書ける言葉も多いのかなと思います。少なくとも90~00年代にはなかった言葉。

谷中:90年代の頃は人生について語る必要もないぐらいの「明日以外すべて燃やせ」だったんですよ(笑)。無我夢中すぎて語る余裕もないくらい。今は、やっぱりだいぶ大人になったしね。

加藤:谷中さんの歌詞もどんどんストレートになってきてるよね。それこそ宮本さんとご一緒したいっていうアイデアは、第一次3部作と言われてる2001年(注:初の歌ものコラボとなった、feat.田島貴男「めくれたオレンジ」、feat.チバユウスケ「カナリヤ鳴く空」、feat.奥田民生「美しく燃える森」)の時からあって。当時も宮本さんの名前は挙がってたんですね。あの時だったら逆に引き受けてもらえなかったのか、引き受けてもらえていたら何ができたのか、どういう言葉を歌ってもらえたかなって今考えると……そこからスカパラは来年デビュー30周年、エレファントカシマシはさらに長いキャリアを重ねていて。移り変わりの激しいシーンの中でも、フェスとかで同世代を探すと隣にエレファントカシマシがいて。お互い違う道だけど、前を向いて歩いてきた、そこが融合してこの歌詞になったと思うんですね。

茂木:もう言葉に人生が全部出てるよね? お互い30年やってて、改めてコラボってなるとそういうものが出てきちゃう。で、いざ宮本さんが歌うと「この人、これを30年間やってきたんだ!」って。やっぱ命の賭け方、使い方が凄い。MVの撮影の何時間かであっても、全開で歌唱してるんですよ? MV撮影だから音楽はすでに大音量で鳴ってるのに。30年やってたらそういう場面は器用にかわせるじゃないですか。でも全然そういうことをしない、しようともしない人で。それこそ「ひとつひとつにすべて燃やすのが僕らのやり方だよね?」っていう、お互いの30年分の共感はありましたね。「こういうメロディがあって」みたいな話の次元を越えて、もう「僕たちの人生そのもの!」って言えるような。それがこの4分半の曲の中に収まってるから。

一一あと、宮本さんってバンカラなイメージがありますけど、実はこんなにも端正なシンガーなんだって気付かされましたね。ひとつひとつの音階、音符の拍の長さまで、きっちり歌いきっている。

茂木:そう、ものすごくきっちりしてる。歌唱だけじゃない、単語ひとつひとつの吟味の仕方が丁寧なんですよ。すっごい驚いちゃって。

加藤:そう。ほんとに〈あいうえお〉の発音のポイントが違う。これって日本のロックの歴史みたいな話になっていきますけど、日本のロックは、まず英語の歌唱を日本語に当てはめていくところから始まって、いろんな試行錯誤とか工夫を先代の方がされてきて。そこで何箇所かターニングポイント、発明みたいなものがあったと思うんですね。その中のひとつが宮本さんの歌唱だと思う。日本語を日本語として鳴らす。誤魔化しなく、日本語的に鳴らす。それがわかると、自分でもエレファントカシマシの聴こえ方もまた変わってきたりして。

谷中:そういう意味でもコラボレーションって重要で。コラボレーションの歴史が自分たちの成長の軌跡でもあるんですよね。同時に今回の宮本くんも、椎名林檎さんとやったりスカパラとやったことを、エレファントカシマシに持ち帰ってもらって、それがエレファントカシマシにとってプラスになったら、こんな素晴らしいことはないですよね。

一一みなさんはどうですか。来年にはいよいよデビュー30周年で。何か大きなお祭りのようなものは行われるんでしょうか。

茂木:お祭りね、でっかいのやるでしょう! 凄いと思うよ、来年も。

加藤:なんかやりたいね。まだそんなに考えられないけど。ほんとに明日以外はすべて燃やしてるんで(一同笑)。でも、今年はバンドもほんとに充実してて、いい年だったと思いますよ。前半の南米ツアーも含めてね。ちょっとずつ向こうに蒔いてきた種も実っていて。

茂木:コロンビアとか凄かったよね?

加藤:そう。6万人の集まるフェスのメインステージに出たり。

一一6万人って壮絶ですね。

加藤:もうね、どこが最後尾なのか見えなくなるまでずーっと人。それであちこちにサークルモッシュができて。

茂木:盛り上がったねぇ。こっちの全力さ、必死さに盛り上がってた。谷中さんが歌う曲なのにマイクがトラブルで出なくて、「やっと出たー!」っていう瞬間に6万人がグワーッと盛り上がる(笑)。

谷中:俺が必死に歌ってる姿だけがビジョンに映ってたらしくて、声が出た瞬間「あぁ良かった!」みたいな。その喜びと一体感はすごく伝わってきた。楽しかったよね。

加藤:海外のロックフェスでは僕らはスカの曲をベースにしたセットでやるんですけど、かたや今年のライジングサン(RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018 in EZO)ではメインステージの大トリをやったんですね。その時、僕らとコラボをしたことのあるボーカリストの方々に残っていただいて、9人に歌ってもらったんです。ドラマーの中村達也さんにも参加してもらったんですけど、あれだけゲストを迎えて立て続けに演奏することもなかったので、逆に客観的になれたのかな。自分でも「ほんとスカパラって独特だなぁ」と思ったんですよ。

一一どういう意味でしょうか。

加藤:どの曲も歌モノなんだけど、でもホーンのメロディがものすごく聴こえてくる。歌があってもなくても、まず音楽を奏でて、それを人に伝えていくという当たり前のことを僕らはやってきたんですね。歌が乗ってるかどうかはアウトプットのひとつでしかなくて、やっぱりスカパラに流れてるメロディというものをずっと奏で続けてきた30年なんだなって自分でも思ったんです。デビューアルバムでいうと、「MONSTER ROCK」っていうスカの様式美みたいな曲があって、それを世界中で鳴らしながら、同時に「君と僕」みたいなメロディの美しさ、日本人が心にずっと持ってる切なさを奏でる表現があって。その両極端をスカパラはずっと追いかけてる。で、「君と僕」のようなメロディに、本当に歌が乗っかってきたのが2000年以降だなと思って。そういうことを今年改めて意識できたのは良かったですね。

一一わかりました。これは余談なんですけど。子どもの小学校のブラスバンドが文化祭で隣の中学のブラスと合同演奏してて。曲が「Paradise Has No Border」だったんです。ここまで浸透してるのかって嬉しくなって。

谷中:いやー、ありがたい!

茂木:あの曲の浸透度ってほんと凄くて。僕が住んでいる近所の学校でも当然のようにやってるし。もしかしてこれ、ほとんどの小中高の吹奏楽でやってるのかな? もうほんと何より嬉しい! 

加藤:でも、あれも実は歌ものになる予定だったんですよね。

一一え、マジですか?

加藤:そう。アウトプットは歌ものにしようっていう話でNARGOさんが書いてきた曲なんだけど、結局インストになったんですよ。これ、さっきの話と通じるものがあって。

一一スカパラはどんな曲であっても、ホーンのメロディが聴こえてくる。

加藤:そう。そしてホーンのメロディだからこそ、歌詞の意味とかは関係なく、小学生とかも喜んで聴いてくれたりする。これって音楽の醍醐味ですよね。嬉しいです、ほんとに。(石井恵梨子)

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