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『アルプススタンドのはしの方』が共感できる理由とは 小野莉奈×中村守里×城定秀夫が語る

リアルサウンド

21/1/20(水) 12:00

 演劇部ふたり、そして、元野球部と、優等生。4人の高校生が、甲子園の応援席でただ喋っているだけの姿を通して、青春の光と影を見事に浮かび上がらせた映画『アルプススタンドのはしの方』。高校演劇初の映画化となった本作は、試合中のはずなのに野球が一切映し出されないなど斬新な構成と、誰もが思い当たる普遍的な青春のかたちの共存で、多くの人のこころを捉え、2020年を代表する佳品となった。

 キャストの小野莉奈、中村守里、そして城定秀夫監督に話を聞いた。

 この映画の魅力のひとつが4人全員、憎めない何かを持っていること。野球のルールを知らないまま応援席にいる演劇部の部長、安田を演じた小野は次のように話す。

「安田は男っぽい感じが、同性(女性)から見ても、受け入れられやすいのかな、と思える。藤野くん(元野球部)と話すときも、足を広げちゃってるし(笑)。男の子から見たら話しやすい女の子なんじゃないかな。キャピキャピしてないから、男の子とも普通に仲良くなれる。こういうタイプの女子は、どんな男子が好きなのか、個人的には気になりますね」

 小野はさらにこう分析する。

「学生時代って、自分の性格やキャラが、友達とか周りに作られていく。環境に合うように、自然になっていくんですよね。中には、自分はこうした方がいいな、と思って、その子なりにキャラを作る子もいる。安田の場合は、演劇部のリーダーとして頑張ってきたことが、あの性格を作ってきたところもあるんじゃないかな」

 たとえば、そんなふうに登場人物のバックボーンを探ることができるのも、この作品の大きなお楽しみだ。

 帰宅部で学業優秀、常に学年トップだったにもかかわらず、その座を最近奪われてしまった宮下に扮した中村は、こう話す。

「宮下はひとりでいることが多くて、近寄り難い雰囲気を出しているけど。実は、このことを気にしているところがあって、人間だなあと。そこが可愛い。あと、負けたら悔しいって子ですよね」

 すかさず小野が「守里ちゃん、負けたら悔しいと思うタイプ?」と聞いた。

 「思うタイプ」と中村。「人と較べたりする?」と小野。

「この頃(撮影時)はそうでした。いまは別に較べなくてもいいやって。負けず嫌いではあるけど。変わりましたね。人と較べても、その人にはなれないから、較べなくてもいいやって。何かやるときは、自分の最大限の力を飾らずに出せたらいいのかなって思うようになりました」

 中村の振り返りに、小野もこんなエピソードを。

「(藤野役の平井)亜門くんに、この前、別の仕事で会ったんだけど、なんか雰囲気変わったね? って言われて。もっと学生っぽかった、って」

 「落ち着いたよね」と中村。

 時間はあっという間に過ぎ去っていく。「そのときの自分」は、そのときにしかいなかったりもする。城定監督が言う。

「この年齢の役者さんたちはどんどん成長していくんだなと、あらためて実感します。僕らからすれば些細な悩みも、当人たちにとっては大きな悩み。そういうことを思い出すと、(登場人物)誰の気持ちもよくわかる。特定の誰かに寄り添う話でもない。誰が主役でもないから、公平に描きたいと思ったんです。誰に感情移入するかは観る人によって違うのかなって」

 小野は、脚本の独自性に惹かれた。

「読んでいるという感覚よりは、学生同士、友達同士が話しているのを目の前で聴いている感覚。読んでるというより、流れていく。脚本としては初めての感覚でしたね」

 中村はその感覚を「その日常があったかいんですよ。書いた人の人柄も伝わってくる」と表現する。

 それにしても秀逸なタイトルだ。『アルプススタンドのはしの方』。

「この作品は、はしの方にスポットライトを当ててますが、そういう作品って、ほんと少ないなって。いつも、主役らしい主役がスポットライトを浴びて、盛り上がりながら物語は進んでいくものですけど、一見、やる気がなさそうに見える人たちを物語にするっていうところに、人間味がある。はしの人は、頑張ってないわけじゃないんですよね。そう見られるだけで。やる気がないわけじゃない。そんな心の葛藤に寄り添えてる映画だと思います」(小野)

「『アルプススタンドのまんなか』だと違うなって(笑)。『はしの方』だから共感できる。よくある映画とは違った視点で、特別感やレア感があるんじゃないかな。王道じゃないから、面白い。『はしの方』でよかったな」(中村)

「アルプススタンドは甲子園の別名ですが、固有名詞の甲子園ではなく、青春の舞台という概念として捉え、そのはしっこの方の物語だと思っています」(城定監督)

 小野がしみじみ語る。

「本当は、まんなかの人たちのように盛り上がりたいし。甲子園で野球やってる男の子たちのように自分も輝きたい。どこかでそう思ってるけど、自分に素直になれない。気持ちも出しきれない。つらいポジションなんですよ、はしの方って」

 中村も述懐する。

「勘違いされやすいんですよね。やる気がないわけじゃないのに……。わたしもそうでした(苦笑)。リレーの選手として一生懸命走っても、「もうちょっと走れたでしょ?」とか言われて。一生懸命やってても、手を抜いてるように見られることってあるんですよね」

「それ、やだよね。自分の中では頑張ってるのに。はしの方にいるけど、ちゃんと頑張ってる。そこの部分が、この作品はいろんな人に響いているのだと思います」(小野)

■リリース情報
『アルプススタンドのはしの方』
1月20日(水)Blu-ray発売
DVDレンタル&デジタル配信中
価格:5,800円(税別)
枚数:Blu-ray1枚組
※セルDVDの発売はなし
※レンタルはDVDのみ

【仕様・特典】
★特製三方背ケース
【封入特典】
★特製16Pブックレット/書き下ろし新作スピンオフ短編収録
<収録内容>
1「読み合わせ」
[登場人物]安田あすは、藤野富士夫、田宮ひかる、宮下恵
[作]籔博晶
2「家路」
[登場人物]久住智香、進藤サチ、理崎リン
[作]籔博晶
3「藤野の告白」
[登場人物]安田あすは、藤野富士夫、田宮ひかる、宮下恵、 厚木先生
[作]奥村徹也
【映像特典】
★メイキング映像「アルプススタンドのはしの方のうらの方」(約30分)
★予告編
【音声特典】
★スタッフ&キャストによる本編コメンタリー
[出演]城定秀夫(監督)、小野莉奈(安田あすは役)、平井亜門(藤野富士夫役)、西本まりん(田宮ひかる役)、中村守里(宮下恵役)、直井卓俊(企画)
※商品の仕様・特典は都合により変更になる可能性がございます。
【法人別購入特典】
★ポニーキャニオンショッピングクラブ
「監督&メインキャスト4名のサイン入りトートバッグ」(抽選特典/6名様)
[サイン]城定秀夫(監督)、小野莉奈(安田あすは役)、平井亜門(藤野富士夫役)、西本まりん(田宮ひかる役)、中村守里(宮下恵役)

★Amazon
「L判ビジュアルシート」

★FLaMme Mail Order

「小野莉奈サイン入りBlu-ray」(抽選特典/10名様)

[サイン]小野莉奈(安田あすは役)

監督:城定秀夫
脚本:奥村徹也
出演:小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、平井珠生、山川琉華、目次立樹
原作:籔博晶・兵庫県立東播磨高等学校演劇部
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
発売・販売元:ポニーキャニオン
(c)2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会

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